「児童労働反対世界デー」にILO・UNICEFから報告書『新型コロナウイルスと児童労働』が発行されました

「児童労働反対世界デー」にILO・UNICEFから報告書『新型コロナウイルスと児童労働』が発行されました

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世界中が新型コロナウイルスの影響を受けているなか、2020年も612日に「児童労働反対世界デー」を迎えました。この日に合わせて、ILO(国際労働機関)とユニセフが報告書『新型コロナウイルスと児童労働:危機の時、それは行動する時』を発表しました。児童労働は過去20年間減り続けていますが、新型コロナウイルス蔓延によって増加に転じるリスクがあり、早急なアクションが必要という書き出しになっています。

“COVID-19 AND CHILD LABOUR: A TIME OF CRISIS, A TIME TO ACT”

報告書の目次

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報告書『新型コロナウイルスと児童労働』では、新型コロナウイルスによる社会・経済状況の変化において、どのような児童労働のリスクが発生するのかについて9つの項目(生活、雇用、貿易、教育、保健など)に分けて説明しています。データ、現在の子どもの状況、過去の危機からの経験、有効な対策などを非常に分かりやすくまとめています。

貧困が1%増加すると、児童労働が少なくとも0.7%増加します
極度の貧困のなかで暮らす人が、今年だけで4000万人から6000万人増える可能性があります。世界経済が5%縮小すると、2018年に比べて極度の貧困層の人が8500万人、20%縮小すると、4億2000万人増加すると予測されています。

しかし、世界人口の55%にあたる40億人には社会保障がありません

そこで、家族が危機に陥った時、児童労働が「サバイバルのための手段」となります
貧困、借金の返済、一家の稼ぎ手の死亡など、家族が危機的な状況に直面すると、子どもの労働力に頼ることが生活していくための手段の一つとなります。子どもが危険有害な労働を含む児童労働、債務労働、強制労働などに巻き込まれるリスクが発生します。

学校に在籍している子どもの90%(16億人)が、学校閉鎖の影響を受けています
多くの学校がオンライン授業を始めましたが、インターネットにアクセスがあるのは世界人口の約半分です。多くの子どもは教育の機会を奪われたばかりか、給食による栄養摂取ができなくなり、日中安全に過ごす場所がなくなってしまいました。学校が再開されても、学校に戻れない子どもがたくさんいるのではないかと懸念されています。

現在、子どもたちにはこんなことが起こっています
• マラウイでは、学校の「休暇」を利用して、親は子どもを果物や野菜を売りに町へ行かせています。
• フィリピン、ザンビア、マラウイのビジネスをしている家庭では、安全や健康へあまり配慮せずに危険な状況で子どもを働かせています。特に女の子には、農業、家事、インフォーマルな仕事などで搾取されるリスクや性的虐待のリスクがあります。
• 借金のかたに子どもが債務労働に従事させられています。
• 複数の国で、子どもはコロナウイルスにかからないと考えられていて、おとなの代わりに子どもを働かせています。外出禁止令が出ていても、警察に見つけられたり、捕まえられたりしにくいので、買い物や働きに行かされています。

報告書より子どもの写真
報告書より子どもの写真

他にも、正規経済での雇用が減少し、非正規経済(建設などの日雇い労働、廃品回収、路上での物売り、家族での小規模ビジネスなど)で働く人が増えると予想されています。経済がインフォーマル化すると、労働集約的な家族ビジネスでは子どもの労働につながりやすく、労働環境の取り締まりが難しくなります。
報告書より子どもの写真また、移住労働者からの送金が減り、教育費が支払えずに退学したり、生活のために子どもが働きに出されることもあります。ネパールでは、GDPに占める海外送金の割合が25.4%を占めています。

世界は、アフリカでのエボラ出血熱、アジア通貨危機、リーマンショックなど、これまでに危機を何度も経験してきました。その時に、正しい選択をするかどうかで、将来が変わってきます。

報告書では、包括的な社会保障、融資へのアクセス、おとなへのディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)創出、教育の機会の保障、労働基準の監督と法執行の強化、児童労働を許容しない社会規範などの対策を提案しています。

児童労働の要因は複雑に絡み合っていることから、新型コロナウイルスという危機に対して複数の対策を組み合わせて対応しなければなりません。過去の経験から、児童労働を撤廃するためには、教育、労働、社会保障、ビジネスと人権などに国を超えて取り組む必要があることが明らかになっています。

今こそ、SDG 8.7「2025年までの児童労働撤廃」達成をめざして、正しい選択が行われるようにみんなで行動を起こす時です。ACEは、インドとガーナのプロジェクト地では緊急支援を、政府にはアドボカシー活動を行っていきます。

これからも、ACEへのご支援、ご協力よろしくお願いします!

※画像はすべて、”COVID-19 AND CHILD LABOUR: A TIME OF CRISIS, A TIME TO ACT” (ILO-UNICEF 2020年)から使用しています。

         

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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2020.06.25