コットンのやさしい気持ち

コットン生産地支援「ピース・インド プロジェクト」

インド・コットン生産地域の子どもたちの教育支援

インドは世界で有数なコットン生産国で、世界最大規模の耕地面積と生産量を誇ります。インドで作られたコットンは、糸、生地、衣料製品など様々な形で主に中国を経由して日本に輸入されています。コットンはまさに「見えない糸」で私たちの生活とつながっているのです。

インドのコットン畑では、35万人以上もの子どもが働き、その6~7割が女の子であると言われています(*)。ACEは、そんなコットン生産地域で、危険な労働にさらされている子どもたちを守り、教育を支援する「ピース・インド プロジェクト」を2010年1月から行っています。

*出典:Davuluri Venkateswarlu, Glocal Research, 2020

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インドのコットン生産地での支援活動「ピース・インド プロジェクト」とは

コットン生産地での危険な児童労働から子どもを守り、就学を徹底することを目的としたプロジェクトです。子どもの公立学校への就学徹底などを通して児童労働を予防し、また女の子の自立支援や貧困家庭の親の収入向上支援などを行い、貧困と児童労働の悪循環を断ち切れるよう取り組んでいます。

プロジェクト名 英語名:PEACE-India Project (Promoting community Engagement for Assisting Change from child labour to Education in cottonseed production area in India) 日本語訳:児童労働を教育へ変える、インドのコットン生産地のコミュニティ参加促進プロジェクト
実施期間 2010年1月~2014年3月:アンドラ・プラデーシュ州のA村 2014年~2019年:テランガナ州のB村、C村 2019年~現在:テランガナ州のD村、E村、F村
パートナー団体 SPEED(Society for People’s Economic & Educational Development)

 

プロジェクト実施地域について

インドはどんな国?

南アジアに位置し、国土はおおよそ日本の9倍で、人口は中国に次ぐ世界第2位の約13億人、また多様な民族、宗教、言語によって構成されています。経済成長が著しい新興国(BRICs)の一つである一方、1日1.9ドル未満で暮らす貧困層は1億7,000万人以上(2015年:世界銀行)で、貧富の格差の大きな国としても知られています。

国土 328.7万k㎡(日本の約9倍)
人口 13億8,000万人(2020年:世界銀行) 首都:ニューデリー
気候 雨季(6月~9月)、乾季(10月~3月)、夏(3月~5月)
民族と言語 インド・アーリヤ族、ドラビダ族、モンゴロイド族など。連邦公用語はヒンディー語、他に憲法で公認されている州の言語が21
宗教 ヒンドゥー教徒80.5%、イスラム教徒13.4%、キリスト教徒2.3%、シク教徒1.9%、 仏教徒0.8%、ジャイナ教徒0.4%
主な 産業 農業、工業、鉱業、IT産業
若者の識字率 男90%、女82%(UNICEF:2010-18年)
初等教育修了率 男92%、女91%(UNICEF:2012-18年)
出生時平均余命 69歳(UNICEF:2018年)
児童労働者の数(5~14歳) 435万人(国勢調査:2011年) 約8割が農業、その他製造業、サービス業、家事労働などの分野に従事
法律 インド国憲法(1950)、児童労働禁止及び規制法(1986)、債務労働制廃止法(1976)、無償義務教育権利法(2009)

プロジェクト実施地域とその課題

インド国内でコットン生産、特にコットンの種子栽培が最も盛んなテランガナ州ジョグランマ・ガドワル県で活動を行っています。インドのシリコンバレーと言われIT産業の盛んな州都ハイデラバードから南へ車で約3時間。活動を行う地区は識字率が約28%と国内や州内で最も教育の普及が遅れており、児童労働が最も多いと言われる地域の一つです。

支援している村へ続く道

 

コットンを栽培する村の住民たち

コットン畑で作業をするインドの女の子ACEはインドのコットン産業における児童労働に関する調査を、現在プロジェクトを実施する地区で2007から2009年に行いました。調査の結果、コットン種子生産地での児童労働が多く、行政による対策が行われていないことが分かりました。また、住民のほとんどが農家で、土地なし農民や低カースト層などの貧困家庭が多く、女子やカーストへの差別が根強くありました。そこで2010年から人口約2,000人、約450世帯のA村でピース・インド プロジェクトを開始しました。 

コットン畑で働く7~8割が女の子ですコットン畑では、たくさんの子どもたちが長時間、安い賃金で働かされ、学校に通っていませんでした。子どもたちの多くは、畑で使う農薬の影響で皮膚病や呼吸疾患などの病気に悩まされていました。当時村には公立学校が1つしかなく、教室が5つ、政府から派遣された教員は2人しかいませんでした。クラスは小学1~7年生までしかなく、トイレは壊れていて使われていないなど、教育環境、衛生環境が整っているとは言えませんでした。

 

ACEは、この状況を改善し、子どもたちが継続的に質の良い教育を受けられるよう、パートナー団体SPEEDとともに活動を行ってきました。

村ではどんな活動をするの?

インド・コットン生産地域で、正規の学校への編入を支援するブリッジスクールに通う子どもたち子どもや親、村のリーダーや学校、行政との連携を強化し、就学の徹底、教育環境の改善、女子のエンパワーメント、親の収入向上に取り組むことによって、住民が自ら児童労働をなくし、全ての子どもが質の良い教育を受けられ、プロジェクトが終了した後も住民の意志その状態が継続されるように活動しています。

 

◇ 児童労働や子どもの教育に関する意識啓発

村で集会や研修、文化プログラムなどを行い、児童労働や教育に関する親や住民の意識を高めます。

◇ 児童労働の見回り活動や家庭訪問による親の説得

畑で働く子どもに学校に来るよう話をする様子住民ボランティアによる「子ども権利保護フォーラム(CRPF)」を結成し、児童労働がないか畑の見回りをしたり、子どもの就学状況をモニタリングします。児童労働をしている子どもがいたら家庭訪問をして、子どもが学校へ通えるよう親を説得したり、家庭環境をよくするための対策を考えます。

◇「ブリッジスクール」の運営

働いていたために学校に行けなかった子どもが基礎学力を身につけ、村の公立学校へ就学できるよう支援するための「ブリッジスクール」を運営しています。経済的に貧しい家庭の教育への負担を少しでも減らすため、給食や制服、教科書や学用品などを無償で支給し、子どもが継続的に学ぶ習慣を身につけられるようにしています。

◇ 学校環境の改善

学校で勉強する女の子学校の教員や村のリーダー、親や子どもたちによる「学校運営委員会(SMC)」が定期的に会議を開き、教育や子どもに関わる課題を話し合い、行政機関と連携して、学校の施設や教育の質の改善に取り組んでいます。

◇ 女の子の職業訓練とエンパワーメント

職業訓練センターで仕立て屋になるための訓練を受ける女の子たち将来の自立を支援するため、縫製・刺繍および紙皿作製の職業訓練を行っています。特に、義務教育を十分に受けられなかった女の子たちが基礎教育や技術を身につけることで、将来自立して生活できるよう支援しています。また、女の子たちのグループを作り、女子への差別や児童婚の習慣などの問題を話し合い、改善に取り組んでいます。 

◇ 女性(お母さん)の収入向上

収入向上支援女性の自助グループを活性化させて貯金をするための訓練をしたり、小規模ビジネスのスタート支援を行っています。母親が安定した収入を得ることで、自立を促し、子どもの教育を支えられるよう支援し、女性たちの力を貧困からの脱却に活かしています。

 

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支援地を訪問するスタディツアーも実施

ピース・インド プロジェクトの対象地と、オーガニックコットンの栽培地や紡績工場などを訪問するコットン・スタディツアーを実施しています。
※ 新型コロナウイルス感染症の状況によって、実施可否を判断します

 

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インドスタディツアーのメンバーは村人たちからの歓迎を受けました

ピース・インド プロジェクト担当スタッフ

森 瑞貴 ピース・インド プロジェクト マネージャー

インドのコットン種子生産において35万人もの子どもが働いているという事実に、大きな衝撃を受けました(出典:2020年、Davuluri Venkateswarlu, Glocal Research)。児童労働から子どもを解放することによって、子どもの学ぶ機会を取り戻すことはもちろんですが、子どもが安心して毎日を過ごし、笑顔や希望が自然と溢れてくる日常を生きられるようになります。そのような子どもの未来を思い描きながら、村の人々と一緒に活動しています!

事務局次長/子ども・若者支援事業チーフ 成田由香子

成田 由香子 事務局次長/ 子ども・若者支援事業チーフ

「もう学校へ行くには年齢が遅いから勉強できない」と言って働いていた女の子たちが、職業訓練センターに来るようになって見違えるほど明るくなりました。学ぶ機会を取り戻し、将来への希望を持った女の子たちをサポートしていきます。

インドのパートナーNGO「SPEED(スピード)」

ACEはSPEEDとパートナーシップを結び、インドのコットン生産地域で働く子どもたちを危険な労働から守り教育を支援する「ピース・インド プロジェクト」を行っています。

詳しくはこちら

インドのパートナーNGO SPEED

これまでの「ピース・インド プロジェクト」の支援実績・報告

これまで支援を行ってきたA村、B村、C村では、児童労働をしていた子ども794人が学校へ行くようになり、3つの村で「児童労働のない村」を実現しました。今では、住民自身の意志と行動で児童労働のない状態を維持しています。 現在は、テランガナ州のD村、E村、F村で活動を行っています。

支援期間 支援地 子どもの人数
(*1)
児童労働から
救出した人数
(*2)
職業訓練で支援した人数
(*3)
2010年1月~ 2014年3月 A村 約550人 206人 65人
2014年4月~2019年3月 B村、C村 約1450人 588人 160人
2019年4月~現在(2023年8月) D村、E村、F村 約1470人 158人 110人
合計 6村 約3470人 952人 335人

※2022年11月現在
(*1) 子どもの人数=義務教育年齢の6~14歳の各村調査時点の人数
(*2) 児童労働から救出した人数=義務教育年齢の子ども
(*3) 職業訓練で支援した人数=義務教育年齢を過ぎた15~17歳の女の子


1,000円で子ども1人のブリッジスクールでの給食1カ月分を支援できます

ピース・インド プロジェクトを通じて、インドのコットン生産地域で児童労働をなくし、村人たちが持続的に、かつ自発的に「児童労働のない村」づくりに取り組む環境を作っています。

インドのコットン生産地域の子どもたちを支援「コットン募

インドの女の子たち

インドのコットン生産地域の子どもたちを支援する「コットン募金」にご協力をお願いします!「ピース・インド プロジェクト」を通じて、子どもたちを危険な労働から守るための活動に活用させていただきます。いますぐ寄付ができます!

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