【開催報告】第15回ACE交流サロン「ビジネスと人権が持続可能であるために~卵が先か、鶏が先か?~」

【開催報告】第15回ACE交流サロン「ビジネスと人権が持続可能であるために~卵が先か、鶏が先か?~」

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2022125日、第15ACE交流サロンを開催しました。1210日の世界人権デーを前に、同年9月経済産業省により発行された責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を踏まえ、持続可能な社会の実現に向けたビジネスの転換について参加者のみなさんと議論し、ともに考える機会を設けました 

ACEでは、2009年からガーナのカカオ生産における児童労働の解決を目指し活動していますコミュニティレベルで直接的に支援する活動だけでなく、ガーナ政府との「児童労働フリーゾーンCLFZ」認定制度の構築や、カカオ産業に関わる様々なアクター間の連携を目的として「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォームの立ち上げにも携わってきました。今回は、長年ACEと取り組みの連携があり昨秋主力製品であるブラックサンダーの原料をサステナブル原料に切り替えた有楽製菓株式会社代表取締役社長の河合辰信氏とビジネスと人権に関する企業への支援を多数手がける株式会社オウルズコンサルティンググループ代表取締役CEO羽生田慶介氏をゲストに迎え、有楽製菓の事例を紐解きながら「ビジネスと人権」に関する取り組みをどのように推進していけばよいのか、その課題や今後の展望を含めて意見交換する場を設けました。 

【第一部】パネルディスカッション 

第一部では羽生田氏がモデレーター兼コメンテーターを務め、有楽製菓の河合氏とACE副代表の白木朋子の3名でパネルディスカッションを行いました。

世界中で人権問題に関する法規制や、サステナブル原料への転換が進む一方で、日本企業の取り組みは軒並み遅れているのが現状。それに対し有楽製菓は、なぜ今回、自社目標を3年前倒しでブラックサンダーの原料を「児童労働に配慮したカカオ」に変更できたのか、社内外からの意見や、どのような課題があったのかについてお聞きしました。河合社長は、サステナブル原料への変更を決意した理由について、ガーナのカカオ生産現場で児童労働があることを知り、チョコレートを通じて子どもたちのみならず多くの方の笑顔を作るという自社の理念に反して、ガーナの子どもたちの笑顔を搾取していた、という許し難い事実に気づいたからだと答えました。

今の日本の文脈では、消費者の理解が醸成されていないので、企業がサステナブルな商品を作っても売れない、だから取り組みに踏み出せないという状況がある。そのような、“鶏が先か卵が先か(消費者の変化が先か企業の変化が先か)”という問いがある中で、「(有楽製菓は)サステナブルな製品を求める消費者からの声や他のアクターからの働きかけを待たずに、なぜ転換できたのか?」という質問に対し河合氏は、「カカオと児童労働の関わりを認識して以来、SDG 8.7にある2025年までに児童労働撤廃に取り組むカカオ原料にするという目標を掲げ、達成に向けて軸を曲げずに社内外の巻き込みを進めてきました。それは、今後日本でも来るであろうエシカルな製品があたりまえに流通している時代に向けた決断であり、将来を見据えた取り組みを自社のみならず業界全体で取り組んでいくべきだと考えたから」と、お話ししました。

児童労働を自社の取り組みだけで解決することはできないため、業界を上げて連携した取り組みを進めていくために、児童労働撤廃に向けた各セクターの役割と取り組み内容を示したセクター別アクション*が、「サステイナブル・カカオ・プラットフォーム」により昨年9月に発表されました。有楽製菓の事例は、メーカーという立ち位置から、取引先との関係性を通してサステナブルな原料の開発と供給を推進させた例であり、業界全体に変化をもたらしていくことを意図している先進事例であることもわかりました。

*児童労働の撤廃に向けたセクター別アクション:https://www.jica.go.jp/press/2022/glkrjk0000007uly-att/action.pdf
「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」児童労働撤廃分科会が作成。

【第二部】情報交換・交流タイム(ワールド・カフェ方式)

第二部では、「ビジネスと人権」に関する企業の取り組みについて、登壇者と参加者がグループに分かれて疑問点や意見を交換し、理解を深めました。参加者からは、日本のビジネスと人権に対する取り組みの遅れや、児童労働の実態への理解がまだ不十分であるとの実感と正しい情報を伝えることの難しさが共有され、プラットフォーム等での勉強会実施のアイディア等が出たほか、自社内で数年前に人権に関する有識者とのダイアログを開催し、それ以降社内で変化が見られた事例などが共有されました。

今回の第15回サロンでは、有楽製菓の取り組み事例を通して、「ビジネスと人権」および児童労働撤廃に向けた取り組みにおける課題の共有や、「ありたい姿」に向かうためのマインドセットについて考える有意義な時間となりました。

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

「児童労働のないビジネスづくり」や
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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2023.02.14