コットン生産地域の教育環境の課題
ピース・インド プロジェクトでは、村のすべての子どもが公立の学校に継続的に通い、質の良い教育を受けられるようになることを目指しています。子どもが教育を受けることは、子ども自身がもともと持っている権利であり、子どもの教育の権利を保障するのは、その国の政府の責任です。NGOが政府の代わりに学校運営をする方法もありますが、国や行政機関がその責任を果たすべきと考え、子どもたちの教育がしっかりと実現されるよう取り組んでいます。
日本では義務教育があること、学校の学習環境が整っていることはあたりまえですが、インドの特に農村地域では必ずしもあたりまえのことではありません。
ACEが支援活動を行っている村の公立学校では、先生や教室が足りず、基本的な環境が整っていません。学校がきちんと勉強できる場所になっていないことが、未就学や中途退学、そして子どもを働かせてしまう大きな理由の一つとなっています。
村の学校と子どもの就学状況
村の学校環境は、決して十分に整っているとはいえません。
- 村には公立の小学校(1-7年生)が1つのみ。教室は、学校敷地内に4つ。離れた敷地に教室を2つ増築したが使われていない。机、椅子もない。トイレは壊れていて使えない。
- 村の小学校に入学した子どもの数は約260人(2010年4月1日視察時)で、就学年齢の子どもの約4割。他の村の学校に通っている子どもは約70人。
- 生徒の出席率が悪く、特に3年生からの中途退学が多い。
- 7学年に対して、教員資格のある先生は2人、地元から雇用された先生が4人。先生が足りないため、1つの教室で2つの学年を教えている。
このような状況を改善するため、ピース・インド プロジェクトでは、学校の先生、PTA、行政関係者、住民などと連携しながら、学校の改善や子どもの就学の徹底に取り組んでいます。
具体的には、村長や住民たちが定期的に話し合って学校改善案をまとめた上で、村の学校教育委員会から地区の教育局へ改善策を提案し、必要な申請手続きを行います。このような行政のしくみを活用して子どもが学校に通いやすくなるための環境改善を行うことで、プロジェクトが終わった後も、住民が子どもたちのために行政と連携して取り組むことができるような土台を作っているのです。
また住民グループや子どものグループを作って、子どもの就学のモニタリングを行ったり、学校に通っていない子どもの家庭を訪問して、子どもを学校に通わせるよう親を説得したりしています。
インドで「無償義務教育法」が2010年4月から施行
インドでは、6~14歳までの子どものための無償義務教育法が2010年4月1日から施行されました。これにより各州の政府は、すべての子どもの教育が実現できなければ、法的責任が問われることになります。また法律で定められた、学校の施設や教育の質を一定レベルに保たなければなりません。
村の学校の校長先生は「この法律を活用して、学校をもっと改善したい」と言っていました。法律が施行された4月1日には、小学校に通う子どもたち全員が村の中を行進し、村の住民たちに、児童労働をなくしすべての子どもが学校でよい教育が受けられるように呼びかけました。
ピース・インド プロジェクト開始時の調査では、154人の子どもたちが学校に通っていないことが分かりました。すべての子どもたちが学校に通い、質の良い教育が受けられるよう、ぜひ応援よろしくお願いいたします。
報告:国際協力事業担当 成田 由香子
世界の子どもの笑顔のため、世界を変える小さな一歩を。
- カテゴリー:子ども・若者支援
- 投稿日:2010.06.10