児童労働のない未来へ-NPO 法人ACE代表 岩附由香のブログ

もし、22歳のあの夜に一晩寝ないでACE設立趣意書を書いていなかったら。
もし、22歳のあの秋に「一緒にやらない?」と現事務局長の白木に電話していなかったら。
今の私もACEも、児童労働から救出した1000人以上の子どもの笑顔もなかったかもしれません。

そんな私の経験から、あまりにも多すぎる今の社会の心配事を減らすために
「行動を起こす Take Action」することが、思っているよりは難しくないこと、
そして自分の小さな行動が「違いを生みだす make a difference」することなど、読んだ人が感じ、NPO/NGOに関わり始める一歩を踏み出す「背中ポン」になることを願って、日々のことを綴っているのがこのブログです。

2004年からブログをはじめ、2013年のACEウェブリニューアルにあわせて引っ越しました!
代表ブログの内容は基本的に私個人の意見・思想ですが、ACEの活動紹介・報告の場にもなっています。

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年5月13日

インドとまさか

note_kamitsubute_01

インドは私が最も数多く訪れたことのある国だ。長い時には一カ月近く、短ければ数日間、二十年間にわたり、NGO活動を通じて訪れてきた。

そんな縁深いインドに夫が赴任となり、二〇一九年十二月に引っ越した。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、二〇年三月に告知から四時間後に突然の全国ロックダウン。テレビでは警察が厳しく取り締まり、バイクに乗っている人を棒でたたくなどの映像が流れる。実際にドライバーが警察が怖くて家から出られず、また、許可のある車両しか道路を通れないため、買い出しにいけない。オンラインショップには注文が殺到し、注文したものが届かない。水や食料の確保が最重要ミッションとなった数週間を過ごした。

そんな経験を経てスーツケース五個で緊急帰国した昨年四月から一年がたつ。数カ月したら戻るつもりの仮住まいが、家財道具一切を残してきたインドの家よりも馴染んでしまった。

人生には、「のぼり坂、くだり坂、ま坂」があるという。新型コロナの感染拡大は世界中の人にとって「まさか」であった。私も、まさに、まさかの最中である。インドは一日の新規感染者数が四十万人を超え、世界最多を更新中だ。連日、「病院に入れない」「酸素がない」など、悲痛な叫びが耳に入る。インドのみなさん、どうかご無事で。早い終息を祈る

NPO「ACE」代表 岩附 由香

(2021年5月11日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年4月30日

雇用主の育休問題

note_kamitsubute_01

日本は世界に誇れる育児休業制度を持っている。育児休業給付金は給与の67%から50%を支払う制度だ。ただし、それは「雇われている」立場の人だけに限られていることをご存じだろうか。その理由は財源。雇用保険料から支払われるため、雇用主、個人事業主などには適用されない。男女かかわらずだ。

女性でNPOの代表理事を務める友人たちの中には、それを理由にいったん代表の座から退いた人もいる。私自身、育児休暇を取る際、頭をよぎったが、制度に合わせて代表を降りることに抵抗を感じて、踏みとどまった。女性三人が共同代表を務め、それぞれ出産・育児休暇を取っていた会社に聞いたら、育児休業が適用されない雇用主の女性には、会社負担で手当を出したという。

諸外国を見ると、フランス、オランダ、ノルウェー、スイスなどは個人事業主にも、国からの育児休業補償があるという。フィンランドは休業補償だけでなく、働いていなかった人にも手当がでる。

少子化、労働力不足という日本のダブルパンチ克服に向け「女性も輝いて」と言われたが、この育休問題が足かせだ。子どもを産んで、かつバリバリ働きたい意欲ある起業家の女性が子どもを持つこと、二人目を産むことを控えることにつながりかねない。日本の少子化対策にぜひ、考慮してほしい問題である。

NPO「ACE」代表 岩附 由香

(2021年4月27日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年4月21日

子どもの権利条約

note_kamitsubute_01

国連子どもの権利条約をご存知だろうか。一九九八年に採択された条約なので「自分の子ども時代にはなかった」という人もいるだろう。子どもを権利の主体と認め、十八歳未満を子どもと定義している。百九十六カ国・地域が締約し、ここにある子どもの権利を認め、国としてそれを保障する義務を負っている。日本は九四年に批准した。

五十四条ある条文の内容を大まかに分けると、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」にまとめられる。参加する権利の中には「自分が影響を受ける決定について意見を表明する権利」が含まれる。意見を聴かれ、大人が真剣に受け止める権利だ。子ども自身に関わることだけでなく、決定する政策が未来に影響を及ぼす場合、実は子どもが最も重要なステークホルダー(利害関係者)になり得る。子どもの声を聴き、年齢に応じた参加を家庭、学校、地域社会、そして政策決定の中で実現していくことが、実はこの条約の謳う「子どもにとって最善の利益」を実現する近道なのでは、と感じている。

国連子どもの権利委員会が日本政府に繰り返し強く勧告していることがある。条約を方で裏付ける「子どもの権利に関する包括的な法律」を制定することだ。こども庁の議論が活発化している。批准して二七年間、放置されてきたこの宿題も忘れてはならない。

NPO「ACE」代表 岩附 由香

(2021年4月20日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年4月13日

翼を折らない学校

note_kamitsubute_01

私は東京の桐朋学園で小、中、高校時代を過ごした。作曲家の小澤征爾さんの出身校として音楽大学が有名だが、普通科もある。女子高の卒業生は日本初の女性旅客機パイロット、写真家やオリンピック選手など、多方面で活躍している。

いま振り返って、ありがたかったなと思うのは学校のおおらかさ。小学生のとき、三年生の担任の先生がみんな大好きで、年度末になると、職員室に行き、担任を変えないようにお願いし、結局、卒業まで四年間、受け持ってもらった。学校の慣習を越え、子どもの声を聞いてくれた。

中学二年生のとき、当時、流行った漫画に感化され、私の髪の色が茶色になった。昭和六十一年、まだ大人も髪を染めるのが普通じゃない時代、どう考えても目立った。しかし、担任の先生は「岩附、やっぱり髪は黒い方がいいな」と一言いっただけ。学内で問題になっていたはずなのに、学年の先生方に守られていた気がする。その夏に米国へ転居したので、私の茶髪問題は解消した。

帰国した高校時代は体育祭や文化祭に情熱を燃やした。エネルギーを持て余し、枠から外れがちな私でも受け入れられていた感覚がある。ノーベル平和賞を受賞したのマララさんのお父さんの言葉を借りれば「翼を折らない」ということか。今の私の羽ばたきは、この学校の個性をつぶさないおおらかさの延長にある。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年4月13日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年4月6日

思ってたんと違う

note_kamitsubute_01

さぁ、新年度だ。新しい学校、職場でスタートを切る人も多いと思う。私も二十数年前、晴れて志望の大学に入学を果たし、意気揚々だった。ところが、一言でいえば「思ってたんと違う」。ほかの大学に行っている友だちがキラキラして見える。とにかくここを脱出しようと、交換留学の希望を出した。まだ演習の「B」と体育の「A」しか成績が出ていない一年生の夏に。

人気の留学先は成績優秀な上級生たちがその一、二席を争う。一年生での応募は極めてまれで、分が悪い。だから、異例の七人枠があった米国のマイアミ大学を第一希望にした。

うまく合格でき、十カ月を過ごしたマイアミの留学生活は実に楽しかった。その留学期間を終えて、一カ月間、アメリカ一人旅をした。

立ち寄ったメキシコで、子どもの物乞いに会った。少し離れたところで、お母さんらしき人が空を見つめている。「なんで、子どもにこんなことをさせるのだろう」。このときに感じた怒りと残念さが原点となり、国際協力の道を志した。

もし初めから楽しい学生生活だったら、この出会いはなかった。だから、学校や会社が志望や期待通りじゃなくても、腐らず、顔を上げ、見渡してみてほしい。まだ見えていない未来につながる道があなたをきっと待っているから。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年4月6日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年3月31日

通称じゃ困るんです

note_kamitsubute_01

日本では婚姻時、96%は女性が姓を変えている。その変更手続きにかかる時間は膨大だ。私の場合は組織の代表ということもあり、登記など役所への変更届も多く発生した。

十九日に岡山県議会で夫婦別姓反対の意見書が可決された。「家族の絆」「子どもに悪影響」など、科学的根拠のない感情論には反論する気もうせる。ただ、気になるのは「旧姓を通称で使い続ければいい」という考えだ。

旧姓の「岩附」を通称として仕事で使い続けた理由は継続性。このインターネット時代、変えた姓で検索しても、過去にメディアに掲載された自分の記事などが出てこなくなることを危惧した。自分のキャリアが分断される気がしたのだ。

実際、困る場面も出てきた。パスポートを登録すると、その名がそのままネームタグに使われてしまう国際会議や、自分が岩附由香であることを証明できるIDがないことなどだ。事務所に東京都のNPO担当者から電話があったとき、受けたインターンさんが私の本名を知らず、「そのような名前の者はおりません」と答えてしまったという笑い話さえある。

これはどっち?という迷い、説明の手間、行き違いによる雑務と不利益、そして、二つの名前を生きる違和感。だから、通称じゃ、困るんですよね。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年3月30日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年3月23日

消えた名前

note_kamitsubute_01

「岩附(いわつき)」という名字は旧姓で、結婚して戸籍上の本名は夫の姓になったが、仕事はそのまま旧姓で続けている。

どの場合にどちらの名前を書くか。迷うのが家族で出す年賀状だ。友人や親せきが中心だが、私の仕事関係の人も多少いる。そこで、○○由香(岩附)と、かっこで旧姓を併記していたが、それをうっかり忘れた次の年、大学院時代の指導教授からの年賀状の宛名に私の名前はなく、面識もない夫の名前が書かれていた。私の存在は、きれいさっぱりなくなっていたのだ。

先日、「手紙の書き方」を学習中の小学二年生の娘から、私宛のはがきが届いた。宛名は本名の名字が書いてあったが、よく見ると、その下にうっすら「いわつき」を消した跡がある。どうやら娘は不安になって、通学時にこっそりパパに確認し、夫の姓に書き直したらしい。

娘に聞くと「だって、会社で『いわつきさん』って言われていたでしょ。だから、ママのなまえは『いわつきゆか』なのかと思ったの」。

実は、娘を伴って「子連れ出勤」したことが何度もある。会議であれ、イベントであれ、母が仕事で何と呼ばれていたのか、ずっと見聞きしてきたのだ。そうだよね、「いわつきゆか」でも、普通に郵便が届くようになるといいよね、と思う。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年3月23日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年3月17日

3・11を越えて

note_kamitsubute_01

「時計の針を戻せたらいいのに」と、あんなに強く願ったことはなかった。二〇一一年三月十一日。震災発生後、徐々に明らかになる被害の大きさに衝撃を受け、原発事故の影響に恐れながら、何度も冒頭の言葉を自分の中で繰り返した。

私が代表を務めるACEは国際協力を生業とし、災害対応は専門外。それでも「何かを」と、五月から宮城県山元町の災害ボランティアセンターの運営支援に入った。東北の湘南と呼ばれた地域は家ごと根こそぎ津波でさらわれ、多くの人が犠牲となった。現地で一緒に仕事をしたのは、被災し、家族や仲間を亡くした人たちだった。

NPOや企業、社会福祉協議会が立場を超えて協力し、全国から多くのボランティアを受け入れた。その後も交流は続き、一昨年に訪れた町は駅もでき、家も建ち、確実に前進していた。でも、痛みはどれだけ癒やされたのだろうか。

この原稿の結びに迷っていると、携帯電話が鳴った。「十年の区切りなんで、お世話になった方々に電話をね」。声の主は山元町のあの人。「ああ、(亡くなった)あの人の年になったなって感じっす。いろいろあるけど、その分もね、生きていこうかと」。その明るい声が、何もできてない感に勝手にさいなまれ、暗かった私の心と原稿の結末に明かりをともしてくれた。そんな十年を迎えた3・11だった。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年3月16日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年3月10日

奥さまと呼ばないで

note_kamitsubute_01

「奥さま」と呼ばれるのが苦手だ。「主人」も使わない。久しぶりの友人とのやりとりで私の夫を「ご主人さまが」と繰り返し言及するメッセージが来たとき、つい「いや、私の主人じゃないし」と返してしまったことさえある。

初めての就職は大阪にあった非政府組織(NGO)で、一九九九年当時にしてはジェンダーセンシティブな職場だったので、「おつれあい」という言い方が常だった。これは相手のパートナーが異性か同性かも問わないし、便利な言葉である。ただ、相手によっては耳慣れず、聞き取れないこともあるので、面倒になり「○○さんの奥さまは」と会話で使う時もある。

子どもが保育園に通うようになり、新たな「属性で呼ばれる」慣習に直面した。「○○ちゃんママ」である。子どもからそう呼ばれるのはいい。でも、親同士でそう呼び合うことに居心地の悪さを感じてしまう。そんなに目くじら立てることはないのに、とも思う。

でも、なぜ、属性で呼ぶのだろう。私は名前で呼ばれたい。三月八日は国際女性デー。女性の権利を考えるこの日に、これほどまでの抵抗感が一体どこから来るのか、考えてみた。私は誰かの妻、母、娘、そんな「役割」の前に、「ひとりの人」として認められ、関係を構築したい。そう願っているのだと気づく。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年3月9日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年3月2日

ガラスの下駄

note_kamitsubute_01

数年前に参加したダイバーシティー(多様性)に関するシンポジウムでのこと。女性役員が少ないと指摘される日本企業が多い中、社内で「女性役員を増やそう」と動くと「女性に下駄を履かせるのかと言われます。どうしたらいいですか」という質問があった。これに対するパネリストの答えに膝を打った。「簡単です。男性の履いている下駄を脱いでもらえばいいのです」。企業、政府の要職を歴任してきた男性の発言だった。

その後、医大の入試で女性は減点され、その分、男性を合格させていたことが発覚した。まさかこんなあからさまな下駄履かせがあったとは。実はこのような差別が見えないところで、たくさん起きているのではないか、と心配になる。

実際、多くの男性は自分の履いている下駄に無自覚だ。いわゆる「オールドボーイズクラブ」もこの一つ。男性同士の非公式なつながりの中で機会の提供や意思決定が行われ、そのネットワークに属さない女性が機会を逃すことを言う。五輪組織委員会の前会長の辞任を一時引き留めたのは、まさにこれだ。透明で見えない「ガラスの下駄」なので、履かせ合っていることにも気づかない。

機会は人を成長させる。機会が女性に少ないと、それだけ能力を伸ばすチャンスを失う。だから目を凝らして足元を見てほしい。ガラスの下駄、履いていませんか。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年3月2日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年2月17日

わきまえない女より

note_kamitsubute_01

拝啓 森喜朗様。五輪組織委員会の会長をお辞めになりましたが、それで 「女性が多いと、会議が長くなる」など一連のご発言が許されるはずはなく、お便りさせていだきました。

私は重要な会議に、女性が少ないことに違和感を覚えます。最たる例が国会。日本のジェンダーギャップ指数のランクは百五十三カ国中、百二十一位、政治に至っては百四十四位です。「ジェンダー後進国」とされ、今回のご発言で「なるほどね」と世界を納得させてしまいました。

ご発言の裏には「会議に時間がかかるから、女性を増やすのはやめよう。面倒だ」とのお考えがあるように見受けます。日本には、男性中心で、何事も「シャンシャン」と決める会議がいまだに多くあります。会議とは本来「多様な意見」や「本質的な問い」を出し合い、議論して答えを導き出す時間のかかるプロセスではないでしょうか。

また「女性は競争意識が強い」から女性の発言が続くと言っていましたが、私自身、ライバル心から発言したことはありません。「わきまえておられる」というご発言も、ご自身の期待に応える女性が偉いといった「上から目線」を感じます。

ご発言は「これだから、女は」というレッテル貼りそのものです。最後に、四十分も演説されたとか。会議を長引かせたのはあなた様では。わきまえない女より。敬具。

 

(2021年2月17日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年2月9日

チョコと児童労働

note_kamitsubute_01

バレンタインと言えばチョコレート。原料カカオは赤道周辺の地域で生産され、最大の生産地は西アフリカ。生産量一位コートジボワールと二位ガーナで計百五十六万人の児童がカカオ産業で働いている。この推計が昨年、米シカゴ大で発表され、多くのチョコレート関連企業を落胆させた。

二〇〇〇年に英国と米国でカカオの児童労働報道が相次ぎ、米国では議員や政府、企業、NGO、消費者団体を巻き込んで「ハーキン・エンゲル議定書」に合意。児童労働撤廃への道筋を描き、取り組みの強化は業界全体に広がっていった。

それから二十年。児童労働の減少はまだ限定的だ。日本に輸入されるカカオは約八割がガーナ産。私たちが口にするチョコレートの多くに児童労働によるカカオが含まれている可能性がある。

消費者にできることの一つが消費行動で態度を示すこと。米国ではボイコットがNGOの常とう手段だったが、私が代表を務めるACEでは「児童労働のないチョコを」をキャッチフレーズに、児童労働撤廃に貢献するチョコを選ぶ「バイ(buy)コット」を呼びかけている。

日本にはサプライチェーンをたどって児童労働の有無をチェックする仕組みを企業に義務付ける法律はない。ならば、意欲的に取り組むブランドを買うことで課題解決につなげる。そんなエシカル消費も一つの方法だ。(NPO「ACE」代表)

(2021年2月9日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年2月2日

ニ―バーの祈り

note_kamitsubute_01

「ニーバーの祈り」と呼ばれるフレーズをご存じだろうか。「神よ、変えられないものを受け入れる心の静けさ、変えられるものを変える勇気、そして、その二つを見分ける英知を与えよ」。真理だと思う。そして、この「見分け」が難しい。

今年初めからオーストラリアの国歌が一部変わった。元の「私たちは若く、自由だ」という歌詞は、先住民のルーツを持つ国民から「入植前から続く六万五千年もの歴史を無視している」と受け取られていた。著名な歌手で、先住民ヨルタヨルタ族出身のデボラ・チータムさんが、それを理由にサッカーリーグ決勝での国歌斉唱の依頼を断ったこともある。この歌詞を「私たちは一つで、自由だ」と変えた。これを発表したモリソン首相は「先住民に敬意を払い、真実を国歌に反映させるのは当然。今こそ『団結の精神』を」という。

国民の声を聴き、国歌の一部を変える。同じことが日本で起こり得るだろうか。難しいだろうなと、つい思ってしまう。いや、もしかしたら私たちは「変えられないもの」を実際より重く考え、「仕方ない」「どうせ無理」と早々に諦めて、考えることを放棄しているのではないか。

もしそうなら「本当に変えられないのかな」と自問する習慣を身につけた方がいいのかもしれない。他人は変えられなくても、自分の思考は変えられるのだから。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年2月2日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年1月26日

米国と寛容

note_kamitsubute_01

分断と不寛容が代名詞のトランプ政権が終わった。私は米国に三度、住んだが、初渡米は十四歳の時だった。二年間の予定で、家族でボストン郊外に移住し、私は地元の公立高校に入学した。

日本の私立女子校から転校した私にとっては、もう毎日が衝撃の連続だった。

廊下ですれ違う上級生はクルクルパーマにヘッドホン、口には棒付きキャンディー。授業は選択制で、ホームルームは週一回。教室の机の裏に、びっしりついているガムには閉口した。

私のような英語ができない生徒向けの英語クラスがあった。そこで「いつまで米国に」との問いに、ロシア人の子が「for good(永遠に)」と答えた時は驚きだった。仲よくなったアメリカ人に見えた子たちは、実はルーマニア、トルコからの移民だった。

そして、初めて「日本人であること」を自覚したのもこの時だった。真珠湾攻撃の日の全校での黙とうに戸惑いを覚えた。韓国人の友だちが出来た時、母に「よかったね、日本は昔、ひどいことをしたのに」と言われ、戦争の加害を知った。

社会の多様性を体感し、日本を違う角度で見られたことは、いまの自分に大きく影響している。違いを受け入れ、共に生きる。バイデン大統領の率いる米国がそんな価値を国内外で発信してくれることを望む。(NPO「ACE」代表)

(2021年1月26日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年1月20日

公園の黄色いテープ

note_kamitsubute_01

緊急事態宣言が再び発令され、前回の経験を思い出す。昨年四月、感染拡大を受け、自宅のあるインドから日本に緊急帰国し、二週間の自宅待機期間を都内で過ごした。当時七歳と五歳の娘たちは「外に出たいよぅ」と訴えたが、インドの学校のオンライン授業もあり、なんとかやり過ごした。

我慢の二週間が過ぎ「やっと外に出られる」と向かった公園。仮住まいは区境にあり、遊具がテープで巻かれ、使えない公園がある一方、渋谷区側の公園は「人との間隔をとりましょう」というポスターが掲示され、遊具を使うことができた。

そのうち、そのポスターは、二㍍の距離を矢印で実際に示す横長の垂れ幕に変わった。そう、その公園のメインユーザーは未就学の子どもたち。字も読めないし「二メートル」と言葉で言われてもその長さを実感できない。子どもたちのことを考え、理解できるよう伝える努力に感心した。

 国連子どもの権利条約には「遊ぶ権利」も明記されている。感染予防を徹底するなら、遊具よりよっぽど密な満員の通勤電車に、なぜテープを巻かないのか。あの公園の黄色いテープに「経済優先」という大人の都合が透けて見え、子どもの利益はいつも後回しだと落胆したのを思い出す。今回の緊急事態宣言下はどうか。子どもたちの声を真剣に受け止め、子どもにとって最善の利益を考える行政を望む。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年1月19日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年1月12日

夢を奪う児童労働

 「なれるものになるよ、来るもの拒まずだよ」。

  将来の夢をきいたとき、その少年はこう答えた。

 一九九八年にインドで出会ったサディス君は元児童労働者。週六日、製糸工場で働いていた。六日働いても五日分しか給料はもらえない。昼食は出るが、いつまで食べているんだと皿を投げられ、仕事で失敗すると、煙草の火を押し付けられた。

 「親に相談しなかったの」と私がきくと、しなかったという。なぜか。同じように働く別の子どもの親が文句を言いに来たことがあったそうだ。次の日、その子は働きに来なかった。親も捜しに来たが、見つからない。たぶん彼は殺されたと思うという。だから、親に相談しなかったんだと。最後に将来の夢をきいたら、冒頭の言葉だった。

 私がNGO「ACE」をつくるきっかけとなった九八年の「児童労働に反対するグローバルマーチ」は、文字通り、世界百三カ国、八万㌔を児童労働から救出された子どもたち、NGO、市民が六カ月かけて行進し、九九年の「最悪の形態の児童労働禁止・撤廃条約」の実現を後押しした。

 児童労働は子どもの教育の機会、健康的に発達する権利、そして将来の夢や希望も奪う。児童労働者は世界に一億五千二百万人(二〇一七年ILO発表)。デリーのマーチでのサディス君との出会いが、私がこの問題に向き合い続ける一つの原動力になっている。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年1月12日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年1月5日

 

皆さんはどんな初夢を見ただろうか。私は夢を比較的鮮明に覚えているタイプ。あまりにもおもしろいので、起きてすぐその夢をノートに書いたりするほどだ。政治家、友人、先生など、登場人物も入り交じり、支離滅裂なストーリーが多いのだが、不思議と夢の中でもその本人のキャラクターが出ていたりする。

 ある時、こんな夢を見た。襲われ、自分が殺されそうになっている。そこで私は「まだ児童労働の問題を解決していないのに、死ねない!」と焦ってるという夢だ。この夢を見た翌日、たまたまACE著「チェンジの扉」という本のインタビュー取材があり、雑談のつもりでこの話をしたら、本の一部に採用された。図らずも忘れられない夢になってしまった。

 児童労働の問題と出合い、学生時代にACEという団体を設立したのが一九九七年。気づけば二十年以上もこの問題に取り組んでいる。当時、NGOの若手リーダーと呼ばれた私も、気づけば中年。二〇〇七年に出した私たちの著書を「小学生のころに読んだ」という大学生や社会人に出会うようになり、時の流れの速さに驚いてしまう。

 児童労働の問題を解決する。文字通り夢にまで見る私の人生の夢。新年の目標を立てる人も多いと思うが、改めて自分の夢は何かを振り返ってもいいかもしれない。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年1月5日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

企業の社会的責任(CSR)

2020年10月29日

EUがいよいよ人権デューデリジェンス義務化の法案を公表

 

EUデューデリジェンス義務法制化に関する動きのまとめ

 昨年の2019年11月に国連ビジネスと人権フォーラムに参加したときに感じた「各国の人権デューデリジェンス法制化の波」の、大きな波がいよいよやってきました。EUが法制化することをその時点でかなり濃厚な状況でしたが、調べてみるとすでに法案の原案が含まれているレポートが公表されています。

EUデューデリジェンス法案の原案を含むレポート(2020911日付け)

https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/JURI-PR-657191_EN.pdf


 

これについては、日本語の情報があまり探せなかったのですが、これまでの経緯も含めてまとまっているのは以下です。

ECCJのニュース(20204月)

https://corporatejustice.org/priorities/13-human-rights-due-diligence

 このニュースによると、

・2020年4月に「サプライチェーンのデューデリジェンス要件」に関する調査が公表(※1)
・EU Commissioner for Justice のDider Reynders氏がイベントで義務化にコミットと発言(※2)
・EU議会が同時並行で関連するレポートを作成中
・2021年に議会に提案される予定

(上記ニュースの関連深いところ抜粋)

(※1)

https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/8ba0a8fd-4c83-11ea-b8b7-01aa75ed71a1/language-en

 (※2)

https://corporatejustice.org/news/16806-commissioner-reynders-announces-eu-corporate-due-diligence-legislation

  とのことです。

925日時点での以下記事が一番詳しそうです

https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=d82de6bb-4a9c-40ef-9572-e87f0b9bd8c8

※関連文書へのリンクあり 

これに対し、米国NGOヒューマンライツウォッチはリコメンデーションをウェブで公開しています

https://www.hrw.org/news/2020/06/24/recommendations-new-eu-legislation-mandatory-human-rights-and-environmental-due

EUの法案は人権だけでなく環境のデューデリジェンスも含めたものになっており、この法案が成立すると、EU加盟国は2年以内にそれを国内法に適用しなくてはなりません。

世界は動いている!

日本は?というと、日本もようやく、ビジネスと人権指導原則の国内行動計画を発表しました。2016年に作成すると表明してから、ACEも様々なプロセスに参加してきました。パブリックコメントもしました。これについて言いたいことはいろいろあるのですが、とにかくこの計画が出来たのは第一歩。「計画」といいつつ今やっていることの羅列では・・・というツッコミは私だけでなく多くの方々が思っていることだと思いますが、外務省が取り纏めて他の省庁にお伺いをたてながらやるとなると、こうしかならないのだと思います。ビジネスと人権については、政府がビジョンがあまりなく、決まっていることもないので、踏み込んで書くのが難しいのかな、と想像します。

ACEや児童労働ネットワークでは、ビジネスと人権に関する人権デューデリジェンス、サプライチェーンの透明化を促進する法整備、また、公共調達に関する法整備を「検討する」ということをこの行動計画に入れてほしかったのですが、残念ながらそれは入りませんでした。しかし、EUでもこのような流れが来ている中で、日本にもいつか来ると信じて、タイミングを待ちつつ、今後も世界の動きに注目していきたいと思います。

 

児童労働

2020年9月5日

コロナ危機が若者のアルバイトを直撃。児童労働の増加を危惧しています

コロナ危機による収入減はおとなだけではなく、アルバイトをしている高校生や大学生を

直撃しています。

中にはバイト代を削られ、犯罪に加担してしまうケースも。

https://this.kiji.is/639026091110368353

このケースは大学生ですが、これが高校生や18歳未満だった場合は「最悪の形態の児童労働」にあたります。世界全体でコロナ禍により児童労働増加が懸念される中、飲食店などのアルバイトが減り、選択肢が少なくなり代わってこのようは犯罪や、性産業などいわゆる「最悪の形態の児童労働」に陥ってしまわないか、心配です。

実は、この若者のアルバイト問題、コロナ危機発生直後に多くのNPO団体などがそこに関わる調査を実施しています。そのリストをまとめました。

若者のアルバイトにおけるコロナ危機の影響

特に高校生がなぜアルバイトをしているのか?自分の携帯電話料金が欲しいだけでは?みたいなことをよく言われますが、実は、7割が「貯金」という調査も。

https://www.mynavi.jp/news/2019/11/post_21721.html

教育を受けるのに、家庭の負担額が先進国で最も多い日本(教育の公的支出が35カ国中最下位の日本 https://resemom.jp/article/2019/09/11/52413.html )、このコロナ禍により、子どもたちの進学の道が閉ざされてしまうのではないかと危惧しています。

 

 

 

資金調達・ファンドレイジング

2020年6月12日

6月12日は児童労働反対世界デー

今日は児童労働反対世界デー。ご無沙汰してしまったこのブログも、今朝のJ-WAVE JK Radio Tokyo Unitedのラジオを聞いてくださった方がご覧になるかも!と思って更新させていただきます!

ACEは1997年、学生だった私が、児童労働に反対するグローバルマーチの活動がやりたくて
立ち上げたNGOです。あれから22年、現在はご寄付が税控除の対象となる認定NPO法人の資格も得て、職員も13名となり、活動地もインド、ガーナ、日本と広げることができました。インド・ガーナの28村で2360人の子どもたちが児童労働の状況から抜け出し、1万3500人の子どもたちの教育環境の改善を助けてきました。

世界推計が発表された2000年から、減少傾向を続けてきた児童労働。しかし、新型コロナウィルスの影響は、1億5200万人の児童労働者にも、そしてそのリスクが高い子どもたちにも出ています。学校が再開されても子どもたちが戻ってこず、働くのではないか、、、そんな懸念の声が世界であがっています。

私たちが毎日使うものにも、実は児童労働は関係しています。携帯電話のバッテリーに使われるレアメタルの採掘に。チョコレートの原料カカオの栽培されている畑で。そして実は、大量の農薬を使い健康被害がひどいコットン畑でも、多くの女の子が働いています。そのつながりが見えていないのが現状ですが、辿っていくとそういうつながりが浮き上がってきます。

そんな中、私たちができることは何か。

消費者として、意識をして商品を選ぶこと

企業人として、児童労働などの人権侵害に加担しないようなビジネスモデルを確立させること

政府関係者として、子どもの利益を優先する政策に十分なリソースをあてがい、プログラムを実施すること

市民として、問題について知り、自分が出来るアクションを起こすこと。

それぞれの立場で、出来ることがあります。

そしてACEの活動は、消費者、企業、政府、市民、それぞれのみなさんと一緒に作り上げてきた活動です。

現在クラウドファンディングに挑戦しています。ぜひ、応援してください。
https://readyfor.jp/projects/ACESDGs2020

今こそ誰一人取り残さない。 ACE SDGsプロジェクト2020開始のお知らせ

協力したいけど、コロナ禍で私も大変なんです、、という方もきっといると思います。

誰もが当事者である今回のコロナの影響ですが、その受ける影響には大きな差があるように思います。日本の中でも非正規雇用の多くの人が収入減となり、若者も含めて大変な状況になっている人が多いと思います。そういう方々にはぜひ、自分の状況について自分を責めるのではなく、アクセスできるサポートがあればアクセスしていただき、可能な限り、頼れる制度や人を頼ってもらいたい。そこに支援がいきわたるように、国内でも声をあげていかなくてはならないと思っています。

そしてそんな中、自分とは違う状況の人に想いを馳せる共感、分断を乗り越えるパワー、格差を広げない政策選択が必要だと思います。

最後に、誰でもできることを、ひとつ。

ACEの活動を応援してくれている、谷川俊太郎さんが、ACEのために書き下ろしてくださった詩のシェアです。

児童労働について子どもの目線になって書いてくれたこの詩の動画を、ACEのFacebookページでご紹介しています。ぜひ見てみてください。そして、もしよければ、あなたのお友達も見てもらえるように、この投稿をシェアしていただけたら幸いです!

児童労働の問題を知らなければ、問題はその人にとって「ないこと」になってしまう。6月12日の児童労働反対世界デーを機に、ますます困難な状況に追いやられそうな子どもたちのことに想いを馳せる2分間を、シェアしていただけませんか?

この投稿にはクラウドファンディングへのリンクも貼ってありますので、まるごとシェアしていただけるとありがたいです!

https://www.facebook.com/watch/?v=565595747662302

そのこ

6/12は児童労働反対世界デー!詩「そのこ」

ご協力、どうぞよろしくお願いします!

 

ページの先頭へ戻る