コットンのやさしい気持ち

【インド便り】ブリッジスクールが再開して「ハッピー!」

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みなさん、こんにちは!インド・プロジェクトマネージャーの森です。いつもACEの活動への温かいご支援をいただき、ありがとうございます。
ACEは、インド・テランガナ州のコットン生産がさかんな農村地域で、現地パートナー団体SPEEDとともに児童労働から子どもを守り教育を支援する「ピース・インド プロジェクト」を行っています。

インドにおける新型コロナウイルスの感染拡大は収束傾向にあるものの、その影響による多くの課題が残されています。特に、もともと弱い立場にあった子どもや貧困層がさらなるリスクに晒されており、教育格差と経済格差が拡大している現状があります。ACEスタッフはインドへ渡航できない状況が続いていますが、SPEEDと連携しながら、3つの村で活動を続けています。

2021年12月13日、現地の様子を知るために、日本のACEスタッフとインドのプロジェクト対象地をつないだオンラインインタビューを行いました。長期間続いた休校のために1年以上学校に通うことのできなかった子どもたち。パンデミック期や学校が再開した後の様子や、家族、地域の人たちの生の声に触れることができました!今回のインド便りは、ブリッジスクールに通う子どもや家族に対して行ったオンラインインタビューの様子を中心に、職業訓練センターの近況についてもお届けします。

【インタビュー】約1年半ぶりのブリッジスクールを喜ぶ子どもたち

ブリッジスクール(プロジェクトで運営している、公立学校への就学を支援するための補習学校)に通う5人の子どもたちへのインタビューでは、子どもたちは1年以上ぶりのブリッジスクールの再開がとにかく嬉しいようで、「ハッピー」と繰り返しながらたくさんの笑顔を向けてくれました。どの教科が一番好きかという質問には、「英語」、現地語である「テルグ語」、「算数」、「カバディ」(スポーツ)、「サッカー」、「チェス」と、次々に答えていました。

インタビューに答える子どもたち

インタビューに答える子どもたち

「長い時間 友達と話せるからとても楽しい」アニクさん

アニクさん(仮名/11歳)は、6歳から学校に通うことができずにコットン畑で働いていましたが、現地スタッフの働きかけでブリッジスクールに通うようになりました。

「働いていた時は、水を飲むために休憩すると怒られ、とても悲しかった。水を飲む回数を減らして仕事をしていた。」
「ブリッジスクールに通えるようになり、勉強できることが嬉しい。コロナ禍ではずっとひとりで勉強をしていたけど、ブリッジスクールにまた通えるようになって勉強がはかどっている気がする。今は勉強への不安よりもブリッジスクールが再開したことが嬉しい。それに、長い時間友達と話せるからとても楽しい。将来は警察官になりたいから勉強を頑張る。」と元気に話してくれました。

アニクさん

アニクさん

インタビューの終わりに何度も「ありがとう」と繰り返す子どもたちの笑顔と無邪気な様子から、ブリッジスクールが始まり、勉強ができて友達と会えることへの喜びが画面越しにも伝わり、子どもたちの精神面にも大きな影響を与えていることを改めて実感しました。
休校による勉強の遅れや子どもたちが長期間ひとりで過ごしたことに対する寄り添いなど、今後の課題は多くあるものの、ブリッジスクールに戻ってきた子どもたちの生き生きとした様子に勇気づけられたインタビューでした。

「これまでになかった幸せそうな様子を見せるようになった」ルドラさん

また、プロジェクトによって牛の貸与を受けた家族からも話を聞くことができました。この家畜の貸与は、特に困窮している世帯に対して行っている収入向上支援であり、子どもを学校に通わせることと、家畜を通じて得た収入で、融資した費用(家畜代)を無利子で返済することとが条件です。

両親、祖父、二人の妹(4歳、2歳)と暮らすルドラさん(仮名/11歳)は、9月からブリッジスクールに通っています。両親は日雇い農家で収入が不安定であったため、ルドラさんは生活のために必要な働き手として、コットン畑で働いていました。両親は、当初はルドラさんのブリッジスクールへの通学について消極的でしたが、SPEEDが収入向上支援の仕組みと教育を受けることの重要性をしっかりと説明し、家畜の世話によって収入が改善されることを理解すると、承諾しました。

父親のイシャンさん(仮名)は、ブリッジスクールに通い始めたルドラさんの様子について、「子どもの顔が目に見えて変わり、ほかの子どもたちと遊んだり、屋根の上で勉強をしたり、これまでになかった幸せそうな様子を見せるようになった」と目を細め、「もっと教育を受けてほしいから可能な限り学校に通わせ続けたい」と話してくれました。また、ルドラさんは感染予防など保健衛生の習慣もしっかりと守るそうで、「ブリッジスクールに通うようになって成長を感じる」と笑顔で話してくれました。

ブリッジスクールの様子と就学支援

前回のインド便りでは62人の子どもたちがブリッジスクールに通学している様子をお伝えしましたが、現在は定員いっぱいの75人の子どもたちが通学しています。通常であれば、公立学校への就学試験が年に2回(6月・12月)実施されますが、パンデミックの影響で、今年12月の実施は見送りとなりました。プロジェクトでは、次回予定されている6月の試験で多くの子どもたちの公立学校への就学が叶うよう、支援を継続していきます。

ブリッジスクールに通う子どもたちとプロジェクトスタッフ

ブリッジスクールに通う子どもたちとプロジェクトスタッフ

紙皿作製の職業訓練センターの運営を開始しました!

前回のインド便りでSPEEDが急ピッチで準備を進めているとお伝えした紙皿作製の職業訓練センターがついに開校しました!
10月下旬から機材整備などの準備をしていましたが、施設運営に必要な電気が届かないなどトラブルがあり、電気会社と交渉するなどし、やっと12月から運営を開始することができました。2021年中に開校できたことはとても嬉しいニュースです。

現在、3つの村から10人の女の子がこの職業訓練センターに通い、基礎教育と紙皿作製の職業訓練を受けています。この訓練の研修期間は3か月間です。これまで教育を受けられなかった女の子が、3か月後には自立して生活する術を身につけ、安全な環境下で働き続けられるよう、日々訓練を受けています。

紙皿作製の講師研修の様子

紙皿作製の講師研修の様子

紙皿作製の機械

紙皿作製の機械

紙皿を試作している様子

紙皿を試作している様子

縫製の職業訓練センターも順調に研修を継続

2021年8月に再開した縫製技術の職業訓練センターに通う20人の女の子たちは、2022年2月の研修終了後に仕立屋として生計を立てられるよう、現在も一生懸命に学んでいます。2022年3月からは第2期生の女の子たち20人の研修が始まる予定です。

職業の異なる2つの職業訓練センターを運営することによって、技術の多様性が生まれ、女の子たちがお互いに助け合うようになり、女の子の安全な労働環境の確保にも繋がっています。自分の意見を伝える機会が増え、新しい技術を学ぶことによって女の子たちはどんどん自信をつけ、明らかな変化が生まれています。

困難な状況下でも、子どもたちの笑顔とともに

私たちACEは、学校の閉鎖によって学習進度が遅れてしまった子どもたちへの効果的な教育支援のあり方を日々模索しています。

今回実施したオンラインインタビューも、コロナ禍にACEスタッフの渡航による現地モニタリングができないため、現地の様子を把握するために実施したものです。1年以上におよぶ休校で、友達に会うこともなくひとりで勉強を継続することを強いられた子どもたち。画面越しではありますが、教育危機にある子どもたちの弾けるような笑顔に癒され、心強い気持ちになりました。この笑顔が、不安や心配で失われることのないよう、子どもたちがこれからも安心して学び育つことができるよう、教育環境の整備とともに、子どもの未来とそれを支えたいと願う家族、地域をサポートしていきたいと改めて思いました。

今後も困難な状況下での模索は続いていくと思いますが、一歩一歩着実に進んでいきたいと思います。
引き続きの応援をどうぞよろしくお願いいたします。

インド・プロジェクトマネージャー  森 瑞貴

インドの子どもたちを笑顔にするために
応援よろしくお願いします!

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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2021.12.16