【インド便り】教育を受けられなかった女の子たちに学びの機会を
インドでは、6歳から14歳が義務教育年齢となっていますが、就学年齢になっても小学校に入学しない、または入学しても途中退学のために義務教育を修了せずに歳を過ぎてしまう子どもたちがいます。初等教育 (1~5年生) 修了率は88%となっていますが、学校に登録している子どもの数と実際に通っている子どもの数に差がある場合などもあります。(1)
学校に行けない、行かなくなってしまう理由としては、働くため (児童労働)、家事をするため、妹や弟の世話、親の出かせぎ労働に同伴するため、教育は必要がないという親の考え、結婚 (児童婚) のため、学校の先生が暴力をふるうため、そもそも先生が学校に来ないためなど多くの理由が挙げられます。
ACEと現地NGOのSPEEDが活動するテランガナ州のコットン生産がさかんな地域では特に女子が学校に通っていないケースが多く、学校に行く機会を得られないまま義務教育年齢を過ぎてしまう女の子たちがいます。
そんな学校に行ったことがない、または学校を中途退学せざるをえなかった女の子向けに、ピース・インド・プロジェクトでは「職業訓練センター」を運営しています。センターでは、女の子たちが将来安全な環境で衣服を作り、収入を得て自立できる仕立て屋になるための職業訓練を行っています。
「女の子には教育は必要がない」そんな風に考えるおとなが村には多くいました。娘を学校に通わせることには同意をしない親でも、将来の収入を得る手段となる職業訓練であれば娘を通わせることを許可します。
職業訓練センターに通うようになった女の子の1日は、朝早く起きて家の掃除や朝食の準備、その日使う水の確保をすることから始まります。
9時がセンターの開始時間ですが、朝やらなくてはいけない家事がたくさんあるにも関わらず、毎日全員が遅刻をせずに来ます。それくらい、「毎日来るのが楽しみ!」と訓練生たちは話します。
センターでは、もちろん裁縫や刺繍などの技術を学びますが、仕立て屋になるためにはお客さんの身体のサイズを測るため算数ができなくてはいけなかったり、メモをとるのに読み書きができなくてはいけません。そのため、センターでは午前中の時間を算数や公用語であるテルグ語を学ぶ時間することによって、学校に行けなかったため勉強できなかった読み書き・計算を身につけられるようにしています。
多くの訓練生は、お昼ご飯は一度家に帰って食べます。お昼ご飯はほとんどの場合、朝ごはんと同じものを食べるそうです。
午後は、グループに分かれ、ミシン、刺繍、ペイントなどの練習を交代で行います。
最初はハサミの使い方もわからない彼女たちですが、上達はとても早く、自分たちでつくった衣服を着るようになります。
訓練終了時にはひとり1台ミシンを受け取り、そのミシンを使ってお客さんへサリーの下に着るシャツなど女性向けの衣服を作り一人前の仕立て屋になります。自分で収入を得られるようになったら、受け取ったミシン代はプロジェクトに返してもらうルールにしているため、それが彼女たちの最初の目標となります。
こうして手に入れた仕立て屋としての技術とミシンは、将来結婚した後も活かすことができます。多くの女の子は他の村の家に嫁いでいきますが、そこでも家計や自分の子どもの教育を支えることができるようになることを目指しています。
現在支援を行う2つの村のうちの1つの村では職業訓練センターが十分に役目を終え、運営を終了しました。今後も彼女たちがコットン畑での作業など危険な労働をすることなく、安全な環境で自立していけるよう村の住民と共にサポートしていきます。
子ども支援事業インド担当 田柳優子
(1)UNESCO (2017) Global Education Monitoring Report 2017/18 Accountability in Education: Meeting our Commitments.
インドの子どもたちを笑顔にするために
応援よろしくお願いします!
- カテゴリー:子ども・若者支援
- 投稿日:2018.04.06