コットンのやさしい気持ち

【インド便り】変化の途上にいるヴィジェラクシュミさん一家

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インド・テランガナ州のコットン生産が盛んな地域でACEと現地パートナーNGOのSPEEDが行う「ピース・インド プロジェクト」では、支援を行う村から児童労働者がいなくなることはもちろん、支援期間が終わった後は村の住民たち自身が児童労働のない状態を維持していくことを目指して活動を行っています。スタッフがいなくなってからも児童労働のない状態を保つためには、住民たちが子どもの労働に頼らず家計を維持し、子どもを学校に通わせようという意志を持ち続けることが不可欠です。

そのため、プロジェクトでは児童労働があることが当たり前となってしまっている意識を変えるための啓発活動を重要視して活動を行っています。これまで、多くの住民が意識を変え、たくさんの子どもが学校に通うようになってきました。

村に住むヴィジェラクシュミさん(仮名)一家は、その意識の変化の途上にいます。ヴィジェラクシュミさんは現在13歳で本来学校に通うべき年齢ですが、学校に行かずコットン畑やとうがらし畑で働いています。小学校1年生の歳から村の学校に入学し学校に通っていましたが、約2年前から両親に畑で働くように言われ学校を中途退学してしまいました。中途退学の直後は学校の先生がヴィジェラクシュミさんに学校に通うよう声をかけてくれましたが、お父さんのベンカテシュさんがそれを追い返してしまったそうです。

 

ラーマラクシュミさん一家

ヴィジェラクシュミさん一家

 

うちが経済的に苦しいのは知っていたし、お母さんも学校に行かずに小さい頃にお嫁に来たと聞いていたから、しょうがないと思って働いていた。でも、友達に会いたかった。

ヴィジェラクシュミさんは当時思っていたことを、そう話しました。

ラーマラクシュミさん

ヴィジェラクシュミさん

 

プロジェクトの活動が村で浸透してきた今、近所の同年代の子どもはほとんど学校に通うようになっています。その状況の変化と、ヴィジェラクシュミさん自身の変化が状況を変えようとしています。

「SPEEDのスタッフや子ども権利保護フォーラム(住民ボランティアグループ)の人たちが、私を励ましてくれた。だから、お父さんとお母さんに学校に行きたい、と言えるようになった。お母さんがいいよと言ってくれたら学校へ行きたい。」

ヴィジェラクシュミさんを働かせていることを近所の村人にも指摘されるようになった今では、両親はヴィジェラクシュミさんを学校に通わせようとしています。しかし、以前は安い賃金で雇えていた村の児童労働者数が大幅に減ったため働き手の確保が困難になっていることや、労働者に払う1日当たりの賃金額が上がっていることからすぐにはラーマクリシュナさんを学校に通わせられないと言います。

「本当に、娘を勉強させたいという思いが今はあるんだ。もうすぐ他の村から人が働きに来る予定だから、その時は娘を学校に送る。」

本当はすぐにでも働くことをやめさせたいのですが、既に両親はヴィジェラクシュミさんに過酷な労働はさせていないので、少し見守ることにしました。

プロジェクトの活動や村の人々の働きかけは、ヴィジェラクシュミさんと両親の自発的な考えと行動に変化を起こしました。この変化は、ヴィジェラクシュミさんが再び学校に通うようになる変化や、その先のヴィジェラクシュミさんや家族の人生の変化につながっていくでしょう。

子ども支援事業インド担当 田柳優子

「Changeのストーリー」で変化の輪を広げたい

ACE来月設立20周年を迎え、これまでの活動で1,637人の子どもを過酷な労働から引き離し、1万3263人の子どもの教育環境を改善してきました。 支援してきた子どもたちの変化には私たち自身も勇気をもらい、「あきらめなければ、世界は変えられるんだ」という想いを持つことができました。

「そんな変化のストーリーを広げることは、日本の人々、特に若者が変化を起こす一歩を踏み出す背中を押すことにもなるのではないか」。そう考え、インドとガーナの子どもたちの「Changeのストーリー」を1冊の本にすることにしました。

12月18日(月)まで、そのためのクラウドファンディングも実施しています。ぜひプロジェクトページもご覧ください。

Readyfor クラウドファンディング

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  • カテゴリー:子どものエピソード
  • 投稿日:2017.11.24