児童労働って?フェアトレードって?小さな一歩を踏み出した、日本の女の子の奮闘記。「チョコレートの原料、カカオ豆を、どこで誰がつくっているのか、あなたは知っていますか?」日本の普通の女の子3人が、アフリカのガーナで出会ったのは、たくさんの子どもたちがカカオ農園で働かされ、学校に通うこともできない「児童労働」という現実でした。バレンタインデーに、フェアトレードでつくられた、ほんとうに愛のあるチョコレートを、日本のみんなに選んでほしい。彼女たちは動き出しました。イベントの名は、「バレンタイン一揆」。果たして、彼女たちの想いはみんなに届くのか??これは、児童労働の問題と出会い、悩み、闘った、日本の女の子たちの物語です。
設立15周年特設サイト HOME > 登場人物・ガーナ訪問 > ガーナ訪問報告(梅田麻穂)
アチュマ・ンプニュア郡の知事さんのお宅で朝食をごちそうになりつつお話を伺った。彼女の話によると、今一番の問題としているのが学校の数が少ないことだそうだ。ACEの精力的な活動により児童労働によって学校を休む子どもはずいぶん減ったが、この地域の学校が少ないせいで家からの距離が遠くなり、通えない子どもが多いという。そのため、今はとにかく学校を増やすことを何より優先させたいという話だった。こちらから学校を増やすだけでなく、スクールバスを使用するなど工夫して移動を楽にできないかと提案したところ、この一帯は道が整備されていないため凹凸がひどく、バスがすぐ傷んでしまうという答えが返ってきた。顔をゆがめつつ「村を見てみてください」とおっしゃっていたのが印象的。確かに、知事と面会した後に訪問したクワベナ・アクワ村までの路面は荒れ、車の揺れにより普通に座っているのが困難なほどだった。
一言で「学校を増やす」と言っても学校には幼稚園、小中高とあり、どれかに偏っていてはいけない。現状は小学校がほかに比べて極端に多く、中学生に進級した途端近くに中学校がなく、町まで出なければいけなくなった子どもが多いそうだ。また、建物を増やすばかりでは教育の質が落ちるのではという問いに対し、教師の数は足りているし、教師はとても人気な職業のため不足するようなことはないだろうとのこと。ただ教師が泊まる宿舎が設置されていない学校が多く、そのために教師が教えに来られないという問題がある。
知事と話をしたことで、現状を変えたいという意志の強さがひしひしと伝わってきた。児童労働は、重い物を長時間頭に乗せて運ばなければいけないため、小さな子どもにはすごく負担がかかる。成長を妨げてしまう。だから今すぐにでもなくさなければいけない。そのために必要なものは資金、人手、時間、すべてだ。と彼女は語ってくださった。
クワベナ・アクワ村に着いてすぐ村長らとあいさつを交わし、2年前に来日したゴッドフレッドの家で昼食をいただいた。初めてのガーナ料理はどれも想像以上に美味しかった。食事をしながら彼の過去の話を聞くことができた。
彼も昔は児童労働者の一人だった。祖父のカカオ農園で毎日一日中働き、学校に行くこともできなかった。友達の姿などを見ていたため、学校に行きたい気持ちは常にあったという。彼が任されていた仕事はカカオ農業のすべての工程だった。カカオの実を収穫し、中身を取出し、発酵させ、村へ運び天日干しにする。後日その一部を私たちが体験することになるのだが、体の未熟な子どもにとっては本当に心身ともに苦しい作業だった。彼は「とても重かった」と話してくれた。口数は多くなかったが、今思うと働いていた当時は言えなかったそれが本心だったのだと思う。
天候は晴れ。少し靄が掛っているものの日光は容赦なく照り付け、肌がじりじりする暑さだ。朝食を村で頂いた後、ゴッドフレッド君の祖父の農園へ作業体験を行いに行った。村から徒歩で15分程に位置する農園までの道のりには起伏が少しあり、日を遮るものが何もない。両脇にカカオ畑が広がり、赤褐色の乾燥した道がずっと伸びている。
農園の中に入った途端、体感温度が5度位下がった。1mおきに2〜3mほど高さのカカオの木が生えている。落ち葉や木の枝が敷き詰められ、足場は悪い。この中をビーチサンダルで歩いているのだから怪我は付き物だろう。カカオの実を割って、中の種=豆を初めて食べてみて、ライチのような味であったことに驚いた。
作業としては、実を落とす、拾い集める、運ぶ、割る、発酵させるまでのプロセスを体験した。特に運ぶ、割る行程の二つは体力的にも大変で、とても危険な作業だった。かご一杯に入ったカカオの重さは10kgを超えている。自力で持ち上げることが出来ない重さで、頭に乗せると首の付け根と腰に強い痛みが走る。これを9歳の女の子でもやるというのだから驚きだ。ゴッドフレッドも言っていたが、この痛みが蓄積され、腰痛持ちになる子どももいる。
ナタで実を割る作業はとても危険だと感じた。垂直に下ろせばいいのだと簡単にやって見せてくれたが、そもそも垂直にナタを思い切って振り下ろすのは無理な話だ。手が滑るし、何よりも怖い。それをよそ見しながらやるゴッドフレッドを見ている方が冷や冷やした。
体験後はゴッドフレッドの祖父からお話を聞いた。以前は充分な知識がなく、木を密集させていたり、草刈りを頻繁にしなかった為、栄養が吸収されなかったこともあったが、適切な指導が入って収穫数が上がったことなど、スマイル・ガーナ プロジェクトが始まる前と今を比較した話をして頂いた。
ひとつは車でクワベナ・アクワ村に向かっている道中で出会った人々だ。私たちの姿を見つけるなり、必ず誰もがこちらに笑顔を向け、手を振ってくれた。最初は小さな子どもたちが好奇心や興味本位で肌色の薄い自分たちを見て反応を示しているのだと思っていたが、子どもだけでなく大人、お年寄りの方まで会う人のほとんどが笑顔を見せてくれたのだ。これには本当に驚いた。 正直村に行く前は受け入れてもらえるのか不安な部分があった。しかし突然現れた見ず知らずの人間である私に、村のみなさんは本当に優しかった。児童労働という辛く苦しい過去を背負っていながらも、来たものを迎える人柄が見えて嬉しかった。
また、このように受け入れてくれるようになったのはACEの今までの地道な活動があってこそと知り、村の人々とACEスタッフの長い時間の中で築いてきた絆が垣間見れた気がした。もうひとつは、現地のパートナーNGOのCRADA(クラダ)でコーディネーターを務めるナナさんを始め、郡知事さん、CCPCのみなさん、教育局の方々、CRADAのスタッフなど、ガーナでこんなにたくさんの人々が児童労働をなくそうと力を尽くして活動していることを知って、安心のような、嬉しいような気持ちになった。村民同士の絆、村民とガーナで活動をする人々の絆、ガーナと日本の絆、どれもが時間をかけて築き上げてきたものだからこそ、ここまで強いものになったのだと感じた。
現地に行く前は、村の人々、特に小さい子どもたちは貧しい、ぎりぎりの生活を強いられていて“かわいそう”だと思っていた。テレビでよく見るような色のない、笑顔のない生活状況を想像していた。しかし、実際村に足を運んでみて、そこにいる人々のパワーに圧倒されてしまった自分がいた。誰もが笑顔で、一日中どこかの家から軽快な音楽が聞こえてきて、それに合わせてずっと踊っている。どんどん人がその音楽につられて集まってきて、いつの間にかパーティーのようなお祭り騒ぎが始まる。あまりにも想像していた、いわゆる“貧困国”というイメージとかけ離れていたため、驚きを隠せなかった。
私はどうしても自分たちの住む豊かな国、日本と比べてしまいがちだった。先進国である日本と比べてガーナが様々な面で貧しいのは事実だ。しかし、中身を見てみると、ただ貧しいで済ましてしまうにはもったいないほど充実した生活があった。村で採れる作物があるため食べ物に困ることもなく、井戸を掘ったことで水も確保できている。まだまだ衛生面で見直すところや、電気が通っていないなど問題点は挙げればきりがないが、私が見ている限り村の人々はとても楽しそうだった。
ACEがこの村にかかわる前の姿を知らないため決めつけることはできないが、少なくとも今、彼らはとても前向きで、自分たちから進んで生活をよりよくしようと努力している。そんな彼らは決して“かわいそう”ではなかった。児童労働がいけないことだという意識が広まり、子どもを学校へ通わせようという方向に人々が変わっていったのは日本人の力があったからかもしれない。しかし、ACEとの出会いをきっかけに、村民ら自身が現状を把握し、変えようと行動するようになったことが、私たちが見ることのできたあの明るくにぎやかな生活を形成したのだと感じ、それが私の中で一番の心の変化だった。
私はガーナへ行くことができ、現地の人々と直接会ってお話することができた。そこで思ったのは、どうしても人から聞いた話には限界があるということだ。今までもACEなどさまざま場所で児童労働について調べてきた。こんな人がいて、今こんな状況で・・・と、現地で活動した方の話はリアリティがあり、とてもわかりやすかった。しかし、実際自分が行ってみて、相手の表情の微妙な動きや話すトーン、小さな素振りなど、伝達された情報からは得ることができなかったことがたくさんあることに気付いた。
私が日本で多くの人に伝えたいのは、ガーナの人々についてだ。児童労働とはこういうもので、カカオ農業とはこういう工程で行われて、というような話は簡単に伝えることができるが、それだけなら行かなくても伝えられる。だが、そこに私たちが出会った人々のストーリーを加えて話すことで、伝わり方が変わるのではないか。学生である私たちが、学生の目線で質問したり話したりしたことは、きっと同年代の人にまっすぐ届くと思う。 私たちが行う『バレンタイン一揆』はたくさんの人に児童労働について知ってもらう大きなチャンスだ。
「こんな深刻な状況だから協力して!」とこちらの意思を押し付けるのではなく、小さな興味関心から集まってくれた方々に、まずはチョコレートの裏側を知ってもらい、カカオをつくっているのはどんな人たちなのかを知ってもらうことにより、日本とガーナをもっともっと近い存在にしていきたい。今までガーナ→日本と一方通行だったのを、日本からもしっかりガーナへ感謝の気持ちが伝わるよう、たくさんの人をこの活動に巻き込んでいきたい。
ガーナへ訪問した3人のメンバー以外にも、代表者を決める合宿「ACEユースアカデミー」に参加した高校生・大学生たちが、地元や自分たちのフィールドでアクションを行って来ました。売り上げの一部がガーナの子ども支援のための寄付になる「しあわせを運ぶ てんとう虫チョコ」を販売したり、イベント出展・開催など、それぞれのアクションを実施してきました。
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