【インド便り】住民グループ「子ども権利保護フォーラム」の活動
ACEと現地パートナーNGOのSPEEDは、活動を行う2つの村のすべての義務教育年齢の子どもが労働から抜け出し、就学することを目指して「ピース・インド プロジェクト」を行っています。
村では住民グループ「子ども権利保護フォーラム」を結成してスタッフと住民が活動を共有し、プロジェクト終了後も児童労働のない村を続けていけるよう住民の意識や活動の自立を促しています。 先日、その子ども権利保護フォーラムのメンバーが行った、子どもを働かせている親と話し合いをするための家庭訪問に同行しました。
ヴィサールティマヤさん (写真右から2人目) の2人の娘、ナルシャンマさん (同左:仮名/12歳) とジェイラクシュミさん (同中央:仮名/11歳) は学校に行ったことがなく、現在コットン畑で働いています。お父さんのヴィサールティマヤさんは8歳の息子を村の公立の学校に通わせていますが娘が学校に行くことには同意せず、この日は5回目の家庭訪問でした。
お父さんは、コットン畑での作業に人手が必要なこと、借金を抱えていて少しでも多くの収入が必要なこと、村の学校の教員への不満などを挙げて娘たちを就学させない理由を説明します。ですが、その一方で息子にはもっと良い学校に行ってほしいという要望を持っています。
子ども権利保護フォーラムのメンバーは、女の子にも本人と家族の未来のために教育が大切であること、コットン畑で子どもが働くことによって健康を害する危険性を語りかけ、学校の状況を改善するために一緒に学校に働きかけを行おうと呼びかけます。
同時に、子どもたち本人にも学校に通うことでできるようになることを伝えます。最初の頃はお父さんの目を気にして「仕事をするのが好き」と話していたというナルシャンマさんも、この日は「お父さんが同意してくれたら、学校へ行きたい」と自分の意志を口にしました。
そしてこの日、お父さんは「コットンの農繁期が過ぎる12月になったら娘たちを学校に行かせてもいい」と初めて娘たちを学校に通わせることに同意しました。
コットンの種子栽培では、ちょうど8月の今頃の時季から農繁期になります。コットンの収穫は10~11月頃が中心となりますが、どうしてそれより前の時季も多くの人手を必要とするのでしょうか。
インドで広く栽培されている遺伝子組み換えのコットンは、手作業で受粉させて交配させる必要があります。おしべとめしべの畑が分かれていて、畑からひとつひとつ摘み取ったおしべを、ひとつひとつのめしべに触れさせて人工的に受粉させる必要があるのです。この作業に多くの人手を必要とし、また小さな手を持ち細かい作業が得意な子どもを雇いたがる雇用主が多くいます。
交配作業は、収穫作業以上に手間がかかる作業です。まず、めしべの畑で花が咲く前のつぼみを取ってめしべを露わにし、しるしとなる赤い紙を取り付けます。
次の日の午前中におしべの畑から花を摘み、おしべの花粉を赤いしるしの付いためしべに触れさせます。
触れさせたら赤い紙を取り除き、綿花が実るのを待ちます。
生育状況は同じ苗でも花によって異なるため、毎日同じ場所で作業をし、受粉に適したタイミングを見逃さないようにしなくてはなりません。
上記のような作業以外にも、農薬や殺虫剤をまいたり多くの作業が必要となります。農薬がまかれた日は、強い臭いが畑に漂います。その農薬が原因で体調を崩したり、病気になる人が多くいます。
確かにコットン種子栽培は交配に適したタイミングを見逃せない、とても大変な作業です。ですが子どもも、子どもである時期に学校に行く機会を逃してしまうとその後教育を受けることが困難になってしまいます。
ヴィサールティマヤさんは農繁期が終わったら、と話しましたが、少しでも早いタイミングで子どもたちが学校へ通えるよう、また、来年の農繁期の時季も継続して子どもたちを学校へ通わせるよう引き続き働きかけを行います。
インドでの活動は、みなさんからの「コットン募金」に支えられています。コットン生産地の子どもたちが児童労働から抜け出し、教育を受けられるよう、「コットン募金」へのご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
子ども支援事業「ピース・インド プロジェクト」担当
田柳優子
インドの子どもたちを笑顔にするために
応援よろしくお願いします!
- カテゴリー:子ども・若者支援
- 投稿日:2017.08.18