ノーベル平和賞、カイラシュ・サティヤルティさんにサンキュー | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)

児童労働のない未来へ-NPO 法人ACE代表 岩附由香のブログ(single-blog)

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2014年11月2日

ノーベル平和賞、カイラシュ・サティヤルティさんにサンキュー

2014年10月10日に発表されたノーベル平和賞は、本当にうれしいサプライズでした。
マララさんら2人と発表された「ら2人」のほうのカイラシュ・サティヤルティさんは、
実はACEを立ち上げたきっかとなった人だったからです。(ちなみに取材が殺到して、
大変でした。。。)

 実は私がACEをはじめたのは、カイラシュさんが世界中に賛同を呼びかけた
「児童労働に反対するグローバルマーチ」が発端です。

これは1998年1月~6月にかけて、世界中でマーチ(行進)をして、児童労働をなくし
子どもが教育を受けられるよう支援を動員していこうというムーブメントでした。

1997年当時、私は大阪で大学院生をしていて、国際子ども権利センターというNGOで
ボランティアをしていました。その時に「この資料翻訳してきてくれる?」とセンター
の職員だった甲斐田万智子さんに頼まれたのが、このマーチを知ったきっかけです。

アジアは1月17日にフィリピンから、南米は2月25日にブラジルから、アフリカは
3月21日に南アフリカから、それぞれ元児童労働者(働いていたけれどNGOなどに
救出された子どもたち)、NGO、労働組合、地域のNPO/NGOなどが協力して、
マーチをするというのです。

私が翻訳を頼まれた資料は、このマーチに賛同し、各国でもマーチを行ってほしい
という要請でした。この壮大な計画に魅了された私は、このマーチを日本で実現したい!
と思いました。世界中の人が協力して行うマーチに、日本からも賛同の意を示し、また
日本国内の人に児童労働を知ってもらうこんなにいいチャンスはない!と。

しかし、国際子ども権利センターの運営委員会で話し合ってもらった結果は、
「うちの団体だけではできない」という結論。あきらめきれなかった私は、
他に実施できるところがないかを探しました。しかし、既存の団体はどこも手をあげません。

唯一、「うちでやってもいいよ」と言ってくれた組織がありました。
ARC(Action for the Rights of Children)の代表、平野さんです。日本での実施団体を探しに
来たインドのグローバルマーチ本部の人と、3人で東京で話をして、私のやりたいという気持
ちはどんどん高まっていきました。

しかし、平野さんは活動家で、いわば1人NGO。「全部、岩附さんがやることになるよ」
といわれて、それもなんだか不思議な気がすると思いながら大阪の自宅に帰った私は、
その晩考えこんでしまいました。

「これは、このためだけのグループを作ったほうがいい気がする」

自分の直感に従い、だったらどういうグループを作るか考えようと、ACEの趣意書を一晩
で書き上げ、翌朝それを平野さんにFAXしました。

「こんなの考えたんですけど、どうでしょう」

何の経験もない学生にこんなことが出来るはずがない、と言われるかもしれないと、
恐る恐る聞いた私に、平野さんは一言、

「いいんじゃない」

といったのです。

じゃあ、やってみよう!と、仲間を募る電話をかけた、これが、ACEのはじまりです。

カイラシュさんがグローバルマーチを思いつかなかったら、また思いついてももし行動に
起こしてなかったら、そしてそのカイラシュさんの壮大な構想(SNSもなかった97年当時、誰が
こんな壮大な世界を巻き込んだムーブメントを起こすことを発想できたでしょう?
しかも児童労働というマイナーなテーマで!)に賛同し、マーチをやろう!と動き出した大人
たちがいなかったら、22歳の何の力もなかった私が、そんなエネルギーを出すことはなかったでしょう。

 

カイラシュさんに実際に初めて対面したのは98年3月インドのグローバルマーチをやっている最中に私が合流した時。その後、日本に招いたり、インドで会ったり、最近では2013年10月にブラジルで行われた第3回児童労働世界会議でお会いしました。

カイラシュさんが踏み出した一歩に影響を受けて、私のように踏み出した若者もれば、政治家や映画監督など、
数えきれない人がそれぞれ児童労働の問題解決に踏み出したのです。

カイラシュさんは、誰も思いつかないようなことを考えつく発想力、人を動かすカリスマ性、人をひきつけるチャーミングな人柄をもった本当に希有な人です。

当時、まだ児童労働問題があまり理解を得られておらず、インドでもあたりまえのように受け止められていた中で、「これは解決しなければいけない問題だ」と本当に勇気ある一歩を踏み出し、その一歩を世界中の人たちのマーチに変えたカイラシュさんに、あらためて、Thank you!と言いたいです。そしてノーベル平和賞受賞、本当におめでとうございます!

<写真はインド・デリーでグローバルマーチをした後に、カイラシュを囲んで、
コアマーチャーの元児童労働者の子どもたちやNGOスタッフと撮った記念写真。
真中の白い服を着ているのが、カイラシュさんです。
私と、事務局長の白木と、副代表の小林の3人が映っています、わかりますか?
ちなみに白木は背が小さく、小林が背が大きかったので、よく
「元児童労働者とNGOスタッフ」という組み合わせだと
間違えられていました(笑)>

 globalmarchindia

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