SDGs実施指針改定案へパブリック・コメントを提出し、改定版に反映されました

SDGs実施指針改定案へパブリック・コメントを提出し、改定版に反映されました

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SDGs実施指針の2回目の改定にあたって、2023年11月にパブリック・コメントが募集されました。ACEは意見を提出し、12月に発表された改定版に一部反映されました。

持続可能な開発目標(SDGs)実施指針

SDGsを進めていくために、日本政府は2016年に内閣総理大臣を本部長、すべての国務大臣を構成員としてSDGs推進本部を内閣に設置しました。同じ年の12月に持続可能な開発目標(SDGs)実施指針を決定し、国連SDGサミットの開催に合わせて4年ごとに見直しをすることになりました。

SDGs推進本部は、第1回目の改定を2019年に行い、第2回目の改定にあたって、2023年11月にパブリック・コメントを募集しました。そして、2023年12月、持続可能な開発目標(SDGs)実施指針改定版が発表されました。

以下をご覧ください:
・持続可能な開発目標(SDGs)実施指針改定版
・「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針(改定版)についての意見募集」の取りまとめ結果について

ACEからの意見書

日本がSDGsを達成するために、今後4年間行わなければならないことがSDGs実施指針にきちんと明記されるように、児童労働と子どもの権利に取り組んでいる市民社会という立場から、以下5つの意見を提出しました。

1.市民・市民社会組織によるSDGs促進に関する活動についての記述の追加を提案します。

「現在の状況」という項目で、日本におけるSDGsの浸透状況や取り組みについて、国家レベル、地方レベル、民間ビジネス、国際協力において記述されていますが、市民による活動については述べられていませんでした。

市民によって環境、貧困、男女平等、人権など環境・社会面における実践的な活動、特に地域に密着した活動が行われていますので、市民・市民社会組織によるSDGs促進に関する活動について記述した項目の追加を提案しました。

<改定版 2ページ>
第四に、早い段階からSDGs 推進に取り組んできた市民社会を含む民間においても、SDGs 達成 に向けた事業の実施や様々な提言等の取組が 非営利組織を含む広範なステークホルダーの間で 大きく広がっている。

「市民や市民社会組織の活動について記載すべき」という同様の意見が多数あったようで、「現在の状況」において追記されました。

2.現在の状況についてこの実施指針改定案(政府によって)で認識されている課題を明記してください。

日本のSDGs達成状況について、経済協力開発機構(OECD)や国連地域開発センター(UNCRD)の評価が引用されていましたが、その後に日本政府として現状をどのように分析し、何を課題と考えているのかについて書かれていませんでした。

どのような課題があり、また進展があったとしても目標達成に至っていなければ、どう取り組んでいくのか、示す必要があります。重点事項という項目で、取り組んでいく課題をはっきりと書く必要性を提案しました。

<改定版には、明確には反映されませんでしたが、下記意見4によって追記された文章に「進捗状況の把握・評価、政策への反映」が含まれました。>

3.人権への取り組み強化という項目を追加してください。

日本は人権分野では後進国と言われています。最近のジャニーズ事務所の事案からも、社会全体において人権意識が低いことが明らかになりました。SDGsの重要な柱である人権についての取り組み強化を実施指針に含めることを提案しました。

<改定版 5ページ>
かかる取組を進めるに当たっては、これまでの実施指針で強調されてきたとおり、人権の尊重とジェンダー平等は全ての目標において横断的に実現されるべきことに十分留意する。…

「人権やジェンダーに係る課題を、社会全体で進める課題として書くべき」という同様の意見が多数あったようで、3 実施に当たっての指針 (1)重点事項  ②「誰一人取り残さない」包摂社会の実現において、追記されました。

4.「モニタリングと評価」という項目を追加してください。

SDGsのグローバル指標の達成状況が、外務省のウェブサイトで公開されていますが、SDG 8.7の児童労働者数など、「現在、提供できるデータはありません」という項目が多く見られます。SDGs 実施指針改定版(平成28年12月)には、「SDGs のグローバル指標の対応拡大に取り組んでいく」と書かれていましたが、今回の改定版では明確に示されていませんでした。

2030年までに目標を達成するためには、現状を把握し、目標とのギャップ分析を行い、ロードマップを明らかにすることが必要です。その第1歩である現状把握のために、グローバル指標に関するデータ収集と分析を早急に行うことが必要だと提案しました。

<改定版 8ページ>
以上の取組を進めるに当たり、引き続き「公的統計の整備に関する基本的な計画」に従い、SDG グローバル指標への対応の拡大に取り組むとともに、同指標等のデータに 基づく進捗状況の把握・評価、政策への反映に取り組む。…

似たような意見「日本のSDGs の実施状況について、日本のターゲットの設定を行い、指標を用いたレビューを行うべき」が多数あったようで、(2)実施に当たっての取組 ①実施体制の強化・ステークホルダー間の連携において、追記されました。

5.「誰一人取り残さない」包摂社会の実現についてより具体的に記載してください。

日本において「誰一人取り残さない」ためには、社会的弱者への取り組みは重要です。それはどのような人であるかを具体的に示すことによって、どのような取り組みとなっていくのかという実践につながります。「取り残される」リスクが高く、特にケアが必要な人たちをここで記述することを提案しました。

また、現在子どもにかかわる課題は山積しています。子どもの7人に1人が貧困状態であり、児童虐待やいじめの報告件数は年々増加しています。子どもの貧困、虐待、いじめ、不登校など喫緊に対応すべき具体的な課題を明記することを提案しました。

<改定版 5ページ>
こども大綱に基づくこども施策の抜本的強化、質の高い公教育の再生、女性登用の加速化を含む女性の活躍と経済成長の好循環の実現、包摂的な共生・共助社会づくり、孤独・孤立対策推進法に基づく国・地方の孤独・孤立対策の強化等の取組を通じて、貧困や格差の拡大・固定化による社会の分断を回避し、持続可能な経済・社会の実現につなげていく。…

「貧困削減及びマイノリティへの配慮について記載するべき」という同様の意見が多数あったようで、3 実施に当たっての指針 (1)重点事項  ②「誰一人取り残さない」包摂社会の実現において、「貧困」が追記されました。


今回ACEが提出した5つの意見のほとんどについて、他からも同じ意見が多く出されていて、課題と感じた点は共通だったようです。パブリック・コメントを提出するのは、ちょっとハードルが高いように思えますし、どうせ何も変わらないと思ってしまうかもしれません。でも、今回のパブリック・コメントでは、多くの市民の声が集まれば政策に反映される可能性があることが示されました。

SDGs達成に向けた市民社会による貢献、横断的な課題としての人権の尊重とジェンダー平等、取り残されるリスクがある人たちへの対応などが追加されたことは、意義深いです。

しかし、持続可能な開発のための2030アジェンダは、「SDGsはすべての人びとの人権の実現をめざす」としていて「持続可能な開発の経済、社会、環境という三側面を調和させ、統合して取り組む」ことになっていますが、日本でSDGsを語る時、環境分野が取り上げられがちです。人権を中心に据えたSDGsの実現、特に貧困と格差の解消をめざし、SDGsのグローバル指標に基づいた現状分析と行動計画の作成と実施が必要です。

SDGs目標 8、ターゲット7に含まれる「2025年までに児童労働撤廃を」まであと2年しかありません。このターゲット達成のために、日本政府が積極的な役割を果たすよう、ACEは引き続き働きかけていきます。

これからも、みなさまのご支援・ご協力をよろしくお願いします!

世界の子どもの笑顔のため、世界を変える小さな一歩を。

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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2024.01.15