岩附 由香(ACE 代表) プロフィール
略歴
14~16歳まで米国ボストンで過ごし、桐朋女子高等学校卒業。上智大学在学中、米国留学から帰国途中に寄ったメキシコで物乞いする子どもに出会い、児童労働と教育を研究テーマに大阪大学大学院へ進学、国際公共政策修士号取得。在学中にカイラシュ・サティヤルティ氏(2014年ノーベル平和賞受賞)の呼びかけた「児童労働に反対するグローバルマーチ」をきっかけにACEを発足させる。その後、NGO、企業、国際機関への勤務やフリー通訳を経て、2007年よりACEの活動に専念。2017年アルゼンチンでの第4回児童労働世界会議では発表を行うなど、国内外のアドボカシー活動に力を入れている。2019年Civil 20(大阪G20サミットに向けた世界の市民社会組織の会議体)の議長を務める。夫と2人の娘の4人暮らし。著書「チェンジの扉~児童労働に向き合って気づいたこと」(2018年、集英社)、「わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。」(2007年、合同出版)。
- 認定NPO法人ACE 代表
- 児童労働ネットワーク 事務局長
- 国際協力NGOセンター(JANIC)副理事長
- 児童労働に反対するグローバルマーチ 理事
- エシカル推進協議会 理事
児童労働のない未来へ
ないなら、作る -0を1にする瞬発力-
ACE設立のきっかけは、世界107カ国、1100団体が参加した「児童労働に反対するグローバルマーチ」の日本での担い手がいなかったから。当時ボランティアをしていた団体でもやれないことが判明し、「それなら、そのためのグループを作ろう」と一晩で趣意書を書き上げ、同じ志を持つ学生仲間に声をかけ、ACE設立にいたった。
ネットワークを重視 -つながり、力を引き出す-
2004年「児童労働ネットワーク」を発足させ、現在19団体(NGO、労働組合など)が加盟、「児童労働反対世界デーキャンペーン」を5月~6月に展開している。2008年のキャンペーンでは期間中に開催されたイベントと署名活動で3万人の動員数を得た。
児童労働ネットワーク設立のため大手NGOに加入のお願いにいったときには、ACEの予算規模がまだ数百万。「こんなネットワークを作るより、自分の団体のほうをしっかり自立させたほうがいいのでは?」と指摘され、加盟してもらえなかった経験もある。それでも「ネットワークを活かす」を信念に根気よく続けた結果が、キャンペーンの成果として今表れている。
NGO界の若手として活躍 -NGO全体を盛り上げる動き-
日本のNGOの歴史で初めて、環境、人権、国際協力などの分野を越えたNGO141団体が参加した2008年G8サミットNGOフォーラム。G8に向けた提言活動を行うこのフォーラムで、キャンペーンチーム・リーダー、また貧困開発ユニット・サブリーダーを担い、2008年6月には官邸を訪問。福田首相(当時)に「100万人のたんざくアクション」で集めた市民の声を手渡した。日本では約10万、世界では71万の署名・賛同が集った。
このフォーラムのキャンペーン活動で中心的な役割を果たした背景には、2005年にホワイトバンドのムーブメントを起した「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーン実行委員としての経験があった。PR会社が展開した芸能人や著名人を巻き込んだPR活動が功を奏しこれまで日本のNGOが経験したことのない大きな世論喚起を経験。しかしそれゆえのバッシングもあり、多くの人をPRを通じてメッセージを正しく伝えることの難しさも感じた。しかし、「何かしたい」と考えている日本人がホワイトバンドを買って行動に移したことは確か。そういった「世界から貧困をなくしたい」「自分にも何かできるのでは」と思った人たちへもう一度メッセージを届けたい、という想いがあっての、G8へ向けたキャンペーンであった。
児童労働問題ひとすじ -持続力と専門性-
2007年『わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。』(合同出版)を出版(共著)。1997年の大学院時代の児童労働研究からはじまり、桜美林大学大学院で非常勤講師を務めるなど、児童労働問題についての考察を続けてきた。ACEが2001年から発行してきたメールマガジンには児童労働に関するニュースが掲載され、世界の児童労働についての情報発信を続けている。
2006年3月~12月まで国際交流基金日米センターNPOフェローとして米国NGOで働きながら児童労働への取り組みを研究。米国の政府やNGOの積極的な児童労働への取り組みと日本との差に愕然としながらも、刺激を受けて日本での活動展開に新たな目標を持つ機会となった。
米国NGOの経験と寄付文化 -ホノルルマラソンにチャレンジ-
2006年米国滞在中にAIDS MARATHONに参加し、3400ドルを知り合いや一般の人からファンドレイズしながら、マラソンのトレーングを受け、見事完走。記録は5時間25分で、元サッカー選手の前園選手より早かった。多くはない在アメリカの知人や、知り合ったばかりの人にもメールを送り寄付を依頼した結果、目標3400ドルもクリア(自分でも寄付した)。出会ったばかりのアメリカ人がその場で気軽に寄付してくれる経験や、こういったマラソンを通じて寄付をする仕組みなど、アメリカの寄付文化を身をもって体験。
1テーマで事業を水平展開 -社会企業家としてのビジネス・モデル構築力-
児童労働は日本に生活していると目の当たりにすることはあまりないが、実は身近な問題であることを伝えるために、チョコレートとコットンに注目。実際世界1億6000万人の児童労働者のうち約7割は第一次産業である農業などに従事しており問題も多い。またこの分野で活動するNGOがあまりないことから、差別化を図った。チョコレートの原料カカオの原産地ガーナで現地調査を行い、子どもを支援するプロジェクトを2009年2月バレンタインデーにスタート。またチョコレートの児童労働を知ってもらうための教材「おいしいチョコレートの真実」を販売。さらに、250円が現地プロジェクトの寄付になる「てんとう虫チョコ」を販売、初年度の目標を超えた約7000個を売った。さらに、チョコレートを扱う日本企業にアンケート調査を実施。
これは「しあわせへのチョコレート」プロジェクトとして1つのテーマで啓発、政策提言、国際協力事業それぞれの強みを活かした活動を行うことで、相乗効果を得るモデルとなった。
2009年6月にはコットンの分野で「コットンのやさしい気持ち」プロジェクトをスタート。ACEオリジナルのオーガニックコットンのタオルハンカチを販売し、その資金をもとにインドのコットン産業で働く女の子たちの危険労働からの保護、就学機会の提供を2010年度よりおこなっている。
主な著書・執筆
- 『親子で学ぶ SDGs 日本人が今、やらないといけないことがわかる本』監修(2021年、扶桑社)
- 『チェンジの扉~児童労働に向き合って気づいたこと』(2018年、集英社)
- 『わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。―児童労働者とよばれる2億1800万人の子どもたち』(2007年、合同出版)
- ヒューマンライツ・ナウ編『人権で世界を変える30の方法』(2009年、合同出版)
- (財)アジア・太平洋人権情報センター編『アジア・太平洋人権レビュー2004 企業の社会的責任と人権』(2004年、現代人文社)
- 『インドの債務児童労働 見えない鎖につながれて』監訳(2004年、明石書店)
- 『地球が舞台 国際NGO最前線からの活動報告』(津守滋編著、2002年、勁草書房)
主なメディア出演・掲載実績
テレビ
- 2016.7.28:日本テレビ news every.「タネをまく人」 ノーベル平和賞・サティヤルティ氏×児童労働と闘う
- 2014.10.16:NHK高校講座「家庭総合」
- 2011.6.15:CS朝日ニュースター「ニュースの深層」
- 2009.6.1:BSフジ「プライムニュース」 若手の女性社会起業家として出演
- 2009.3.13:テレビ大阪「ボランティア21」
新聞
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2021.10.23:The Japan Times “Tackling chocolate’s dark secret – child labor”
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2021.1.5~2021.6.29:東京新聞 コラム「紙つぶて」連載
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2020.7.6:東京新聞「この人」児童労働の根絶に取り組む岩附由香さん
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2019.4.1:The Japan Times “Leading Japan’s fight against child labor on a global scale”
- 2011.5.30:朝日新聞「あの人とこんな話」~児童労働を知って行動せずにはいられない
ラジオ
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2019.6.1:J-WAVE SEASONS ”ESTEE LAUDER MAKE TOMORROW BEAUTIFUL”
- 2009.3.13:テレビ大阪「ボランティア21」
ウェブメディア
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2021.6.18 / 2022.6.25:Dialogue for People 【NGO 世界を見つめて】(前/後編)
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2021.2.25:ハフポスト チョコプラがコンビ名を「チョコレートサステナブル」に変更?長田庄平さんと考えた、チョコの裏にある児童労働
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2018.10.22:8bitNews「NewsX」生放送
- 2017.8.8:東洋経済オンライン あなたが知らない児童労働の過酷すぎる現場
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2015.11.26:PRESIDENT WOMAN Online 「私だからできること」は何か? メンターとの出会いでめざすべき道が見えた瞬間
雑誌
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2019.9.1:mundi September 2019「特集NGO 世界をつなげる市民のちから」
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2019.4.25:国際開発ジャーナル 2019年5月号「格差解消の観点から積極提言「具体性」を重視し政府に行動求める」
- 2015.7.8:日経エコロジー NGO、社会起業家 共に創る新ビジネス 第11回「責任ある調達」を支え児童労働のない社会をつくる
- 2015.6.27:ヴァンサンカン8月号「私とチャリティ」
講演実績
企業・ビジネス関連
- 一般財団法人企業活力研究所「第4回CSR研究会」
- グローバルコンパクトネットワークジャパン 上智大学国連ウィーク共催イベント「企業・NGOと考える『この商品が皆さんの手に届くまで』」登壇
- 株式会社ファンドレックス「ソーシャルイノベーションサミット2017in神石高原」登壇
- 株式会社博展「サステナブルブランド国際会議2018東京」登壇
- 国際オーガニックEXPO2017登壇
- 損保保険ジャパン日本興亜株式会社CSR部
- 全日本空輸株式会社
- 株式会社ジャパンタイムズ
- 株式会社大川印刷
- 株式会社ファンケル
- CSRアジア東京事務所
- NEW CONFERENCE~女性社長が動かす東京の未来 その他多数
大学、教育機関
- 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科「システムデザイン・マネジメント特別講義」
- 中央大学(グローバル人材育成フォーラム)「文科省『経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援』事業採択大学東日本第2ブロック・イベント グローバル人材育成フォーラム」登壇
- 上智大学、桜美林大学、東海大学、同志社大学、お茶の水大学、その他多数
自治体
- 川崎市、横須賀市、名古屋市、広島県、鳥取県、その他多数
その他団体等
- 国連開発計画(UNDP)、日本教職員組合、各地ロータリークラブ、生活協同組合、NPOなど多数
講演・セミナーのテーマ例
- サプライチェーンに存在する人権問題
- SDGs時代の今、企業に求められること~ビジネスとサステナビリティ、人権
- 児童労働、子どもの権利
- SDGs(持続可能な開発目標)達成のために、私たちができること
- 女性が活躍できる組織作り、「学習する組織」への挑戦
- ソーシャルな起業
- NPOの広報、ファンドレイズ、経営、協働とアドボカシー・キャンペーン
- 学生だから出来る、国際協力とは?キャリアをどう作る?
経歴
- 1974年12月17日 東京生まれ
- 1993年3月 桐朋女子高等学校卒業
- 1997年3月 上智大学卒業
- 1997年12月(大学院在籍中に)ACEを設立
- 2000年 大阪大学大学院国際公共政策研究科博士前期課程修了
- 1999年~2005年まで ACE代表の傍ら、NGO職員、会社員、国際機関職員、フリー通訳
- 2004年 児童労働ネットワーク設立
- 2007年 ACE代表を専任(現在まで)
- 2008年 人権・労働面の国際社会監査規格SA8000の研修修了
ACE派遣可能講師一覧