【インド便り】住民自身による持続可能な村づくりへ | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)

コットンのやさしい気持ち

【インド便り】住民自身による持続可能な村づくりへ

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ACE インド・プロジェクトマネージャーの成田です。2014年10月15日からインドに来ています。

インドへ出発する前、ACEと、児童労働の撤廃に取り組む世界中の人々に勇気を与える大きな出来事がありました。ACEの設立とこれまでの活動に深く関わりがある「児童労働に反対するグローバルマーチ」のカイラシュ・サティヤルティさんが、ノーベル平和賞の受賞が発表されたのです。「児童労働が最も多い国」と言われるインドで、インド人初のノーベル平和賞受賞者となりました。カイラシュさんのノーベル平和賞の受賞は、インド国内でもニュースで取り上げられ、児童労働問題の特集が新聞各紙に掲載されたようです。

また、女の子の教育推進のために活動しているパキスタンのマララ・ユスフザイさんも同時受賞したことで、多くの人が、子どもの搾取をなくし教育の権利を保障することが持続可能な社会をつくるうえで大切だと認識できる機会にもなればと思います。

ACEが支援するコットン生産地の村で住民たちに変化が

ACEが、コットン生産地で児童労働をなくし子どもが教育を受けられるよう支援する「ピース・インド プロジェクト」を実施しているインド南部のテランガナ州にも、労働を強いられ教育の権利を奪われている子どもたちがたくさんいます。今回、支援地を訪問し、子どもや住民との話し合いを通して、これまでの成果や今後の課題などを現地スタッフと一緒に確認してきました。

2014年3月に活動期間を終了した村では、今後も児童労働のない村として維持できるよう住民自身の活動をサポートするフォローアップを行っています。

住民ボランティアによって組織されたグループ「子ども権利保護フォーラム」(以下、フォーラム)では、児童労働がないか見回り、学校を訪問して子どもの就学状況や欠席しがちな子どもを確認し、子どもが毎日学校へ通えるよう親と話し合う等の活動を今も継続していることが分かりました。

さらに今後フォーラムは、子どもの就学徹底だけではなく、貧困家庭への行政制度の活用支援、村の清掃活動や保健医療の推進など、村のあらゆる福祉活動を推進できるよう「正式な住民組織として登録したい」と考えていることも分かりました。

住民ボランティアによって組織されたグループを、正式な住民団体として登録することを提案するメンバーたち

フォーラムの代表ゴパルさんは「登録をして公的な承認を得られれば、住民にも認知され、活動がしやすくなる」と言います。

組織の登録は、彼ら自身が考えたことです。これを聞いて現地スタッフはもちろん、私も驚くとともに、非常にうれしく思いました。プロジェクトを通じて立ち上がった組織が地域の公的な組織になることは、取り組みがより持続的になるからです。これから現地スタッフが登録手続きをサポートする予定です。

 

新たに支援を始めた村では課題も

一方、2014年4月から活動を開始した2つの村では、事前調査でコットン畑などで働き義務教育を受けられない子どもが約270人いることが分かっており、コットン栽培が盛んな6月頃から多くの子どもが働き手として駆り出され、学校へ通えていません。

2つの村では、教育の意識を高めるための啓発活動を重点的に行い、村のリーダーや住民、学校教員、行政担当者と集会を行って、互いに協力できるよう実施体制を整えています。住民による「子ども権利保護フォーラム」も作られました。しかし、まだ教育への意識は住民全体には広まっておらず、子どもを働かせる親への説得がうまくできない、住民が集会になかなか集まらないなど、不安や困難を抱えているようです。

そのため、先述の2014年3月にACEが活動期間を終了した村から住民を呼んで、活動経験や村の変化、抱えた困難や改善策について話してもらっています。2つの村の住民たちは、ACEの活動期間を終了した村の変化に驚き、活動に関する質問をしていたそうです。

今後もこのように住民同士が交流して、経験やノウハウを共有し励まし合えるようにしていきます。

 

新たに101人の子どもが教育を受けられるように

さらに、働いていた子どもが労働をやめて基礎教育を受けられるよう、正規の学校への編入を橋渡しするためのブリッジスクールを2つの村に設置しました。貧困家庭の子ども通いやすいよう、教科書や文具、制服、給食を無料で提供し、学習意欲を育てたり、生活習慣を身につけられるようにします。

2つの村では合わせて、101人の子どもたちが、働いていた時にはできなかった勉強や遊びの機会を受けられるようになりました。

学校で勉強できるようになった子どもたち

今後は、再び労働に戻らないよう親の収入向上支援や、村の公立学校への就学支援、就学後もきちんと学習できるよう学校の環境改善などにも取り組んでいきます。

 

「今日は日曜日でお休みだけど、学校へ行きたい!」シャンティちゃん

8歳の女の子、シャンティちゃん(仮名)は、学校に一度も通ったことがなく、親と一緒に畑仕事の手伝いをしていました。7歳の弟は、他の村に住む祖母に預けられて学校に通っています。

シャンティちゃんは、コットン畑で草むしりやコットンの受粉作業などをしていた頃をこう振り返ります。

1日中働いていたから、遊ぶ時間もなかったし、友達もいなかった。
強い日差しの下で長い時間働くのが一番つらかった。

現在は、現地スタッフが親を説得し、ブリッジスクールへ通うようになりました。

シャンティちゃん(右)とお母さん(左)

「勉強したり、縄跳びをしたり、歌やダンスが好き。友達もできた。今日は日曜日でお休みだけど、ブリッジスクールに行きたい気持ちなの。」と話してくれました。

シャンティちゃんのお母さんは「家計が苦しいので、今までは教育は息子だけでよいと考えていました。でもブリッジスクールに通うようになってから、娘は変わりました。身だしなみを清潔にして規則正しく生活したり、家で勉強したり、性格も明るくなって、私もうれしいです。娘がこれからも良い教育を受けられるようにしていきたいです。」と話してくれました。

今後は、シャンティちゃんが公立学校へ編入できるよう支援していく予定です。

子どもたちの笑顔を守るため、ご支援のお願いします!

今回インタビューしたシャンティちゃんをはじめ、多くの子どもたちが児童労働から抜け出し、教育を受けて健康的に成長できるようになるためには、みなさんのご協力とご支援が必要です。2014年4月から新たに2つの村で支援を開始しましたが、まだ必要な資金が十分集まっていません。子どもたちの支援活動を継続的に行えるよう、ぜひご支援をお願いいたします。

報告:ACE インド・プロジェクトマネージャー 成田 由香子

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  • カテゴリー:子ども・若者支援
  • 投稿日:2014.11.01