インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2010報告(1)
インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2010報告(1)
2010年8月27日から9月4日にかけ、スタディツアー「インドで子どもに会って考える旅」を実施しました。今回から3回に分けてその報告をお届けします。初回は、スタディツアーの概要と、バル・アシュラムの報告です。
このスタディツアーの目的は、インドの児童労働の現状や、ACEが実施しているプロジェクトをはじめとした児童労働撤廃への取りくみについて理解を深め、児童労働をなくすために自分にできることを、参加者一人一人に考えてもらうことです。そのために、インドで活動するACEのパートナー団体の活動地のほか、フェアトレード団体や国際機関の事務所を訪問します。
今回は10代から60代までの、男女合わせて18名が参加し、スタッフ1名、インターン1名が同行しました。
スタディツアー日程
8/27(金) 成田空港出発→デリー着
8/28(土) デリー市内視察、ラジャスターン州へ移動、
バル・アシュラムに滞在
8/29(日) バル・アシュラムでオリエンテーション、子どもと交流
「子どもにやさしい村」の住民との交流と村の訪問
8/30(月) バル・アシュラムの施設見学、救出された子どもへのインタビュー、デリーへ移動
8/31(火) ILOデリー事務所訪問、フェアトレードショップ訪問
9/1(水) タラ・プロジェクト訪問、ツアーの振り返り
9/2(木) アグラ(世界遺産タージ・マハル、アグラ城)観光
9/3(金) デリー市内観光、デリー空港出発
9/4(土) 成田空港到着、解散
スタディツアー参加者。世界遺産タージ・マハルの前で。
バル・アシュラム(児童労働から救出された子どもたちのリハビリ施設)訪問
バル・アシュラムとは
バル・アシュラムは、ACEのパートナー団体であるBBA(ビー・ビー・エー)によって運営されている、子どものリハビリ施設で、ラジャスターン州の農村地域にあります。インド各地で児童労働から救出された子どもたちに対し、精神的ケアのためのカウンセリングや、正規の学校へ行けるよう基礎教育を提供するノンフォーマル教育、職業訓練などの支援を行っています。
BBAとは
BBA(Bachpan Bachao Andolan:ヒンディー語で「子ども時代を救え運動」の意味。)は、児童労働撤廃のために活動する運動体です。インドの農村から児童労働を防ぐための「子どもにやさしい村」プロジェクト、児童労働をさせられている子どもたちの救出活動と、その後の社会復帰のためのリハビリ支援、市民への啓発キャンペーンや政府への政策提言などを行っています。
BBA(Bachpan Bachao Andolan):英語
ツアーでの訪問
スタディツアーの参加者はバル・アシュラムに滞在し、体操やゲームを通して子どもたちと交流をしたり、施設見学などをして、バル・アシュラムの子どもたちの生活について学びました。
子どもたちは、児童労働から救出されてから家族のもとへ戻るまでの間ここで生活し、カウンセリングや医療ケアを受けたり、読み書き計算などの基礎教育を学んだりしています。近くの公立学校に通っている子どもたちもいます。また子どもの年齢、能力、関心などに合わせて電気工、縫製、大工、看板工などの職業訓練などを受け、将来仕事を得て生活できるよう支援を受けています。
早朝、子どもたちのお祈りの様子。 職業訓練を受ける子ども。
鉄板にペンキで文字を書く練習をしている。
ツアーでは、児童労働をしていた子どもに話をきく機会もありました。私たちが話をきいた男の子の一人、サンディープ君(仮名、16歳)は、救出され る前は、溶接工場で働いていました。サンディープ君は児童労働をしていた頃、「雇い主に叩かれて頭や手にケガをしたり、溶接作業で飛んできた火が目に入っ て視力が落ちたりした」と言います。また救出されてバル・アシュラムに来た頃、最初は慣れない環境に戸惑いましたが、今では「みんなと仲良くなって楽し い」と話してくれました。
以前「ゴミ拾いをして稼いだお金で、ドラッグを買っていた」というもう一人の男の子、ラジェシュ君(仮名、17歳)は、バル・アシュラムのスタッフ と一緒にアメリカを訪問したこともあるそうです。ホワイト・ハウスや国会、大学を訪問し、児童労働の体験を話して、児童労働撤廃の必要性をアピールするた めです。
スタディツアー参加者が、「アメリカに行ってみて分かった、インドの良いところはありますか」と聞いたところ、ラジェシュ君は「アメリカにあるもの はここにはないが、ここにあるものはアメリカにはない」と答えてくれました。過酷な環境に置かれた過去を持ちながらも、自分の国に誇りを持っている姿に、 ラジェシュ君の力強さと可能性を感じました。
さらにバル・アシュラムで行われた文化プログラムでは、子どもたちは、児童労働や社会の平和などについて歌やダンス、劇などを披露してくれました。またツアー参加者からは、日本の歌を歌ったり、日本の遊びを紹介して、交流を深めました。
スタディツアー参加者の感想
- バル・アシュラムの子どもたちは私たちに会ったとき少し警戒心もあっただろうけど、優しくしてくれたし、普段は心の傷を感じさせないくらい元気だった。(20代女性)
- 子どもたちはとてもシャイではあったが、みんな笑顔がとても素敵だった。やはりしっかり活動をしている成果の1つかなと思う。(20代男性)
- バル・アシュラムのような施設があることによって、児童労働をしていた子どもたちが心身共に健康を取り戻すことができることを、子どもたちと直に接することによって感じることができました。(20代・女性)
次回は、「子どもにやさしい村」プロジェクトの報告です。
- カテゴリー:子ども・若者支援
- 投稿日:2010.11.06