【開催報告】6/8 サステナブルな認証基準の今 ~テキスタイル・エクスチェンジ国際会議報告~ (Textile Exchange Seminar)
2018年6月8日(金)東京・お茶の水のワテラスコモンにて、「サステナブルな認証基準の今 ~テキスタイル・エクスチェンジ国際会議報告~ (Textile Exchange Seminar) 」を開催しました。
環境に配慮した繊維の普及啓発活動を行う非営利団体であるテキスタイル・エクスチェンジ(本部:米国)で認証基準を担当するLee Tyler氏(Textile Exchange – Senior Manager of Standards Assurance)を招き、テキスタイル・エクスチェンジの取り組みやオーガニック、リサイクルなど繊維に関わる認証とその選択基準、海外の先進的な取り組みや事業についてお伝えしました。
また、2017年10月にアメリカ・ワシントンDCで開催されたテキスタイル・エクスチェンジ主催の国際会議「Textile Sustainability Conference」に参加した日本企業・法人関係者からも、パネルトークでの報告を交えながら最新の企業や業界の動向をお話しいただきました。
共催団体 テキスタイル・エクスチェンジ(Textile Exchange)について
まず初めに、今回のセミナーの共催団体であるテキスタイル・エクスチェンジ(以下TE)理事の稲垣貢哉氏より、同団体についてご紹介しました。
(以下要旨)2002年に活動を開始。コットンの他、ダウン、ウールといった動物愛護観点からの繊維やリサイクルに対する取り組み等、広く繊維業界へインパクトを創出することを念頭に活動する団体。主な活動として環境配慮繊維のデータやトレンドの情報提供/環境配慮素材の基準作成と管理/農家、工場、小売業者、ブランドなどの交流や総会・セミナーを通じた啓発活動/インド、アフリカ、中南米等の綿花栽培農家への技術・情報提供などを行う。「環境を守り、復元し、人生を向上させる世界的な繊維産業」をビジョンに描き、業界のバリューチェーンを担う人々と共に、少しでも環境や社会への悪影響が少ない取り組みに注力している。会員企業・団体は260以上、国数は約30か国に渡る。世界各国6,344の企業・団体が基準に登録している。
テキスタイル・エクスチェンジの認証基準について
続いてTyler氏より、TEの認証基準についてお話しいただきました。
TEでは活動の中でも特に、認証制度に重きをおいています。認証の提示により、高品質であることを保証することができるということ、持続可能な繊維に対する共通認識が持てるということ、また、企業にとってはブランドのリスクの軽減、持続可能性に対する的確な目標設定とその実践を通じて、自分たちの企業活動に自信を持つことができます。
TEが管理する6つの認証制度では、まず材料が持続可能な状態であるか確認されます。その後のサプライチェーンでは、各サプライヤーは年に1度の第三者認証機関による実地監査の上発行される「企業・団体認証(SC)」により認証された企業であると認められる必要があります。それに加え、複雑なサプライチェーンの各工程の間で次のサプライヤーへの発行を求められる「取引証明書(TC)」を通じても検証が行われます。製品の小売業者は最終製品と共に1つの取引証明書を受け取ることができます。
TEの認証基準には、以下の6つが挙げられます。
●Contect Claim Standard (特定の原材料の内容を検証するためのツールの提供)
●Organic Content Standard (最終製品における有機原料の含有と量を検証し、生産から最終製品まで原材料の流れを追跡する。オーガニックコットンなど食品以外に適用)
●Recycled Claim Standard (原材料がリサイクルの定義を満たしていることを保証)
●Global Recycled Standard (製品のリサイクル含有物、社会・環境での持続可能性、化学規制を検証)
●Responsible Down Standard (ダウンおよびフェザー製品のアニマルウェルフェアに関する基準の策定)
●Responsible Wool Standard (羊毛製品のアニマルウェルフェアに関する基準の確認)
6つのうちの1つ「Global Recycled Standard」については、社会、環境、化学薬品の使用有無の観点からも評価される。
コットン生産地の人権課題とPeace India Cottonの取り組み
ACEの子ども支援事業インド担当である田柳優子より、ACEがインドのコットン生産地でおこなっている子ども支援活動「ピース・インド プロジェクト」の取り組みについて、また、同地域で興和株式会社がおこなっている、児童労働がなくなった村でオーガニックコットンを栽培する「Peace India Cotton」の取り組みについて報告しました。
国際会議「Textile Sustainability Conference」参加報告
最後に、2017年10月9日~12日に開催された国際会議「Textile Sustainability Conference」に参加された皆さまにご登壇いただき、パネルディスカッション形式で会議の参加報告をおこないました。
ACE代表の岩附由香をモデレーターに、以下の皆さまにパネリストとしてご参加いただきました。
- Lee Tylerさん
- 青木 ユリシーズさん[EY Japan CCaSS (気候変動・サステナビリティサービス)コンサルタント]
- 髙尾 正樹さん[日本環境設計株式会社 代表取締役社長]
- 山本 敏明さん[西染工株式会社 代表取締役]
それぞれの業務内容のご紹介を交えながら、繊維業界に対する提言などを頂きました。
平日にもかかわらず70名を超える方々にご参加いただけましたこと、トーク後のネットワーキングタイムでも盛んな交流がなされ、よい雰囲気の中、本会を終了できたことを、感謝申し上げます。
日本国内でサステナブルコットンに関心のある企業が増え、コットン畑で児童労働がなくなるよう今後もこのような機会をつくってまいりたいと思います。
※ このセミナーは、独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成、豊島株式会社、株式会社新藤、興和株式会社、Ecocert Korea、株式会社 Control Union Japan各社からの協賛をいただき、開催されました。
- カテゴリー:報告
- 投稿日:2018.09.03