「ビジネスと人権に関する行動計画」原案に対してパブリックコメントを提出
「ビジネスと人権に関する行動計画」原案に対してパブリックコメントを提出
日本政府は、「『ビジネスと人権』に関する行動計画」原案を2020年2月に公表し、パブリックコメントを募集しました。ACEは子どもを支援している団体として、特にビジネスにおける子どもの人権の保護について意見を提出しました。
「ビジネスと人権に関する指導原則」
国連は「ビジネスと人権に関する指導原則」を2011年に発表し、この指導原則の普及と実施を促進するために、各国に「行動計画」の策定を奨励しています。すでに世界で23か国が策定済で、アジア第1号はタイとなっています。
この「指導原則」では、企業による活動が人権に与える影響に関して国家の義務と企業の責任を明らかにし、人権侵害の被害者を救済するための仕組みづくりを示すことが求められています。
日本の「行動計画」もこの「指導原則」に則って、①人権を保護する国家の義務、②人権を尊重する企業の責任を促すための政府の取り組み、③人権侵害からの救済へのアクセスに関する取り組み、という構成になっています。しかし、「指導原則」の内容が十分に反映されていないと、原案策定のプロセスにかかわったステークホルダーは評価しています。
「ステークホルダー共通要請事項」および要請書
政府が設置した「ビジネスと人権に関する行動計画に係る作業部会」のステークホルダー構成員一同が、2019年11月に「『ステークホルダー共通要請事項』および要請書」を提出しました。立場の異なる企業や団体が意見をまとめて、政府に要請したことは、画期的と言えます。
共通要請事項は次の5点です。
①企業情報の開示
②外国人労働者
③人権デュー・デリジェンスおよびサプライチェーン
④公共調達
⑤救済へのアクセス
※構成員は、経団連、中小企業家同友会、GCNJ、連合、日弁連、ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォーム(ACEは幹事団体)など
ACEが提出したパブリックコメント
ACEは、主にビジネスにおける子どもの人権の保護について、次のような意見を述べました。
(1)子どもの権利の保護への包括的な視点と取り組み
ビジネスにおいて子どもの権利を保護・促進するためには、児童労働、製品やサービス、マーケティングや広告など幅広い分野での取り組みが必要です。しかし、「行動計画」原案では、人身取引、性的搾取、児童買春など、ビジネスが影響を及ぼす子どもの権利侵害の一部しか取り上げられていませんでした。
そこで、政府は「子どもの権利条約」を順守し、「子どもの権利とビジネス原則」(2012年)を指針として、包括的な視点からビジネスにおけるあらゆる子どもの権利侵害をなくすというコミットメントを示し、取り組んでいくことを要請しました。
(2)子どもの権利の保護・促進のための具体的措置
「行動計画」であるにもかかわらず、現状説明の後に今後の政府の方針が明記されていませんでした。そして、具体的な措置には現在実施されている施策が羅列されているという印象がありました。現在、具体的な措置に言及できなくとも、各事項に取り組んでいくうえで、政府はどのような考えのもとどのような措置を講じていくのかという方向性を示すようにと意見を出しました。
具体的には、横断的事項としてとりあげられている「子どもの権利の保護・促進」の具体的措置に、「サプライチェーンにおける児童労働、強制労働、人身取引、現代の奴隷制の撤廃」と「国内の児童労働への取り組み」を追加してもらえるように要請しました。
他にも、人権教育・啓発、救済へのアクセス、行動計画の見直しについても意見を述べました。全文は以下をご覧ください。
ACEが関連する団体が提出したパブリックコメント
・ACEが事務局を務める児童労働ネットワークからも、企業のサプライチェーンにおける人権デュー・デリジェンスを促す法律の制定、政府への入札にあたって企業の人権デュー・デリジェンスを促す法律の制定、行動計画の実施・見直しなどについて、パブリックコメントを提出しました。
・政府がステークホルダーとの対話を行う諮問委員会と作業部会のメンバーであり、ACEが幹事団体を務めるNAP市民社会プラットフォームから、パブリックコメントを提出しました。(政府が「行動計画」原案を公表する前、2020年1月に「ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)策定への市民社会からの意見書」を提出し、ACEは児童労働の部分の執筆を担当しました)
*「ビジネスと人権」に関する行動計画の原案に対する意見(NAP市民社会プラットフォーム)
*「ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)策定への市民社会からの意見書」
・ACEの法人会員や法人会員サロンに参加された企業の方々にも、ACEが要請している点をお伝えし、パブリックコメントを提出していただくようお願いしました。
2019年11月にジュネーブで開催された国連「ビジネスと人権フォーラム」では、”Level playing field”(公平な競争の場の創出)がキーワードのひとつとなっていて、人権を守るためのルールづくりが加速化していくと思われます。日本において、そのルールづくりには、今回の「行動計画」原案がもとになっていくと考えられ、児童労働を含む子どもの権利がきちんと守られるような内容になることが望まれます。
ACEは、引き続きさまざまなチャンネルを通して、ビジネスにおける子どもの権利保護を要請していきます。これからも、みなさまのご支援・ご協力をよろしくお願いします。
- カテゴリー:報告
- 投稿日:2020.03.18