コットンのやさしい気持ち

【インド便り】「仕事があることがうれしい」貧困脱却のための収入向上の取り組み

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2015年6月末から7月初旬にかけて、ACEが支援するインドのコットン生産地域を訪問して参りました。今回は、2010年から今年6月までの約5年間の支援活動を終了した村で、「住民による収入向上の取り組み」に関するご報告をいたします。

児童労働の要因「家庭の貧困」「安い労働力の需要」に取り組む

児童労働の背景には、親の仕事や収入を助けるために子どもを働かせてしまう「家庭の貧困」という供給の側面と、雇用側が賃金コストを抑えるために子どもの労働を求める「安い労働力の需要」という需要側の要因があります。子どもたちを児童労働から守るためには、子どもの労働に頼らなくてすむよう、家庭の収入向上や雇用側の環境改善に取り組む必要があります。

村では、親の意識を変え、教育環境を改善することで、約8~9割の家庭が子どもを学校へ通わせることができるようになりました。親が教育の重要性を理解して、子どもの労働に頼らずに働くようになったのです。親たちは「前よりも働くようになった。親がきちんと働いて子どもを学校へ行かせる責任を感じるようになった」と言います。

一方、残り1~2割の家庭は、「仕事がない」、「低収入」、「ケガや病気で働けない」などの理由で、十分な収入を得られず、子どもの労働に頼らざるをえないことが分かりました。そのため、困窮家庭の収入向上や家計を安定化させるための支援を行いました。

困窮家庭が新たな収入源を得て、子どもの教育を支えられるように

子どもを学校へ通わせるのが難しい困窮家庭の多くは、土地を持たない日雇労働者です。このような困窮家庭約50世帯に対して、養鶏・養羊などの畜産ビジネスや、販売店の開業など、ビジネスを起業できるよう支援しました。鶏・ヤギ・羊などを支給したり、食料・生活雑貨・文具などの販売店を開いたり、収入を増やすための訓練を行いました。支援する条件として、親は子どもを学校に通わせ、得た収入で融資した費用を無利子で返済することを約束しました。

これらの活動により、畜産ビジネスでは、家畜を増やして市場で売り、収入を得られるようになりました。ヤギを売って、さらに利用価値の高い牛を購入する家庭も増えました。牛乳を飲んだり、販売したり、牛を農耕のために貸し出したり、牛フンを燃料や農業用の肥料づくりに役立てたりしています。

土地なし農民で日雇労働者だったデヴァンナさん(父親)とパドママさん(母親)は、支給されたヤギを増やして、これまでに10匹ほど売って5万ルピー(約10万円)の収入を得ています。最初は5匹だけだったヤギは、今では15匹も飼っています。牛も買って農耕用に貸出して収入を得られるようになりました。

ヤギや牛を飼うようになったデヴァンナさん(左)とパドママさん(右)

ヤギや牛を飼うようになったデヴァンナさん(左)とパドママさん(右)

 

パドママさんは「仕事がなくて苦労しましたが、今は収入が増えたおかげで、村を出て出稼ぎに行く必要がなくなってうれしいです。息子は村の公立学校を卒業した後、中等学校へ通っています。教育費に年間2万ルピー(約4万円)かかりますが、払えるようになりました」と言います。

 

「仕事があることがうれしい」日雇労働から販売店経営へ

販売店の開業や経営の支援をうけたデヴェナンマさん(母親)とヤヴァラジさん(父親)も、日雇労働者で、仕事がないと遠方でレンガ造りの出稼ぎに行っていました。日雇労働者の時の収入は2人で1日当り約150ルピーでしたが、販売店での収入は1日約500~1,000ルピーにも増えました。さらにビジネスを拡大しようと、貯めた資金10万ルピー(約20万円)で、新しく大きな店を建てました。店の後ろにはチャイ屋も経営し、より多くお客が来て大繁盛しているようです。村にある低カースト層の居住地にはこれまで出店がなかったため、住民にも大変喜ばれていることが分かりました。

大きな店を建てたヤヴァラジさん(左)とデヴェナンマさん(右)

大きな店を建てたヤヴァラジさん(左)とデヴェナンマさん(右)

販売店を担当するデヴェナンマさん(右)

販売店を担当するデヴェナンマさん(右)

 

2人には20歳の娘がおり、かつて児童労働をしていましたが、政府の無料宿舎に入って教育を受け、大学を卒業して、今は教員資格の受験中です。

チャイ屋を担当するヤヴァラジさん(左)

チャイ屋を担当するヤヴァラジさん(左)

大学を卒業して教員を目指す娘さん(左から2番目) と新しい店を建てる前(2014年10月)

大学を卒業して教員を目指す娘さん(左から2番目) と新しい店を建てる前(2014年10月)

 

ヤヴァラジさんは「販売店で得た収入で、娘の大学の費用を払うことができました。支援を受けて生活が大きく変わりました。仕事があることがうれしい。心から感謝しています。」と話してくれました。

 

農業の技術訓練を受けて減農薬や有機栽培へ

子どもを雇うことは法律違反だと知られていましたが、子どもが働くことで教育や健康的な発達が妨げられるなど、その理由は認識されていませんでした。児童労働の問題への理解を深めるため、農民との集会、スタッフや住民による畑の見回りなどを行いました。

農民たちとの集会の様子

農民たちとの集会の様子

 

農業に関する知識・技術も普及しておらず、農民は必要以上に肥料や農薬などを使っていたり、人を雇うお金がないため、おとなよりも賃金の安い子どもを雇おうとする農民が多いことが分かりました。そのため、コットン栽培などをする農民約80名に対して、農業の技術訓練を行いました。化学肥料や農薬を購入しなくても栽培できるよう減農薬や有機栽培などの技術を普及し、生産性を上げ、農家の収入向上を支援しました。

農業の技術訓練の様子

農業の技術訓練の様子

 

これらの活動により、農民は子どもを雇わない意識が芽生え、また子どもの労働が必要にならないよう、農業コストを抑えてより計画的に農業を行うようになりました。

貧困から抜け出すために必要なこと

村では親が収入向上に取り組んで家計を安定させ、子どもの労働力に頼らなくて済むようになり、さらに子どもの教育を支えられるようになってきました。

貧困を完全になくすことはできなくても、貧困から抜け出すための機会や資源を得ることができれば、住民たちは意欲を持って取り組み、自ら生活環境を変えていく力があることが分かりました。

報告:ACEインド・プロジェクト マネージャー 成田 由香子

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  • カテゴリー:子ども・若者支援
  • 投稿日:2015.08.27