インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2012報告(2)
インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2012報告(2)
インド・スタディツアー2012年度報告2では、ACEがパートナー団体のBBAと共に実施している「子どもにやさしい村」プロジェクトについてお伝えします。
「子どもにやさしい村」プロジェクト
「子どもにやさしい村」プロジェクトとは、農村地域で児童労働をなくし、すべての子どもが学校で質の良い教育が受けられるようにすることを目的としたプロジェクトです。子どもの参加による「子どもにやさしい村」づくりのための持続可能な仕組みをつくります。教育の普及やコミュニティ全体、特に子どものエンパワーメントを通して、児童労働や非識字、子どもの権利侵害をなくす取り組みです。
「子どもにやさしい村」プロジェクトの主な活動内容
プロジェクトでは住民自身が自ら児童労働をなくし、子どもは学校へ通い、親は生活状況の改善や収入向上に取り組めるように支援しています。
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子どもの就学の徹底
働くために学校へ通えない子どもたちが就学できるよう、家庭訪問を行って親を説得したり、集会やキャンペーンを行ったりして、子どもたちが学校に通えるようにする。 -
「子ども村議会」の設置による子ども参加の仕組みづくり
子どもたちの代表者による「子ども村議会」を作り、子どもがおとなの村議会(自治組織)と共に、学校や村の問題について話し合い解決できるようにする。 -
教育環境の整備
子どもたちが学校できちんと学べるよう、学校の施設や教育の質などについての改善策を「子ども村議会」が村議会に提案し、行政への要請を通して学校を改善する。 -
住民の組織化と訓練による能力強化
青年グループや女性グループなどの住民組織を作って、住民が村のインフラ整備・雇用・社会保障などのための行政サービスを活用したり収入向上に取り組めるよう訓練し、村の自立を図る。
訪問した村でのプロジェクトの成果
今回はプロジェクト対象地の村を訪問しました。この村は農村部の奥地にあり行政サービスが十分行き届いていないため、道路・電気・水など基本的なインフラが整っておらず、もともとカーストの低い住民が多く住んでいます。教育を受けている人の割合は低く、特に女の子の多くは家事労働や農作業の仕事のために学校へ通うことができませんでした。
そんな村で、プロジェクトをはじめてからどんな変化があったのでしょうか。プロジェクトを通じて組織され、村での重要な活動を担っている「子ども村議会」「女性グループ」「青年グループ」のそれぞれのメンバーに話を聞くことができました。
「子ども村議会」を通じた子どもたちのエンパワーメント
子ども村議会の女の子たち
「子ども村議会」は、毎年子どもたちによって行われる選挙を通じて委員長、副委員長、書記長を決まり、村の子どもたちと定期的にミーティングを開いて、学校や村での問題について話し合っています。ミーティングは月に3回ほど開かれ、学校に机やいす、先生が足りないなどの問題に対して、学校の先生や青年グループなどの大人と話し合ったり、村議会(自治組織)の会議に参加して改善策を提案したりしています。これまでに学校のトイレや飲料水施設の修繕、校長室や給食調理室の建設などが行われました。
子ども村議会へのインタビュー
- Q.子ども議会ができて変わったことはありますか?
- A.子ども議会のメンバーとなるために選挙に出ようと思った理由は、学校での問題や村の問題、例えば水不足や電気の整備などの解決を図りたいと思ったからです。プロジェクトが行われて、問題を解決していくための方法を学べるようになりました。また、家族と村の事について話すようになりました。学校に行っていない子どものいる家庭を訪問して、学校に行けるようになるよう話し合ったり説得する活動も行うようになりました。
- Q.学校は楽しいですか?
- A.勉強をしたり、遊んだり、スポーツをしたり、楽しいです。学校では社会科学やヒンディー語を学んだり、クリケットをしたりして遊びます。インドの独立記念日(8月15日)にはみんなでご飯を食べたり、劇をしたり、お祝い行事を行います。
「女性グループ」を通じて女性のエンパワーメント
「子どもにやさしい村」プロジェクトでは、「女性グループ」も組織して活動しています。保健・医療、特に子どもや母親の健康問題について話し合い、自助グループを作って貯金をしたり、グループ内で生活費や医療費など必要な費用を補助できるようになりました。グループで預金した銀行から少額融資を受けて、牛のミルクを売るビジネスを始めて、女性が収入を得られるようにもなりました。
女性グループへのインタビュー
- Q.具体的にどのような活動をしていますか?
- A.最近は雨季の感染症問題について話し合い、母子保健センターと連携して、子どもが予防接種や健康診断を受けられるように取り組みました。村の道が悪くて他の地域へのアクセスが困難なので、道路の整備について村議会へ提案し、改善できるよう努力しています。しかし、大雨の影響で工事が滞っているのが現状です。この村では女性が村の問題について家の外で話し合ったり意見を述べたりすることはありませんでしたが、プロジェクトが行われて発言できるようになったことは大きな変化です。
「青年グループ」について
青年グループは、子ども村議会の活動をサポートしたり、定期ミーティングを開いて、住民の多くが従事している農業や畜産の仕事に関する課題や、道路など村のインフラ整備に関わる問題について話し合い、解決に向けて活動しています。例えば、学校の先生を増やすための要請手続きを行ったり、村議会を通して壊れた水汲みポンプの修繕、電気の普及や道路の整備に取り組んだり、収入や生活向上のために行政による雇用制度や社会保障制度の活用などを行っています。
青年グループへのインタビュー
- Q.最近どのような活動を行いましたか?
- A.青年グループは現在11人おり、村が抱える問題を解決できるよう住民と話し合い活動しています。最近は、住民の身分証明書の発行に取り組んでいます。身分証明証は、小麦・灯油・砂糖など生活必需品を安く買える配給制度を活用するときや選挙で投票するときなどに必要で、住民にとって非常に重要なものです。この村だけ発行手続きが行われていなかったことが分かり、青年グループが担当局に抗議し、発行できるになりました。
- Q.活動で困難なことや課題はありますか?
- A.グループ内での問題はありませんが、インド政府には問題があります。インド政府には汚職があり、国の開発、つまりこの村でも使われるべきお金が政治家によって横流しされてしまうのです。
- Q.子どもたちには将来何になってほしいですか?
- A.子どもたちには、いっぱい勉強して良い国民になってほしいです。
「子どもにやさしい村」を訪問したツアー参加者の感想
インドでは女性差別という問題がある中で、女性、子ども、男性が対等に話し合える機会をつくったのは素晴らしいことだと思います。それぞれのグループで自分たちが一番特化しやすい問題から変えていくことが、この村にとって大きな発展になると思います。
青年グループの話し合いや女性グループの話し合いにもあったように、インフラ・水・交通手段の確保が一番重要な課題だと思いました。この基盤がしっかりすることで、話し合いによって改善する問題解決の速度は今よりもさらに加速するのではないかと考えました。(20代女性)
報告:国際協力事業インターン 横田 美希
インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2012報告
世界の子どもの笑顔のため、世界を変える小さな一歩を。
- カテゴリー:報告
- 投稿日:2012.11.14