国連子どもの委員会が日本政府の報告書を審査、勧告
国連子どもの委員会が日本政府の報告書を審査、勧告
日本は国連「子どもの権利条約」を1994年に批准しました。批准国は条約の履行状況を批准から2年以内に、それ以降は5年ごとに政府報告書として提出しなければなりません。日本政府は、第4・5回報告書を2017年6月に提出し、子どもの権利委員会による審査が2019年1月16~17日に行われ、2月1日に総括所見が発表されました。
こちらをご覧ください→CRC委員会総括所見
この過程において、市民社会組織もその見解を報告書として子どもの権利委員会に提出することができます。ACEは、子どもの権利条約NGOレポート連絡会議に参加し、2017年10月に提出された「日本における子どもの権利条約の実施:日本の第4回・第5回定期報告書に関するNGOの視点」作成に関わりました。報告書に含めるべき重要事項を議論、決定する会議に出席し、一部原稿を執筆しました。
「ビジネスと子どもの権利」と「児童労働」などについて、政府に対策を強化してもらいたい点について強調しました。その一部をご紹介します。
「ビジネス分野における子どもの権利保障」
・企業活動において児童労働や強制労働を含む子どもの権利を尊重・保護するための法的・制度的な枠組みを構築し、権利侵害が生じた場合の救済措置へのアクセスが確保できるように検討すべきであること
・国連「ビジネスと人権に関する指導原則」で求められている国別行動計画の策定プロセスにおいて市民社会の参加を確保すること
「人身取引」
・予防や再犯防止のため、人身取引事犯に関する厳罰化
・人身取引の被害にあった子どもに対し、包括的で子どもにやさしい支援とリハビリテーションを提供すること
「性的搾取」
・JKビジネス、アイドルなど、子ども(特に女の子)の性を商品化したビジネスが蔓延している状況に対して、経営者や利用者を包括的に取り締まる法律の制定
・JKビジネスや買春に関わっていた子どもに対して、補導や処罰ではなく、保護やケアなどの対策を講じること
・意識啓発や子どもの視点にたった相談サービスの実施
「経済的搾取」
・児童労働の実態調査を行い、対策を講じること
・社会全体で児童労働を監視し、発生させないメカニズムの構築
「児童ポルノ」
・「自画撮り」の被害やSNSを通じた児童買春が増加していることから、「裸の画像を送るように言った」「買春をもちかけた」時点での取り締まりが行えるように法律を改正
・子どもが被害にあうことを防ぐための予防教育の実施
子どもの権利委員会による総括所見については、虐待に関する勧告があったことが報道されていたのを耳にした方がいらっしゃるかもしれません。総括所見には、虐待だけでなく子どもの権利条約の条文すべてに照らし合わせた履行状況を審査した結果、懸念と勧告がまとめられています。緊急に措置をとるように勧告している分野は、差別の禁止、子どもの意見の尊重、体罰、家庭環境を奪われた子ども、リプロダクティブヘルスと精神衛生、少年司法です。
ACEが提言を行った分野に関しては、次のような勧告などがありました。
「子どもの権利とビジネスセクター」
・子どもの権利に関連する国際基準の順守についてビジネスセクターに説明責任を果たさせるための規則を採択し、実施すること
「人身取引」
・子どもの人身取引の加害者が処罰を受けるようにし、罰金刑ではなく厳罰化するべきである。
「児童買春・児童ポルノ」
・JKビジネスやイメージビデオなど、児童買春につながるような商業活動の禁止
子どもの委員会による勧告に法的拘束力はなく、例えば子どもの権利に関する包括的な法律をつくることなどは、第1回の審査から続いている勧告です。次回の政府報告書および市民社会による報告書の提出は5年後となる予定です。ACEは、引き続き子どもの権利向上のために声を挙げ続けていきます。みなさまのご支援、ご協力、よろしくお願いします。
- カテゴリー:報告
- 投稿日:2019.02.20