日本の子ども支援
日本にも児童労働は存在します。子どもの7人に1人が貧困状態にあるなか、児童労働から子どもを守り、子どもの権利を実現するための活動を行っています。
日本における児童労働とは
子どもを児童労働から守るために、国際労働機関(ILO)によって「最低年齢条約」(第138号条約)と「最悪の形態の児童労働条約」(第182号条約)が制定されています。これらの条約を日本は批准していて、労働基準法に反映されています。ただし、労働基準法では国際条約で定められたすべての児童労働が含まれておらず、「児童福祉法」「児童買春・児童ポルノ禁止法」「風俗営業適正化法」なども適用されています。
国際基準に基づき、日本での児童労働は次のようになります。
1.労働基準法によって、年少者(18歳未満)に禁止されている労働
(1) 就労最低年齢と危険有害な労働の就業制限
・18歳未満
子どもの安全、健康、道徳を害するおそれがある危険有害な労働(→詳しくはこちら)は、禁止
・満15歳<就労最低年齢>
満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了するまでの労働は、原則として禁止
・満13歳
軽易な労働を含むすべての労働が、原則として禁止
(2) 深夜業(午後10時から翌日午前5時まで)は、原則として禁止
(3) 時間外労働や休日労働は、原則として禁止
2.国際条約で定められた危険有害労働
子ども自らがかかわった場合だけでなく、他人から強制された場合も児童労働と見なされます。
(1) 現代的奴隷(人身取引、債務労働、強制労働、子ども兵士など)
(2) 買春やポルノに子どもを使用
(3) 犯罪など不正な活動に子どもを使用(特に薬物の生産や取り引き)
(4) 子どもの安全、健康、道徳を害し、心身の健全な成長を妨げる危険で有害な労働(→詳しくはこちら)
ACE 日本の子ども支援プロジェクト
先進国の児童労働者数は200万人と推計されています(国際労働機関、2017年)。日本にも児童労働は存在し、持続可能な開発目標(SDGs)の目標8、ゴール7「2025年までの児童労働撤廃」を達成するためには、日本においても児童労働をゼロにしなければなりません。
ACEは2016年9月から日本の児童労働について調査を開始しました。さまざまな形態の児童労働が存在することが分かり、なかには危険で有害な労働に従事して命を落としたり、身体や心の健康を害された子どももいます。また、違法な労働条件や劣悪な労働環境などブラックバイトと言われている状況下で働かされている子どもも多くいます。
児童労働から子どもを守り、子どもが子どもらしく生き、夢を実現できるようにサポートします。
1.児童労働の実態調査
日本における児童労働の形態、規模、特徴、要因などを調査しています。調査結果を発信して、多くの人に児童労働問題を知ってもらうとともに、問題解決に向けたACEの活動を計画するために生かします。
2.子どもを児童労働から守るための啓発活動
児童労働の観点から労働基準法などを説明した2種類のリーフレットを作成、配布しています。
「あなたのアルバイトは、だいじょうぶ?」
働いている子どもや働こうと考えている子どもが、「働く人を守るルール」について知って、危険で有害な労働、児童労働、ブラックバイトから自分の身を守りましょう!
「あなたのアルバイトは、だいじょうぶ?」ダウンロードはこちら
「あなたの職場で、年少者の労働環境が守れていますか?」
年少者(18歳未満)にも労働基準法が適用され、さらに年少者の健康や福祉を守るために特別な規定があります。子どもを雇っている人、親、学校の先生などは、これらを理解して、児童労働を予防しましょう!
「あなたの職場で、年少者の労働環境が守れていますか?」ダウンロードはこちら
全国の定時制高校を中心に配布しています。お寄せいただいた感想の一部をご紹介します。
生徒さんからの感想
- 「ケースごとに対処法が書かれていて、わかりやすかった」
- 「ためになることばかりで、すごいと思いました」
- 「いざっていうとき使えそう」
- 「アルバイトを先でレジのお金が不足して、給料から差し引かれたことがありました。もっとたくさん知りたいと思いました」
先生からの感想
- 「表紙のチェック項目は、見やすかった」
- 「アルバイトへの意識・法律に守られていると書いているところが、役に立つ」
- 「定時制の生徒はアルバイトをしているので、よい機会になりました」
配付の前に教員研修を実施
定時制高校では、アルバイトや就職をしている生徒が多くいます。生徒から聞いた話から、「その仕事ってだいじょうぶなのかな?」と先生は思うことがあるそうです。
リーフレット「あなたのアルバイトは、だいじょうぶ?」を生徒に配布するにあたって、児童労働について教員研修をしたいというご要望を神奈川県下の定時制高校からいただきました。児童労働の定義、児童労働から子どもを守るための国際条約や国内法などについて説明した後、ある児童労働の事例への学校としての対応をグループ・ディスカッションするという研修を行いました。
多くの先生方から、「研修は役に立った」というお声をいただきました。
- 「教育現場で生かせる内容でとても勉強になりました。ありがとうございました」
- 「定時制の生徒は、何かしらのアルバイトについている割合が高いので、児童労働に関して知る・考えることができてよかったと思います」
- 「大切な生徒を守るための知識をいただきました。生徒のアルバイトの話を聞くと『給料が高い』ことだけに注目し、アルバイトを始める子が多くいるように感じます。生徒にも正しい知識を伝えていきたいと思います」
また、日本の法律が児童労働から子どもを守るためには不十分である点についても、ご意見をいただきました。
- 「子どもを守る法整備が必要と感じた」
- 「グレーゾーンを無くしていくことが児童労働を減らす一歩だと思いました」
◆リーフレットの内容を説明する研修会などのご希望がありましたら、お知らせください。
◆リーフレットの内容について、コメントなどをお寄せください。(「分かりやすい」「役に立った」「こうした方がいい」「これも含めてほしい」など)
Email:advocacy%acejapan.org(%を@に変えて送信してください)
Fax:03-3835-7601
3.児童労働予防プロジェクト
中学校を卒業後、高校を中途退学後、高校など学校へ行きながら、働いている子どもたちを主な対象とし、学校や地域と連携しながら子どもを児童労働から守るためのプロジェクトを開始します。
活動報告
2019年10月18日
NHKクローズアップ現代「ルポ 外国人労働者の子どもたちへ〜受け入れ拡大のかげで〜」の放送を受けて
外国にルーツをもつ子どもたちと児童労働のリスク
外国人労働者の子どもたちの不就学の実態が、2019年9月18日放送のNHKクローズアップ現代「ルポ 外国人労働者の子どもたち ~受け入れ拡大のかげで~」で取り上げられました。番組では、全国で約2万人の外国籍で義務教育年齢の子どもの就学状況が確認できておらず、8,000人以上が学校に通っていないという調査結果が報告されました。その背景には何があるのでしょうか。
2019年3月10日
カイラシュ・サティヤルティ氏の活動を描いたドキュメンタリー映画『The Price of Free』上映会&トークイベント開催@沖縄県那覇市
沖縄県でACE初となるイベントを2019年3月10日に沖縄県立図書館で開催しました(共催:公益財団法人みらいファンド沖縄)。100ミリオン・キャンペーンの一環として、世界中で同時無料公開されている『The Price of Free』を上映した後に、「日本の児童労働を考える」と題したトークを行いました。
2018年9月18日
子どもを児童労働から守るためのリーフレット配布開始
子どもを児童労働から守るためのリーフレット「あなたのアルバイトは、だいじょうぶ?」と「あなたの職場で、年少者の労働環境が守れていますか?」の配布を開始しました。
2018年6月18日
院内セミナー開催「日本にもある児童労働~SDG 8.7達成に向けてアクションを!~」
ACE主催としては初となる議員会館内でのセミナー「日本にもある児童労働~ SDG 8.7達成に向けてアクションを!~」を2018年6月18日(月)に開催しました。55名もの方にお集まりいただき、日本の児童労働問題への関心の高さを感じました。
2017年12月21日
緊急声明「15歳の少女が工場で転落死―日本にもある児童労働の現状把握と対策を!―」
2017年12月14日午前10時55分ごろ、茨城県古河市の鉄鋼卸売会社、中央鋼材古河工場の屋根から15歳の少女が約13メートル下のコンクリート床に落ち、死亡する事故がありました。少女は事故当時、屋根に設置された太陽光パネルを点検、清掃する仕事をしていました。