幸せへのチョコレート

ネスレが全世界のキットカットに認証カカオを使用~世界で進むサステナブルな調達、日本はどうする?~

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ネスレがキットカット80周年を記念して「全世界のキットカットにおいて、2016年の第一四半期までにすべてのカカオをサステナブルなものにする」と発表しました。すでにイギリスでは、国際フェアトレード認証マークのついたキットカットが売られていましたが、とうとう米国、そして日本にも、サステナブルなカカオが使われたチョコレートが入ってくるということになるのでしょうか。

実は「サステナブルなカカオを調達する」という動きは今に始まったことではなく、すでに多くの企業が表明してきています。ネスレ自体は、2017年までに15万トンのサステナブルなカカオ調達を表明し、MARSは2020年までに認証つきのカカオ調達を100%にするとすでに発表しています。また、日本でもイオングループが2020年までに、フェアトレード認証カカオの取引量を10倍(2012年比)の50トンまで拡大させると発表しています。第三者認証としては、例えば国際フェアトレードラベル、UTZ、レインフォレストアライアンスなど、環境や人権に配慮された環境で作られていると第三者が認証しているもので、サステナブルな調達という観点で多く利用されているのはこの3つです、ただしそれぞれの認証は制度や重点が大分違い、児童労働という観点でいうとフェアトレードが一番実際的な取り組みに力を入れていると感じています。

カカオ業界のサプライチェーン・原料調達の透明化と児童労働撤廃の動きは今に始まったことではありません。実はカカオ産業は2000年前後からのカカオ生産地の児童労働・人身売買の問題が起きて、企業で協力して実際にガーナやコートジボワールで児童労働がなくなるようなプログラム(International Cocoa Intiative)を実施するなどしてきた経緯があります。また世界の大手チョコレートメーカーがこぞって加盟している世界カカオ財団が2014年に開始した“ココアアクション”では、世界のカカオ生産量の6割近くを生産するガーナ、コートジボワールを対象に、カカオ生産地域の児童労働の数や通学している子どもの割合などをKPIとして設定しています。私たちACEも、日本に輸入されるカカオの8割の輸入元となるガーナにて、「スマイル・ガーナ プロジェクト」を実施し、カカオ産業の児童労働の撤廃に取り組んでいます。

このサステナブルな調達の流れについては、企業だけでなく、日本政府の対応も問われています。

先のロンドンオリンピックでは「持続可能な調達基準」を作り、オリンピック関連グッズ等含めそれに従うことが求められした。選手村ではフェアトレードのバナナが置いてあったそうです。さて、いろいろ問題含みの2020年の東京オリンピックに向けて、日本もそのような基準を採用するのかどうか。世界各国から来る選手・取材陣に日本のサステイナブル調達を印象づけることが出来るのか、注目が集まっています。

また、2015年6月にドイツで行われたG7サミットの首脳宣言でも「責任あるサプライチェーン」という項目があり、「安全でなく劣悪な労働条件は重大な社会的・経済的損失につながり,環境上の損害に関連する」と明記し、G7諸国の取り組み強化を求めています。
2016年6月に日本で行うサミットに、それを継承するのか、注目です。

さらに、2015年9月の国連総会で採択される「持続可能な開発目標」には17の目標のうちの一つとして「持続可能な消費と生産パターンを確実なものにする」(Goal 12. Ensure sustainable consumption and production patterns)が入ります。この採択に賛成するであろう日本国政府として、具体的にどのような対応をとるのか、また、企業、そして消費者をいかに巻き込むのか。

「持続可能な調達・消費・生産」に向けて、政府、企業、消費者の行動すべての責任が問われる時代になってきています。

ACE代表 岩附由香

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  • カテゴリー:お知らせ
  • 投稿日:2015.09.04