【インド便り】再び休校のなか、子どもたちの今 | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)

コットンのやさしい気持ち

【インド便り】再び休校のなか、子どもたちの今

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こんにちは。インド・プロジェクトマネージャーの森です。
いつもACEの活動へあたたかな応援とご支援をいただきありがとうございます!
ACEは、インド・テランガナ州のコットン生産がさかんな農村地域で、現地パートナー団体SPEEDとともに児童労働から子どもを守り教育を支援する「ピース・インド プロジェクト」を行っています。

前回のインド便りでは、3月中旬、約1年ぶりにブリッジスクール(プロジェクトで運営している、公立学校への就学を支援するための補習学校)を再開し、子どもたちが帰ってきたのも束の間、新型コロナウイルス感染症の再拡大の影響でロックダウンが実施され、ブリッジスクールも5月から再び休校となってしまったことをお伝えしました。

その後、6月下旬にはテランガナ州におけるロックダウンは解除されましたが、生活必需品を売る商店以外は未だ再開しておらず、学校再開の目途もたっていない状態です。農村部ではオンライン教育へのアクセスも非常に限られており、子どもたちは厳しい環境下での家庭学習を続けています。

スタッフの感染対策も子どもたちを守る大切な活動

新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続き、プロジェクト地における活動も大きな影響を受けていることはこれまでもお伝えしていますが、現地での活動を継続するスタッフの感染対策、安全対策をしっかりと行うことも、大事な活動の一つです。スタッフの感染対策を徹底することを通し、プロジェクト地における人々の感染症に対する意識の向上を促すことも、スタッフの安全を守るひとつの方法です。

子どもたちの学習支援、児童労働を防ぐ

新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、子どもたちの教育機会が失われることと同時に、親の収入減少や失業も大きな問題です。

プロジェクトでは、子どもたちに教材を配布し、プロジェクトスタッフとともに、地域住民、特に18~25歳の若者が子どものサポートを行ったり、主にブリッジスクールに通う子どもたちの家庭を対象にした家庭訪問を実施しています。それぞれの子どもたちの状況把握、学習支援を行うことで、休校期間に子どもたちが再び児童労働に従事することのないよう働きかけを続けています。子どもたちは、配布された教材を繰り返し練習したり読んだりしながら、スタッフが家庭訪問をした際に、ストーリーについて教えてくれたり、どの本が好きかを教えてくれたりするそうです。

配布したペンなど

アルファベットや現地語、文章の練習帳、年齢に応じたストーリーブック、塗り絵の本と色ペン

子どもたちに教材を配布する様子

児童労働に戻らない取り組み

3月のブリッジスクールの再開時に、75人の子どもたちが通学を再開してくれたこと、通学を心待ちにしていた子どもたちの姿を目にできたことは、大きな喜びであり成果です。また、この子どもたちへの定期的な家庭訪問を続けたことで、休校中も児童労働に戻ることなく、SPEEDのスタッフに「毎日こんなことをしているよ」と話してくれたり、家庭学習に取り組んだりと、子どもたちの生活に変化がみられることもプロジェクトの大きな成果だと感じています。

ブリッジスクールで遊ぶ子どもたち

ブリッジスクールが再開された時の子どもたちの様子

ここで、プロジェクト地の村における、このような活動が実を結んだひとつのお話をさせてください。

ある4人の子どものいる家庭では、両親が新型コロナウイルス感染症に感染してしまいました。SPEEDのスタッフが家庭訪問をした際に状況を把握したところ、両親は日雇い労働者であったために家族は非常に困窮していましたが、行政などからの支援を受けておらず、子どもたちも孤独や不安を感じていることが分かりました。

そこで、子どもたちが地域の保健局の支援を受けられるようにサポートし、病院でコロナ感染検査を受け、陰性と確認された後、すでに感染が確認されていた親と陰性の子どもたちとを家庭内で適切に隔離するのを支援しました。同時に、その家族に食料物資を支給することで日々の食料の不安をなくしました。更に、家庭訪問時には、ブリッジスクールに通う子どもの家庭学習のサポートをしたり、子どもたちの話し相手になったり、子どもたちの不安を少しでも取り除くように努めました。また、子どもたちに対して、手洗い・うがい、フィジカル・ディスタンス、マスクの着用、複数人での集まりを避けるなどの基本的なコロナ対策を指導し、更なる感染拡大を防ぐ努力もしました。SPEEDのスタッフの定期的な訪問と食料支給の支援によって、子どもたちは精神的にも安定し、その後は両親も無事に回復したことで、現在は家族全員で暮らすことができています。

もしSPEEDの訪問がなかったら、この家族はどうなっていたことでしょう。このような困難な状況下でも、村の見回りや家庭訪問を継続し、村の人たちの現状を確認しながらコミュニケーションをとること、子どもたちの精神的なサポートを継続することは、とても大切で意味のあることだと再認識した出来事でした。

一方、これらの支援は、子どもたちへの教育機会の提供、親の収入減少・失業に対する助けにはなりますが、1年以上学校に通えない状態が続いている子どもたちを労働へ向かわせない持続的な働きかけ、更なる支援が必要であることは言うまでもありません。

私たちは、SPEEDとともに、この困難な状況において、子どもたち、親たち双方への長期的で効果的な自立支援の働きかけ、持続的なアプローチを探求し、継続していきたいと思っています。

引き続きの応援をどうぞよろしくお願いいたします。

ブリッジスクールの子どもたち

インド・プロジェクトマネージャー  森 瑞貴

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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2021.08.12