児童労働のない未来へ-NPO 法人ACE代表 岩附由香のブログ(single-blog)

この人に会って話を聞いた!

2013年3月6日

星野昌子さん(日本国際ボランティアセンター 初代事務局長)

星野昌子さんが旭日小綬章の叙勲を受賞された。
星野昌子さんは、NGO界の大先輩で、日本国際ボランティアセンター(JVC)を立ち上げた初代事務局長。1932年生まれ、現在81歳とは思えないほど、しゃきっと元気で、チャーミングで本当に素敵な方で、私はG8サミットNGOフォーラムでご一緒してからとっても大好きになった。

そんな星野さんがたいそうな賞を受賞されたとのことなので、これはお祝いにぜひに!とそらまめ(7カ月の娘をここではこう呼んでます)の保育園お迎えを夫に頼んで2月27日に開催された祝う会に駆けつけた。

そこでの星野さんのスピーチがとっても素敵だったので、JVC広報の方にも許可を得て、私なりにシェアさせてもらいます!

星野昌子さんのやさしい嘘

「勲章といえば兵隊さんが胸にたくさんつけているものというイメージがあり、戦時中、近所で遊んでくれていたやさしいお兄さんたちが、みな兵にとられ、帰ってこなかったことが思い出されて、あんまり好きではなかった」

と語る星野さん。

それでも今回「功績証明書」なるものを書くことからはじまり(自分で書かなくてはならないのですね!へーっ!)ほぼ1年がかりで受賞までのプロセスを経てまで受賞したのは「NGOで自分の息子、娘が働く親御さんたちの中には、心配している人が多いだろうから、NGOでがんばって、こういう勲章を政府から認められてもらう人もいるのだ、ということを知って安心してもらえるかもしれない」という想いがあったから。

今回こうして受賞を受けてみての感想は

「勲章が、少し、好きになりました」

とのこと(そんなチャーミングな星野さんのトークに笑いがもれる会場)。

ひとりではなくみんなにもらった賞

しかし、こういった賞を受賞する時に、みなさんよく「自分ではなくみんなにもらった」といいますが、
本当にそうであるし、喜んでばかりいられない心境もある。

「そこで今日は、どうしてもこの話をしないわけにはいかないんです」

という前置きで話してくれたのが、
JVC初期のカンボジアでの活動中に命をおとした西崎さんのお話でした。

星野さんがその時の様子を、西崎さんの形見である木綿のベストと、それからカンボジアのクラフト風のショルダーバッグを持ちながら、実演してくれたのです。

星野さんの肩にかけていたカバンが引っ張られているのを感じて、「あっ」と反射的に逆方向に体と鞄を引いたと同時に、銃声がした、と。

詳細は割愛しますが、星野さんが手にしていた形見の木綿のベストが、とってもしゃきっとしていて、大事に箪笥や箱にしまわれ置かれていたのだな、というのを感じました。

それで。その話の中で星野さんがかばんを引いた実演をしたとき、チャリン、と音がして、胸につけていた勲章ががはずみでとれてしまったのです。

「あっ」と私は思いましたが、星野さんは何もなかったのようにそのまま話を続けていました。気付いたら、星野さんの手に勲章があったので、うまくキャッチされたのだと思います。

 

そんなことがあって、私が思ったのは(ここからは私の想像です)星野さんにとって、勲章は本当は意味がないのかもしれない、好きになったというのは嘘なんじゃないか、と。この人はほんとうにJVC設立当初はまずインドシナ難民の人のため、そういう弱い立場に立たされた人たちのために、働いてきたんだな、と。

活動の過程で犠牲になった人への想い、責任、悔恨、いろんなものを胸に秘めながら、戦ってきたんだよなと。また、星野さんはこうも言ってました。

今は敵が見えずらくなってきている

「昔は敵がはっきりしていました。それは、外務省と社会でした。」
(会場から漏れる笑い声、今はそんなことないですからね。外務省の方も会場にいらしてましたし)

なんと、外務省の人には外務省の廊下で「おんなこどもに何が出来る!」・・・と怒鳴られたことがあるそうです。(絶句)

自らボランティアに来てしまった娘を、まるであやしい新興宗教にはまってしまった娘を取り返そうというばかりに、非難の電話をかけてくる親もあったと以前聞いたことがありあます。

そういう先達の方たちの苦労と比べて私たちはなんてチャラチャラしてるんだろうとなんだか反省してしましまいました。

そんな昔を振り返りつつ、星野さんは「今は敵が見えずらくなってきていて、それはもしかしたら、自分の中にいるのかもしれない」と言っていました。

それを聞いた私は、そうかもしれないなぁ、と。

ついつい楽な方に逃げたくなる時、敵は自分かもしれません。

私たちにできるのは、自分の信念に嘘をつかずに、本当に必要だと思う変化を起こすために果敢にチャレンジをつつけること。NGOの活動をしていく上で、一番難しいところ(社会や外務省の理解)は先をいく先輩たちがクリアしてくれたんだから、後から続く私たちはもっと高いところを目指さなくちゃいけないなと思いました。

そんなことを想いながら、パーティーを後にし、家に帰ったら夫が娘とお風呂に入っていて、私を待ち受けていました。

「そらまめがゆでだこになっちゃうよー」と言われつつ、ほわほわの娘をキャッチし、服を着せて、オッパイをあげていると、のどが渇いたでしょ、と、ノンアルコールビールを夫が持ってきてくれました。(なかなか気がきくではないか!)

あらためて、星野昌子さんの勲章に、そして勲章はうけてなくても道を切り開いてきてくれたたくさんの先輩たちに、乾杯!

ページの先頭へ戻る