幸せへのチョコレート

国全体での児童労働撤廃をめざしたガーナ政府との連携

2009年にガーナのカカオ生産地で活動を始めてからこれまでに、12のコミュニティ(村)と103の小集落で活動を展開。622人の子どもたちを児童労働から守り、約4,500人の子どもたちの教育環境の改善を実現することができました(2023年12月までの実績)。

現地で活動を実施するだけでなく、国際会議等への参加を通じて、コミュニティでの活動経験や学びを国際レベルで発信、共有し、国際社会や各国政府、活動国の自治体への提言も行っています。2018年からは、ガーナ政府が国家計画の一部として推進する「児童労働フリーゾーン」認定制度の構築や普及・改善を支援、推進しています。

ガーナ政府が進める「児童労働フリーゾーン」認定制度とは

「児童労働フリーゾーン(Child Labour Free Zones:CLFZ)」認定制度とは、児童労働を予防・是正する仕組みが整備され、一定の要件を満たした地域(複数のコミュニティから成るゾーン)を「児童労働フリーゾーン」として認定する制度で、ガーナ政府が策定しました。

認定要件には、住民が児童労働について適切に理解していること、子どもの保護に関する条例が制定されていること、児童労働をモニタリングし是正するシステムが機能していること、学校環境が整備されていること、自治体による支援体制が整備されていることなど、全部で25項目が定められています。

ガーナ政府は、これら認定要件や認定審査に関する手続き等を定めた「児童労働フリーゾーン構築のためのガイドライン」(以下、CLFZガイドライン)を2020年3月に発行し、2023年8月に改訂しました。

ACEがガーナ政府と連携するまで

カカオ産業の児童労働については、カカオ生産国の政府とチョコレート消費国の政府が協力して取り組みを進める枠組みが2010年以降、構築されていました。コートジボワールとガーナの政府、米国労働省、チョコレート業界を代表する立場としての世界カカオ財団(チョコレート、カカオに関わる業界組織)により構成される「カカオ産業の児童労働撤廃に向けた調整グループ(CLCCG)」です。政府と業界代表者による本会合と、関係者以外のNGO等も参加するステークホルダー会合が毎年招待制で開催されており、2017年からはACEも招待されるようになりました。

そして、CLCCGの本会合がコートジボワールで開催された2018年に、政府代表団の前でACEのガーナでの経験を発表する機会に恵まれました。それまで進めてきた「スマイル・ガーナ プロジェクト」の経験や、プロジェクトを実施してきたコミュニティを束ねて「児童労働フリー」のカカオを生産するエリアを構築する構想などを発表しました。

その会議に参加して分かったことは、ガーナ政府が策定した「児童労働撤廃に向けた国家計画(フェーズ2)」が同時期に発表され、その中に「児童労働フリーゾーン」を構築するためのガイドラインを策定する計画があることでした。

コートジボワール、ガーナそれぞれで活動を行うNGOから発表を行いました。 会場からの質問に答えているところ

CLCCGの本会合で発表するACE副代表 白木(写真右)

 

こうして、CLCCGの会議終了後にガーナに行って雇用労働関係大臣と面会し、「児童労働フリーゾーン」の仕組みづくりを連携して進めることを提案したところ意気投合し、具体的な動きがスタートしました。

その後、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社の協力を得て、2018年11月から2020年3月までに、ガーナ政府の専門作業部会の会議や複数回のコンサルテーション会合を開催しながら、「CLFZガイドライン」の策定を進め、2020年3月のガーナ政府によるガイドラインの発行が実現しました。

ガイドラインの策定には、ACEがカカオ生産地域で実施してきた「スマイル・ガーナ プロジェクト」の経験だけでなく、ガーナ農業労働者組合(GAWU)の漁業地域での経験や、国際労働機関(ILO)の小規模鉱山プロジェクトでの経験が統合されており、特定の産業に留まらず、ガーナ国内のあらゆるセクターや種類の児童労働を撤廃していくための指針となっています。

作業部会のメンバー

ガーナ政府の専門作業部会のメンバー(前列右から2番目がACE 白木)

CLFZガイドライン裏表紙(画像右)にはACEのロゴが掲載されている

詳しくはこちら

【ガーナ便り】発効に向けた、最後の全国会議を開催!チャイルドレイバー・フリー・ゾーン認定制度、いよいよ大詰めです!

【ガーナ便り】「チャイルドレイバー・フリー・ゾーン設立のためのガイドライン文書」が、ついに発効となりました!

ACEが「児童労働フリーゾーン」を推進する理由

「スマイル・ガーナ プロジェクト」では、対象となる地域の人たちの力を活かして、カカオ農園の見回りや家庭訪問をするなどして児童労働をしている子どもやその危険のある子どもを特定し、教育を支援します。実は、「スマイル・ガーナ プロジェクト」も、ガーナで進める「児童労働フリーゾーン」も、「エリアベース・アプローチ」を採用しています。

エリアベース・アプローチ(Area-based approach)とは、「地域」全体で取り組みを進める方法です。保護者や学校の先生、コミュニティのリーダー、労働現場の関係者など、子どもに関わる人々みんなの力を活かし、子どもを児童労働から守り、教育を受けられるように学習環境を充実させ、児童労働をせざるを得ない状況の家庭に寄り添いながら、行政の支援や外部介入支援に結び付け、子どもの権利が守られる地域を作っていくアプローチです。

子ども保護委員会メンバーの写真

「スマイル ガーナ・プロジェクト」の住民ボランティアグループ。地域のおとなが協力して子どもを児童労働から守る。

 

カカオ産業による児童労働については、グローバルなチョコレート企業や業界による様々な取り組みが進められてきましたが、CLCCGが目標としていた「2020年までにカカオ生産での児童労働を70%減らす(2010年当時との比較)」ことは実現できませんでした。そこには、企業による「サプライチェーン・アプローチ」の限界があると考えています。

多くの企業は、自社の調達地のみに対象を絞って児童労働を予防・是正するためのモニタリングシステムを構築するアプローチで取り組みを進めてきましたが、サプライチェーン全体にそのシステムが行き渡っているわけではなく、介入の持続性や効果は非常に限定的だということが複数の調査で示されました。

カカオ・チョコレート業界で指摘されている課題

今ではどの企業も、そのようなモニタリング・是正システムをサプライチェーン全体に広げることをめざしていますが、それでも仮にあるコミュニティでカカオ農園での児童労働にのみ対象を絞って取り組みが行われた場合、子どもたちがカカオ農園で働くのをやめたとしても、代わりに同じ地域にある小規模鉱山で働くことになったとしたら、児童労働が解決されたとはいえません。

また児童労働の問題を解決するためには、子どもの家庭、地域の学校、地域の産業など、あらゆる側面へのテコ入れが必要であり、地域の行政や政府と連携することが不可欠であることが認識されるようになってきました。サプライチェーンを重視した取り組みも一定の効果を上げていますが、特定のサプライチェーン上での児童労働がなくなればよいということではなく、地域に目を向けて、児童労働を予防し解決していく仕組みを地域の人たちと作っていくことが重要であると考えています。

日本の政府機関とも連携して進めています

2020年3月のガーナ政府による「CLFZガイドライン」発行のタイミングで、日本の政府開発援助(ODA)の実施機関である国際協力機構(JICA)も、CLFZ制度の構築と普及を後押しするようになりました。2020~2022年には「ガーナ共和国カカオ・セクターを中心とした児童労働に係る情報収集・確認調査」が実施され、この事業をACEが受託しました。

本調査事業では、児童労働に関する世界的動向やガーナにおける支援動向、カカオ産業の関係者等による取り組み動向を調査したほか、CLFZガイドラインの実行可能性を検証するパイロット活動を、ガーナの2つの自治体(郡)で実施しました。この調査の結果は、日本語と英語でレポートにまとめていますので、ご関心のある方はぜひご覧ください(下記リンクを参照)。

上記のJICA委託の調査事業終了後も、CLFZガイドラインの改訂作業のフォローアップ支援や、ガーナ政府の児童労働撤廃に向けた国家計画(フェーズ3)の策定にかかるコンサルテーションに参加するなど、CLFZ制度の構築と普及が国家施策として今後も強化されていくように支援を続けています。

2024年には、JICAによる「児童労働フリーゾーンを通じた子どもの保護主流化プロジェクト」が新たに始まりますが、これをACEがアイ・シー・ネット株式会社とデロイト トーマツ コンサルティング合同会社との共同で実施することが決まりました。今後も、ガーナ政府が推進する「児童労働フリーゾーン」認定制度を通じて、カカオ生産における児童労働撤廃に向けた政府や企業、NGOなどのマルチセクターによる取り組みを推進していきます。

JICA調査事業のファイナルレポート(日本語、英語)

ACEがJICAから受託した「ガーナ共和国カカオ・セクターを中心とした児童労働に係る情報収集・確認調査」の報告書です。児童労働の国際的な現状と傾向、ガーナにおける児童労働の現状と国の取組、他国政府による援助(ODAなど)や介入支援の動向、カカオ産業における児童労働の現状と支援動向などを網羅的にまとめています。

JICA図書館ポータルサイト|「ガーナ共和国カカオ・セクターを中心とした児童労働に係る情報収集・確認調査ファイナル・レポート」(和文)

Data Collection Survey on Child Labour and Support for Child Labour Free Zone Pilot Activities with a Focus on the Cocoa Region in the Republic of Ghana – Final Report(英文) 

※英語のレポートの添付資料には、パイロット活動で使用した研修教材なども添付しています。

関連する過去の活動報告

【報告】ガーナの児童労働フリーゾーンに関する調査報告書が完成、公開となりました(2022.11.07)

【開催報告】ガーナの児童労働フリーゾーンに関する調査 報告セミナー(2022.08.24)

第5回児童労働撤廃世界会議でサイドイベントを共催しました(2022.06.30)

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