インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2011報告(3)
インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2011報告(3)
2011年度のインド・スタディツアー報告第三弾は、国際労働機関(ILO)南アジア地域事務所によるインドでの児童労働への取り組みと、フェアトレード団体「タラ・プロジェクト」の活動、そしてツアー参加者による振り返りの様子について報告します。
ILO南アジア地域事務所訪問
ILO(国際労働機関)とは
1919年に設立された労働に関する国際的な専門機関です。加盟国の政府・労働者・使用者の代表三者で構成されています。基本的人権や労働者の権利を守るための国際的な条約や政策を策定し、各国で実施されるよう支援する活動を行っています。
Decent Work(ディーセントワーク)実現に向けた取り組み
Decent Work(ディーセントワーク)とは、“人間らしい仕事”という意味の言葉です。ILO南アジア地域事務所では、その実現に向けた取り組みとして、以下の3つを目的としています。
- 雇用の権利を守る:男女、特に若者や社会的弱者によりよい仕事の機会を与える
- 労働者の社会的保護:特にインフォーマル分野で働く人のための社会保障など
- 労働条件の改善:児童労働を含む、許されない形態の労働の撤廃
IPEC(児童労働撤廃国際計画)
IPEC(アイペック)とは、児童労働撤廃を目的とした技術協力プロジェクトのことで、インドでは1992年から活動を開始しています。政府による児童労働対策や教育の対策と連携し、特に児童労働の集中した地域や分野などで活動が行われています。
集中的な児童労働対策プロジェクト(Converging Against Child Labor Project)
このプロジェクトは、2009年からパイロットプロジェクトとして開始され、特に危険有害な児童労働が多い地域10箇所で実施されています。対象は5-14歳の子ども19,000人、14~17歳の子ども2,000人、その家族5,000世帯となっています。活動内容としては、子どもを危険労働から解放し、教育、技術訓練などの支援、また家族の雇用保障・社会福祉などによる自立支援を行っています。
中央、州、地方レベルの政府間での連携によって児童労働の撤廃や子どもの教育支援、貧困家庭の雇用、社会保障などを行っています。また、社会的パートナー(雇用者、労働組合、NGO)とも協力して活動しています。
ILO事務所を訪問したスタディツアー参加者の感想
一言で労働と言っても、男女の労働問題や児童労働などいろんな事をILOは行っていて、規模の大きさを実感しました。ただ活動範囲が広すぎて上手く計画が進まない事も多いのではないかなと思いました。
タラ・プロジェクト訪問
タラ・プロジェクトとは
タラ・プロジェクトは、インドのフェアトレード団体で、経済的に不利な状況に置かれる職人の自立を支援するため、1970年から活動を始め、主に手工芸品の生産・販売を行っています。その生産過程で児童労働を使わない、公正な賃金や適切な労働条件を守る等の基準を設け、各地域で生産された製品は欧米や日本などへ輸出されています。また、タラ・プロジェクトは世界フェアトレード機構(WFTO)に加盟し、「インド・フェアトレードフォーラム」の設立メ ンバーでもあります。
アクセサリーや生活雑貨、手工芸品などのフェアトレード商品を生産し、欧米や日本へ輸出しています。また、生産者へ職業訓練を行うことで技術を高め、生産者の家族の生活向上も目指し、教育、健康保険、環境保護、マイクロファイナンスなど様々な分野で活動しています。児童労働防止のための啓発や子どものための教育支援もその一つです。
フェアトレードの10の基準(WFTO)
WFTOは、フェアトレードの活動を実施するにあたって守るべき指針10項目を定めています。タラ・プロジェクトもWFTOに加盟団体で、この指針に基づいて活動しています。
- 経済的に不利な生産者への仕事の機会提供:不安定な収入や貧困から脱して経済的に自立できるよう支援する
- 能力強化:生産者に技術指導などを行い生産・管理能力を高める
- 男女の平等:雇用や労働条件などにおける男女差別をしない
- 公正な賃金の支払い:生産者が労働の対価として公正だと思える賃金を支払う
- 労働条件:生産者が安全で健康的な環境の中で働けるようにする
- 透明性と説明責任:発展途上国の生産者と先進国の消費者をつなぎ、顔の見える関係づくりを行う
- フェアトレードの促進:フェアトレードの目的や必要性を広める
- 子どもの権利を守る:「子どもの権利条約」やその国の法律を守り、子どもが強制的に働かされないようにする
- 環境の保護:地球環境の保護も考慮して生産・販売する
- 取引関係をもつ:生産者が健全な生活ができるよう、バイヤーと信頼関係にもとづいた長期間の取引を行う
訪問して感じたこと・学んだこと
フェアトレード商品の今までのイメージとは打って変わって、タラ・プロジェクトの商品は、デザインやアイディアがとても 斬新そして繊細で、思わず買いたくなるような商品ばかりでした。労働者に公正な賃金を払うとともに、商品の質・デザインを上げることで消費者を引き付ける 工夫を感じました。また、上記のように多岐にわたる活動をしていて、様々な分野からのアプローチで貧困をなくしていこうと活動するスケールの大きな団体だ と感じました。
ツアーの振り返り
ツアー全ての訪問が終わった日の夜、参加者全員でこれまでのツアーについて振り返る時間をもちました。ツアー中に学んだことや考えたことを、日本に帰る前にしっかりと自分たちの中でまとめて整理するためです。
それぞれの訪問先について、よかったこと、課題と提案、疑問など話し合い共有しました。また参加者一人一人に、児童労働の問題を解決するために「自分には何ができるか」ということを考え、発表しました。その一部を紹介します。
- 今回での学びを回りに伝え、そして自分の仕事を通してできる形で貢献し、児童労働を忘れないこと。商品を買う時など日常生活でも常に児童労働に反対する選択をし続けると思う。(20代女性)
- 疑問に思っていることをそのままにしない。まずは身近な人にツアーの体験を話す。そして買い物をする時はFair Trade商品に気をつけてみる。(20代女性)
- 日本の子どもたちに伝えること。ACEの支援をすること。そして卒業論文で児童労働について書くこと。(20代男性)
- 友達にフェアトレード商品をプレゼントするなどして、フェアトレードを広めていきたい。(20代女性)
- 教育を受けられるということを幸せに感じて、これから更に児童労働についての理解を深める。そして周りへ伝えて行く。(10代女性)
全員が積極的に意見を出し、とても参加型の振り返りとなりました。
報告:国際協力事業担当インターン 川崎 桃恵
インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2011報告
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- カテゴリー:子ども・若者支援
- 投稿日:2011.12.06