児童労働って?フェアトレードって?小さな一歩を踏み出した、日本の女の子の奮闘記。「チョコレートの原料、カカオ豆を、どこで誰がつくっているのか、あなたは知っていますか?」日本の普通の女の子3人が、アフリカのガーナで出会ったのは、たくさんの子どもたちがカカオ農園で働かされ、学校に通うこともできない「児童労働」という現実でした。バレンタインデーに、フェアトレードでつくられた、ほんとうに愛のあるチョコレートを、日本のみんなに選んでほしい。彼女たちは動き出しました。イベントの名は、「バレンタイン一揆」。果たして、彼女たちの想いはみんなに届くのか??これは、児童労働の問題と出会い、悩み、闘った、日本の女の子たちの物語です。
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クワベナ・アクワ村から車で10分弱の場所にあるクロボム集落。カカオ農園の中に住んでいるムハマドさん一家に話を聞いた。9人家族で、7人のいる子ども達は全員学校に通っている。 ザハラド・ムハマドさん(60)はガーナ北部のアッパー・ウエスト州から遥々この地に来た。自身は学校に通ったことはなく、9歳の頃から親戚の家などの農園で働いていた。あちこちの農園を転々としながら働いていた頃、土地を持った人に誘われこの地に来た。そしてシェアクロッパー(小作農民)として現在は3エーカーの農園を所有している。収入源もカカオのみならず、その殻からできる石鹸やヤシの実から作るオイルなどが増えたため、より安定した収入を得られているそうだ。増えてきた収入もまずは子どもの教育費に充てるようにしているという。
村へ戻る前、干したカカオを見せてもらい、ふと気になったことを質問させてもらった。「チョコレートは食べたことあるの?」と、子どもたちは口々に「ある!」と言って渡してくれたのはカカオ豆そのものだった。紫色のものが発酵と乾燥してチョコレートの色になったものをチョコレートだと思って食べている子どもたちに、知事からいただいたチョコレートを渡した時の表情といったら!!生産者と消費者、その間にある大きな溝を垣間見たような気がした。
冬休みが終わり、学校が始まる日(※ガーナではクリスマスから1月10日頃まで冬休み)。教室の周りをうろうろしていると子どもたちが手を振ってくる。中学生の校舎がまだ完成しておらず、中学生が幼稚園の校舎を奪っている形となっていた。受験を控えているため致し方ないとも考えられるが、炎天下の中、いくら木陰といえども頭を覆うことなく外で数時間を過ごすのは大変健康に良くない。全校の出席率は6割ほど。クリスマスの為遠い親戚の家に行っていたり、連絡手段が確立していない為、今日が始業式だと知らない生徒もいるようだ。それにしても、設備がきちんと整っていない。多くの生徒が休みであるにもかかわらず、机や椅子は埋まっていた。2人用のところを無理やり3人で座っているような光景もあった。こうした備品は郡の行政機関から配布されるらしいが、学校に周囲と隔離する壁や鍵などがない為、人が入ってきて壊れたり、なくなったりしてしまうそうだ。中学校舎の完成、人数分の机と椅子の確保、それらが早急に解決しなければならない問題のようだった。
クラスをまわって挨拶をしていき、上級生のクラスでは将来何になりたいかや、自分達にまだ足りないものは何かなどといった簡単な質問を投げかける機会も得た。質問をすると、すぐに四方八方から手が上がる。身を乗り出すように人の話を聞き、共感や感動すると拍手がなる。先生が何か言うとシーンと静かになる。こういった日々の積み重ねが、人を敬う心や尊敬する心、認め合う精神を養っているのだと思った。 中学3年のクラスで将来の夢を聞くと多くの手が上がった。医者・看護婦・兵隊などの職業が人気のようだ。特に医者になりたいという子がすごく多い(ゴッドフレッドもその一人)。身近な人が病で苦しむ姿を日常的に見てそのような夢を持つのだと感じた。
一方で、その他の職業を知らないのではないかとも思った。選択肢が限られている中でみんな夢を持ち必死に掴み取ろうとする賢明な姿が印象的だった。 全てのクラスを回った後、全校生徒と集合写真を撮影した。「私の前へ!」「おれの隣に!」と引っ張ってくれるのがとても嬉しかった。
ゴッドフレッドの話を聞いた時、町の人と触れ合った時、CRADAのスタッフから話を聞いた時、学校で子ども達と触れ合った時…。心が揺さぶられた瞬間は数え切れないほどあったが、特に忘れられないのは、クロボム集落の子ども達がチョコレートを食べた瞬間の表情だ。彼らは、チョコレートの原料を日々作っているのにもかかわらず、チョコレートが如何なるものかを知らなかった。そういった話はよく聞いていたから、彼らが「知らない」ということに対する免疫はあるはずだった。だが、予想に反して彼らの答えは「知っている」というもの。そして嬉しそうにカカオ豆の皮を剥いてくれたのだ。皮を剥ぐと中には、チョコレート色をしたカカオの種。「美味しい」とそれをかじる子どもたちに「それはチョコレートじゃないよ」と笑っては言えなかった。
チョコレートを渡した時の子どもの表情といったら…びっくりした様な、チョコレートを知っているといった気まずさを隠せないような、複雑な表情でじいっと手にしたものを見つめていた。口に入れることを少し怖がっているようだった。口に入れ、味わっても表情がパッと変わることはなかったけれど、チョコレートの束を渡された瞬間、みんなの目がそれにくぎ付けになって、飛び跳ねて去って行った様子と重ねれば、美味しかったのだとわかる。「可愛いなぁー」と笑って見送ったが、その後ろ姿にふっとチョコレートを手にした瞬間の顔が浮かんだ。
彼らは、チョコレートを知らなかった。日々作っているものがどう加工されるのか、どう消費されるのかを知らなかった。私達が日々口にするチョコレートは100円。ガーナでの1セディがおよそ75円。これだけの作業を行い、毎日毎日手作業で摘み取られるカカオ豆に、一体自分達のお金はどれほど届いているんだろうか。海を遥々越えてくるものが100円という事実にゾッとした。私にとってこの人たちを不当に苦しめているという表現より、彼らを搾取していると表現することが残念ながらピンとくる表現だった。生産者と消費者の間に立ちふさがる厚い壁をそこから感じたが、それでも笑って一日を過ごす子ども達の無邪気さに胸が詰まる思いがした。
今回のガーナ渡航で、私は「幸せ」を見つけた気がする。いつも幸せとは一体何かを考えてはいた。健康であること、日々感謝の気持ちを持てること、自分の中で色々と思いつくものはあったが、どれも形だけで中身がなかった。けれどガーナの人々と共に生活してみて、幸せか不幸せかは基準を据えるものではないと感じた。同じ一つのことでも、それを自分が幸せと思えるか思えないか、それだけなのだ。それと同時に、スッと私の中で幸せを見つけるきっかけが浮き彫りになった。
それは「コミュニティの中で生きること」だ。コミュニティと一口に言ってもその形は様々だ。家庭然り、学校然り、職場然り。でもその中にあるべきface to faceの関係が今は薄れてきている。会話を交わすことが少なくなり、人との繋がりがどんどん希薄になっている。世界はネットや様々な分野で繋がったかもしれないが、その実は近所の人の顔も知らない、まるで狭い世界に住んでいるようにも思う。その一方で、ガーナの人達の絆の強さにはハッとさせられた。
日常生活の中でも食事を作る時、農作業をする時、常にコミュニケーションを取り合い、支え合っている。音楽をかければみんなが集まってきて踊る。自然と共に共存し、一日に感謝し、コミュニティの中でそれぞれが役割を持って生活しているからこそ、このような繋がりが出来るのだと思った。メールもない、ネットもない、手紙も届かない、電話もままならない。でも、そんな中でも人と支え合って、繋がりを日常の中で育んでいる様子が見られた。さりげない日常に感謝を持つきっかけがそこにあるのがわかった。
羨ましいというのは変かもしれないが、私は初めてガーナ人のことを羨ましいと思った。彼らの生活は、私達と比べると実に不便だ。ないものを挙げたらキリがない。けれど、私達にはものが与えられすぎてしまっているのではないか。私達は何か与えられなければそれを嘆いて、自分は不幸だと自分に言い聞かせる。幸せと思える場面は溢れているのに、それを当然と受け流す。自分達が何て強欲なのかを思い知らされてしまった。コミュニティの中、人々との直接的な繋がりの中で生活しているからだと思う。自分は一人じゃない、いつも支え合っている、そんな意識が潜在的にあるのではないだろうか。先進国の人間は孤独なのだ。幸せを分かち合える人も、幸せをどう捉えるのかを身を持って教えてくれる人が周りにいない。本当に幸せなのは、幸せを自分で見つけ出せる人であることだと思った。
ガーナに行った私達だからこそ出来ること、それは、ガーナの現状を、主観的にストーリー性を持って伝えられることだと思う。そしてガーナに行ったからこそ言えることが、「決してわかっていると思ってはいけない」ということだ。私達はガーナについて幾分か勉強して行ったつもりだった。しかし、日本から持って行ったそれはガーナを理解する上でのパーツにすぎず、ガーナの空気や環境に触れて初めてそれがパズルとして完成した。完成すればするほど、それが未完成であることに気が付いて、終わりが見えなくなる。でも、それが正しいのだと思った。自分達は本人ではないし、その国に住む国民でもないのだから、その人、国のことを完璧に理解することなどできない。「私はわかっている」と宣言する人ほど、理解が及んでないのではないかと今は思う。今後、『バレンタイン一揆』を始め、様々な活動を展開していくだろうが、その時に、常に「自分はまだまだ理解しきれていない」ということを頭に留めておきたい。それを、今後の向上心を育むバネとなればよいと思っている。
ガーナへ訪問した3人のメンバー以外にも、代表者を決める合宿「ACEユースアカデミー」に参加した高校生・大学生たちが、地元や自分たちのフィールドでアクションを行って来ました。売り上げの一部がガーナの子ども支援のための寄付になる「しあわせを運ぶ てんとう虫チョコ」を販売したり、イベント出展・開催など、それぞれのアクションを実施してきました。
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