児童労働について
Q.児童労働とは何ですか?
児童労働とは、義務教育を妨げる労働や法律で禁止されている18歳未満の危険・有害な労働のことを指します。
【注意】「子どもが働くこと」すべてを児童労働と呼ぶわけではありません。
以下の4つのどれか一つでも当てはまるような労働が「児童労働」です。
- 子どもの教育を妨げるような労働
- 子どもの健康的な発達を妨げる労働
- 子どもの心身に有害危険な労働
- 子どもを搾取する行為(強制的、自由を奪うなど)
上記4つの項目に当てはまらなず、子どもの成長の度合いに見合い健全な成長を助けるもの、例えば学校へ通いながら家でお手伝いしたり、アルバイトをすることなどは「子どもの仕事(Child work)」と呼び、児童労働と区別しています。
児童労働は「国連の子どもの権利条約」や国際労働機関(ILO)の条約(138、182号)で禁止されています。これらの条約は、先進国・開発途上国を問わず、世界中の多くの国が批准し、国として守ることを約束しています。
Q.児童労働の原因は貧困ですか?
児童労働が起きる要因は様々で、供給と需要の2つの側面から知ることができます。児童労働を生み出す要因を供給の面からみると、子どもがいる家庭・地域・国の貧困、児童労働や教育への意識不足、女子の教育を妨げる児童婚の慣習、教育や弱者への保護に関する政府政策の不備などがあります。中でも「貧困」は1つの大きな課題です。過酷な環境で働き、教育を受けられないまま成長したおとなは、低収入の仕事しか得られなくなったり、子どものときからの肉体労働で健康な体を失い継続的に働くことができなくなったりします。そのため、家計を支える労働の担い手として子どもが働かざるを得なくなります。児童労働と貧困の悪循環が起きてしまいます。
一方で、児童労働の要因を需要の側面から考えると、子どもを安い労働力とみなし雇用するビジネス、商品の生産過程での人権侵害に関する情報や意識の不足、安いモノを求める消費行動などがあります。消費者が少しでも安いモノを求めれば、企業は売上や利益のためさまざまなコストを削減していきます。その削減されるコストが、原材料の調達費や労働者の給与、仕事です。コスト削減の大きなしわ寄せがいく先は、途上国の生産者たちであり子どもたちになります。
このように、子どもが暮らす地域だけでなく、国境を越えたビジネスや私たちの消費の在り方の中にも、児童労働を生み出してしまう負のサイクルがあります。児童労働をなくすには、それらの要因を断ち切るため包括的に取り組む必要があります。
Q.児童労働をなくすためにACEはどんな取り組みをしていますか?
Q.もっと児童労働について知るにはどうすればいいですか?
ACEウェブサイトの「児童労働入門講座」や「書籍・出版物・資料紹介」、「YouTube動画紹介」ページなどをご覧ください。
他にも、ACEが毎月発行しているメールマガジンを読んだり、イベントに参加することで児童労働について詳しく知ることができます。
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Q.児童労働をなくすため、私たちにどんなことができますか?
児童労働はとても大きな問題で、解決には、私たち一人ひとりの力をあわせなければなりません。たとえば、ビジネスや政治を動かすべく声を上げる、消費行動で示す、寄付で支援する、などができます。ぜひ「私たちにできること」のページから、みなさんにあった”できること=アクション”を探してみてください。学校や会社でできること、お店や会社で、会員やサポーターとしてできることなど、さまざまアクションがあります。
Q.児童労働をやめさせたら家族の生活は成り立たないのでは?
子どもが働くことで家族の生活を支えていると思われがちですが、おとなに十分な収入がなく、その収入を補うための労働力として子どもが使われていることが多いのが現状です。親に家族を支えられるだけの収入があれば、子どもたちは働かなくてすみます。児童労働をなくすためには、家族が暮らしていけるほどまで収入を向上させるための支援が必要です。
ACEが活動している地域では、かつては親に十分な収入がないため多くの子どもたちが学校へ行けず家の仕事を手伝っていましたが、地域に元々ある仕組みを活用したり、子どもを学校へ通わせるためにおとなが協力しあったりすることで、各家庭の生活が安定し、子どもを学校へ通わせることができるようになっています。
親やおとな、そして子ども自身の意識が変わり、少しずつ行動を変えていくだけで、子どもたちを危険な労働から守り、教育を受けられるようにすることができる可能性が大いにあります。
Q.伝統的な慣習がある地域では先進文化の押し付けになるのでは?
伝統的な慣習によって、子どもたちが働き学校へ通えていない場合も、子どもにとって過酷な労働によって学びたいという気持ちや心身の健康的な発達を妨げられていることは事実です。
学校に通ったことがなかった両親も、子どもが笑顔で学校へ通う姿を見ることで教育の重要性を実感し、子どもたちが学校へ通えるようにどうすればよいかを考えるようになってくれることが多々あります。
文化の否定や押し付けと考えるのではなく、子どももおとなも笑顔で暮らせるためには何が必要なのか、どうすればよいのかを一緒に考え、実感してもらうことが大切だと考えています。
Q.子どもが働かず学校に行くことで、親の負担が増えてしまうのではないですか?どのように対処しているのですか?
これまでの活動で、多くの場合、親が児童労働の問題や教育の重要性を理解することで、子どもたちが働かなくてすむようになるということが分かりました。子どもが学校に通うようになり、「子どもの労働に頼らず、自分自身が前よりももっと働くようになった」「子どもをどうやったら学校に通わせることができるか考えるようになった(今までは考えたことがなかった)」といった親からの声をよく聞きます。働く子どもの親の多くは、自身が子どもの頃に働いていて学校に行ったことがなく、教育の大切さを知りません。そのため教育の意義を知り、子どもの教育を優先づけることで、親の考え方や働き方も変わります。
しかし、教育の意義を知っていても、子どもが働かないと生計が成り立たなくなる困窮家庭もあります。その場合には、政府の社会保障制度を活用する、親が安定した収入を得られるよう収入向上の支援を行う、子どもが安心して学校に行けるよう政府による無料寄宿舎に暮らせるよう支援する、などしています。
Q.子どもを学校に通わせたがらない親をどのように説得しているのですか?
プロジェクトでは親や村のおとなに対し、村の集会やイベントなど様々な方法で、児童労働の問題や教育の重要性に関する意識啓発活動を重点的に行っています。しかし、それでも子どもを学校へ通わせたがらない親がいる場合は、何度でも現地スタッフや住民ボランティアのメンバーが家庭訪問をして、親や子どもと話し合います。
家庭の事情なども踏まえて、どうやったら子どもが学校へ通えるようになるか、通わせられない課題をどうやって解決できるかを一緒に考えます。家庭には様々な事情がありますが、例えば、親の仕事や生活などで政府からの支援が必要な場合は、支援が受けられるようサポートしたり、プロジェクトで収入向上支援を行ったりします。また、困窮家庭で親が子どもを育てるのが困難な場合、政府が運営する無料寄宿舎に子どもが入り学校に通えるようサポートするなどの活動も行っています。
はじめは、スタッフが家に訪れることも嫌がる親もいますが、何度も根気強く訪問し話をするにつれて、親も態度が変わってくるようです。働く子どもがいる家庭は、多くの場合、その村の中で孤立し、困ったことがあっても外部の人に相談することができないでいることが多いです。そのため、これまで相談することができなかった困りごとなどを聴いてもらったり、解決できることがあると感じられると、徐々に心を開いて前向きに話し合えるようになると思われます。
Q.日本の企業は、自社の商品を海外で製造するにあたって、そこで児童労働が行われているリスクを把握しているのでしょうか?そのようなリスクを把握していない企業に対して、ACEはどのような取り組みをしていますか?
多くの企業が把握しきれていないのが現状です。企業がサプライチェーン(商品の原料調達から販売までの一連の流れ)において児童労働をはじめとした人権リスクをなくすことは、企業の社会的責任(CSR)として重要になっています。しかし、多くの企業がサプライチェーンから人権リスクをなくそうとしているものの、その隅々までは把握できていません。
ACEでは、人権リスクを把握するための土台となる姿勢や具体的な手順などの基礎的知識をつけたいと考えている企業の調達担当者やCSR担当者向けの研修(https://acejapan.org/activity/partnership/lecturer)をロイドレジスタージャパン株式会社と共同で行っています。個別企業向けにカスタムメイドの研修や講演も行います。
また、企業が、同業他社の水準と比較した自社の人権リスクへの取り組み状況を自己診断するためのアンケートを提供しています。
ACEは、企業に啓発と是正に向けた対話や支援を行い、協働することを目指しています。
Q.日本の児童労働の事例にはどのようなものがありますか?
国際条約(ILO第182号)で定義されている危険で有害な児童労働は、日本にも存在しています。例えば、特殊詐欺の受け子、児童ポルノの制作、パーティーコンパニオン、建築現場での高所の作業などに子どもを従事させることは児童労働となります。詳しくは、ACEの報告書『日本にも存在する児童労働~その形態と事例~』をご覧ください。
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