【インド便り】ピース・インド プロジェクトの集大成、プロジェクトの「参加型評価」を開始!
みなさん、こんにちは!インド・プロジェクトマネージャーの森です。いつもACEの活動への温かいご支援をいただき、ありがとうございます。
ACEは、インド・テランガナ州のコットン生産がさかんな農村地域で、現地パートナー団体SPEEDとともに、児童労働から子どもを守り教育を支援する「ピース・インド プロジェクト」を行っています。
今回のインド便りでは、現在3つの村で実施しているプロジェクトの期間延長のお知らせと、「プロジェクト評価」に奮闘するスタッフの様子をお届けしたいと思います。
プロジェクト終了時期の延長が決定!
現在活動している3つの村では、2023年3月にプロジェクトを終了し、住民に引き渡しをする予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響によって当初の予定と比較して活動が遅れていること、それに伴い、住民が自立して「児童労働のない村」を維持できる仕組みづくりが整備されていない状況であることを踏まえ、2023年8月31 日まで活動を延長することになりました。
延長したとは言え、プロジェクトの住民への引き渡しまであと約10ヶ月間!
2010年から始まったピース・インド プロジェクトでは、これまで10年以上にわたり6つの村でプロジェクトを実施してきており、1,245人の6~17歳の子どもが児童労働から解放され、教育を受けることができるようになりました(2022年10月末現在)。残りの期間でもSPEEDとともに住民と各ステークホルダーの能力強化の活動を継続し、現在活動する3つの村でも住民の自立を後押しするエンパワーメントを図っていきたいと力が入ります。
「児童労働のない村」とは?プロジェクト評価への想い
プロジェクトでは「95%以上の子どもたちが児童労働から解放される」ことを、その村でのプロジェクト終了の指標のひとつとしています。この指標を満たすこと=「児童労働のない村」が達成されたということです。
その村が「児童労働のない村」として維持されるために、必要なことは何でしょう?
これまでプロジェクトを終了した村で聞き取りを行った際に、コロナ禍も重なり、不登校になっている子どもたちの実態が浮き彫りになることがありました。そこで、私たちは、プロジェクトを行ってきた村の実態を「評価する」ことを通して、プロジェクトの効果や持続性を調査したいと考えています。
プロジェクトの運営を住民に引き渡すことを見据えた今、この評価は非常に重要です。プロジェクトが終了した後も住民自身が「児童労働のない村」を維持できる仕組みを見直し整備することで、「児童労働のない村」を持続するモデルケースを確立します。
同時に、プロジェクト評価を通して、SPEEDや住民ボランティア組織「子ども権利保護フォーラム(CRPF)」をはじめとするステークホルダー(関係者)の能力を強化することも目的としています。
児童労働のない状態を自立的に持続していくためにSPEEDと住民が一緒に考え、評価を通して子どもや住民の声に触れ、「児童労働のない村」の仕組みづくりに必要な要素を自ら体感することは、「児童労働のない村」を維持するためにとても大切な取り組みだと考えています。
プロジェクト評価の研修、どのように課題を乗り越える?
プロジェクト評価の第一段階として、SPEEDとACEとで内部研修・ワークショップを計7回行いました。
まずは、プロジェクトの目的、経緯、指標、内容などをふりかえりつつ、「いま何を目的に何を評価するのか」を明確にして評価設問を設定し、評価設問をどのような基準・方法で価値判断するかを考えたり、必要なデータを収集するステップを明確にしていきます。その上で、16のグループに分けた受益者やステークホルダー毎に、彼らの声を適切に反映するためのデータ収集の形を検討し、インタビューやワークショップのための質問票を作りました。
プロジェクト評価のステップを順調に進めていく中、SPEEDスタッフとの間での課題も見えてきます。
スタッフがプロジェクトの目的を共通認識として持ち始めた一方で、児童労働のない村の達成に向けて各スタッフの抱く想いがいつも同じであるとは限りません。また、現地で活動している全てのスタッフが英語を理解できるわけではなく、研修中は一部のスタッフが通訳の役割も担ってくれていますが、言葉の壁の問題もあり、時間がかかる割にお互いの意見の理解に時間を要してしまい、前に進まない感も…。毎回、3時間のワークショップの後は、疲労困憊の様子が見て取れました。
そこで、児童労働問題のエキスパートであるインドの外部団体を講師として招き入れ、ACEと協働でSPEEDとCRPFメンバーに対する集中的な研修を実施することにしました。プロジェクト評価に関する講習に加えて、データの収集方法、質問票の精査(質問内容、手法の変更、子どもの問題への焦点)等のテクニカル研修も行っています。
児童労働の問題に精通した団体と協働してワークショップ形式の意見交換をすることによって、各スタッフが感じていた想いや課題、消化不良感を洗いざらい話し合い、プロジェクト評価の目的を再確認・再共有したり、方向性を修正したりする時間となっています。
SPEEDやCRPFメンバーとの間でも活発な議論があり、積極的な意見交換ができ始めました。それぞれの組織間、組織内での良い相乗効果が生まれています。
スタッフの自信や当事者意識が向上している様子が見て取れ、「児童労働のない村」のメカニズム構築のために各自が実施策を検討する良い場となりました。
現在、これらの研修を終えて1つの村を対象としたテストインタビューの真っ最中です。このテストを通して、課題や教訓を見つけて調査内容を再検討し、本格的なフィールド調査を始める予定です。
現地では今後も「児童労働のない村」の仕組みの構築を模索し、住民に寄り添い自立を後押しする最善策を検討し続けます。
引き続きの応援をどうぞよろしくお願いいたします!
インド・プロジェクト マネージャー 森
インドの子どもたちを笑顔にするために
応援よろしくお願いします!
- カテゴリー:報告
- 投稿日:2022.11.24