第2回「ビジネスと児童労働」連続セミナー 開催報告

第2回「ビジネスと児童労働」連続セミナー 開催報告

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サプライチェーンのリスクをチャンスに変える

2014年3月17日(月)、ちよだプラットフォームスクウェアにて、第2回「ビジネスと児童労働」連続セミナー(ACE主催、株式会社オルタナ協力)を開催しました。第2回目のテーマは「サプライチェーンのリスクをチャンスに変える ~チョコレート業界における児童労働への取り組み~」です。今回は、森永製菓とACEの協働事例の紹介に加え、カカオ産業フェアトレードの専門家を招き、サプライチェーンの課題にどのように取り組んでいるのかをお話いただきました。

第2回「ビジネスと児童労働」連続セミナー 開催概要

第1回「ビジネスと児童労働」連続セミナー 開催報告

2014年3月17日、第2回「ビジネスと児童労働」連続セミナー開催風景第2回「ビジネスと児童労働」連続セミナーのテーマは「サプライチェーンのリスクをチャンスに変える」

 

立花商店 生田さん:カカオを買い付け輸入する商社の本当の仕事

株式会社立花商店 取締役・東京支店長 生田渉さんは、日本に住むガーナ人と知り合ったことをきっかけにガーナ産カカオ原料を日本に輸入し始めました。その後、アフリカとカカオの世界を極めたいと、カカオを専門に扱う株式会社立花商店に転じ、ガーナ以外のアフリカのカカオ生産国の現状を調査し始めましたた。日本貿易振興機構(JETRO)の開発支援を受け、最貧国と呼ばれる国のひとつ、シエラレオネで新しいカカオの産地開拓に着手しました。現在は、農家への支払いを増やすためフェアトレード認証を推進し、カカオ豆の販売を通じた支援を行っています。現在は、ガーナ、ウガンダ、シエラレオネ、カメルーン、ナイジェリア、コンゴなどのアフリカ各国のカカオ豆をヨーロッパ市場やアジア市場に販売しながら、日本市場でBean To Bar(*)カカオ豆から板チョコを作り出す!)に使える世界各国のカカオ豆の少量販売にも取り組まれています。

(*)Bean To Barとは
カカオ豆(Bean)の焙煎からチョコレート(Bar)まで全ての工程を一貫して作り上げること。

株式会社立花商店 取締役・東京支店長の生田渉さん生田さんは、これまで出会ってきたカカオ生産者の特徴を紹介してくれました。例えば、「現金、前払いを好む」ことや「高い利益よりも早い支払いを好む」といった好み。「発酵工程への意識が低い」、「カカオの品質がチョコレートへ与える影響を知らない」など意識や知識の違い。「カカオの収入だけで十分な収入を得ている生産者が少ない」ことや「長期的な貯蓄や投資という考えは個人として持っていない」ことなど、生産者の特徴は多岐に渡ります。カカオ生産者の特徴をとても鮮明に伝えてくださるご様子から、生田さんが現場を見て、現場を知り、自らが生産者の方々に寄り添って活動に取り組んでいらっしゃることが感じられました。

また、生田さんは「生産者には価格決定権がほとんどないこと」と「現金を早く生産者に渡せる人がカカオ豆を安く買いつける仕組みができてしまっていること」の2つを課題だと言います。対策としては、生産者と顧客が直接つながり、独自の価格決定基準を設けること、バリューチェーン全体を1つの組織で行うこと、仲介業者に資金を外部から提供することを具体例として挙げました。シエラレオネの生産者が来日したときの写真も見せてくれ「作っている人との強いつながりが大事」、「農家の収入とカカオ単価をあげられるように努めていきたい」と語る生田さんの信念が伝わってきました。

 

フェアトレード・ラベル・ジャパン中島さん:フェアトレード意識

特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン(FLJ)事務局長 中島佳織さんには、国内外の市場動向と消費者意識からの事業戦略におけるフェアトレードについてお話いただきました。中島さんは、途上国の貧困問題と向き合う中、寄付や援助ではなく、貧困を生みだす歪んだ貿易構造から変えていくフェアトレードに賛同し、取り組んでいらっしゃいます。

フェアトレード・ラベル・ジャパン 事務局長 中島佳織さん「日本の市場規模は世界から見て1%ほど」、「2002年以降から関心が高まり、2009年後半から外食産業のコーヒー製品の販売が大幅に増加した」など、日本国内のフェアトレード認証製品の状況を紹介くださいました。日本の消費者も「4人に1人以上がフェアトレードを知り、中でも東京での認知率は45.6%と突出している」など、日本人のフェアトレードの関わりについて、興味深くお話を伺うことができました。また、教育現場でフェアトレードへの関心が高まっていること、若年層の支持が拡大していること、「消費者教育」でも、消費者の「権利」から「責任」に対する関心が高まっており、その中でフェアトレードが大きな柱となってきているそうです。

また、持続可能性に向けたフェアトレードへの取り組みの重要性と、世界的にフェアトレードの取引を増やし、生産者へのインパクトを拡大・増大させていくことが求められているそうです。「フェアトレードに取り組まないこと自体がリスクになってきている。生産側が安定することこそが、自分の企業の安定につながると考えるようになってきた。」

ロンドンオリンピック・パラリンピックのすべての開催地域でフェアトレード認証のコーヒーや紅茶、チョコレート、砂糖、バナナ、ワイン、オレンジなどが提供されていた写真や、日本の小売店やカフェ、レストラン、商社、メーカーのロゴを見せながらお話しくださり、フェアトレード認証について身近に感じることができました。

 

千葉商科大学 大平先生:寄付つき商品に対する消費者の反応

続いて、マーケティング、特にソーシャル・マーケティングがご専門である千葉商科大学商経学部准教授の大平修司先生に寄付つき商品に対する消費者の反応についてお話しいただきました。

千葉商科大学 大平先生大平先生は、日本で消費を通じた社会的課題の解決行動が広がり始めたこと受け、寄付つき商品の寄付に関するメッセージの有無と、その内容が消費者の購買意思決定に与える影響を分析されたました。インターネット調査の結果、日本の消費者は商品に記載された寄付のメッセージに積極的な反応を示す一方、一部の消費者が持っている懐疑主義による影響も大きいことが分かったそうです。日本ではまだNPO/NGOへの信頼も低く、大企業への信頼が大きく、どこの企業が寄付つき商品を出すかでも影響があること、寄付付き商品の経験がない人たちにどう商品を売っていくかがこれからの課題だとお話されました。

 

森永製菓×ACE:「1チョコfor1スマイル」企業とNGOの協働

3人のご登壇に続き、青山学院大学経営学部教授 芳賀康浩先生をモデレーターにお迎えし、森永製菓菓子事業本部 八木格さんとACE事務局長 白木朋子による対談で、森永製菓「1チョコ for 1スマイル」とACEの取り組みから、企業とNGOのパートナーシップについて考えました。

森永製菓菓子事業本部 八木格さんとACE事務局長 白木朋子による対談

八木さんは児童労働の問題に目をつむるのではなく、自分たちにできることをやっていこうという想いから取り組み始め「世界中の子どもたちの笑顔に貢献したい」という会社のミッションに繋がっていけばいいと語ります。点の活動が線になり、他の業界に広がって、笑顔を広げていきたいというお話がとても印象に残りました。

芳賀先生は八木さんと白木との対談を聞いて「このような活動を1つの企業で進めるのは難しさがあります。企業とNGOが提携して、消費者意識を高めることに意味があり、これからもパートナーシップを続けていって欲しいと思います。」とディスカッションをまとめてくださいました。

パネルディスカッション:参加者・登壇者の質問に「一問一答」

参加者や別の登壇者からの質問に対し、各登壇者が答えるパネルディスカッションを行いました。

パネルディスカッション

質問に答えるフェアトレード・ラベル・ジャパンの中島さん中島さんは大平先生の講演を聞き、「懐疑主義」はフェアトレードが直面する大きな問題であることを実感され、フェアトレードの可視化に取り組むことで、懐疑主義に対応していきたいと答えました。

大平先生によると、日本の消費者特有の傾向として、「偽善者」と呼ばれるのを嫌い、フェアトレード商品を買っていることを言いたがらないそうです。

青山学院大学経営学部教授 芳賀康浩先生NPO/NGOや企業の取り組みについて芳賀先生は、フォルクスワーゲンのファンセオリーを例に挙げ、フェアトレードの価値の見せ方や伝え方のマーケティングコミュニケーションを提案しました。「社会的課題に協力するために努力してくれ、では無理。人は楽しいことなら自分からする。」

 

森永製菓菓子事業本部 八木格さん「森永製菓が児童労働に取り組んだ理由は?」という質問に対し八木さんは「会社の理念として、誰かが泣いているものはおいしくない、みんながおいしいと思えるような、本当のおいしさはなんだろう。生産者もお客さんも喜んでくれる、という単純な理由です。やれることからやっている。やらないよりもやる偽善の方がいいのではないでしょうか。」と答えてくださいました。「ACEと組むことに不安はなかったのか」という質問に対しては「やらない選択肢もある中で、やれることからやろうというタイミングと相性があった」と回答しました。

白木は、企業の児童労働の取り組みについて「社会的にはまだ認知されることに時間がかかると思うが、やれなければいけないと感じている人たちの存在がACEの励みになっています。森永製菓とACEとのパートナーシップは、企業が社会課題の解決に取り組むことができたという証明になるのではないでしょうか。」と話しました。また、NPO/NGOや企業が「フェアトレードは特別な人たちがやることではなく、自分たちができること」という意識を与えていくことで、社会を変えていけるという考えを改めて強調しました。

 

企業・生活者・社会がWin-Win-Winになるには

グループディスカッションでは「森永製菓とACEのように企業・生活者・社会がWin-Win-Winに取り組みを広げるにはどんな障害があるか、それを乗り越えるにはどうしたらいいか」について、参加者のグループの中に登壇者も参加して意見交換しました。

グループディスカッション:企業・生活者・社会がWin-Win-Winになるにはどのグループでも様々な意見が出ていました

「Win-Win-Winの取り組みを広げるための障害」
  • 日本には需要がない。文化がない。意識が十分ではない。
  • 社内を説得するのが難しい。
  • フェアトレードが正しく認識されていない。
  • そもそも日本人が海外の問題にうとい。問題認識ができていない。
  • 意識がある人も、行動に移せていない。
  • 消費者の視点で見ると、価格が高い、おしゃれでない。
  • 企業が消費者を動かせるほどの商品をまだ出せていない。プロモーションできてない。
  • 日本「いいことをしていない=ダメ」と否定してしまっている。
  • やっていない人が多数で、やってないことを正当化する傾向がある。
  • 付加価値のコミュニケーション方法が欧米とは違う。
  • 中小企業には余裕がない。
  • 売っている場所がない。→メーカーが興味を示しているので小売店の興味を高めることが大事。
「障害を乗り越えるにはどうしたらよいか」
  • 消費者の意識を変えるために、企業がどうマーケティングしていくか。
  • 説得するしかない。(企業の姿勢として何に貢献するのかを具体化させる)
  • 企業がうまく発信できれば、意識が変わっていくのでは。
  • ボトムアップ(消費者が育つのを待つ)とトップダウン(企業からのアプローチ)
  • 企業、生産者、NGO、消費者がつながっていることが大事。チェーン作り。
  • マスコミに取り上げられる。
  • ポジティブ、インセンティブな取り組み方が必要。
  • ロールモデルを提示していく。

 

Win-Win-Winの社会づくりに必要なこととは

各分野の専門家が、互いの分野を知り、互いの協力を考えることで、たくさんの「Win」が生まれることを感じました。みなさんもこのような場に参加し、自分とは他分野を知り、協力できることを見つけだしていただきたいと思います。

報告:ACEインターン 河尾あい、宇留賀いくみ

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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2014.03.31