公園の黄色いテープ | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)

児童労働のない未来へ-NPO 法人ACE代表 岩附由香のブログ(single-blog)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年1月20日

公園の黄色いテープ

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緊急事態宣言が再び発令され、前回の経験を思い出す。昨年四月、感染拡大を受け、自宅のあるインドから日本に緊急帰国し、二週間の自宅待機期間を都内で過ごした。当時七歳と五歳の娘たちは「外に出たいよぅ」と訴えたが、インドの学校のオンライン授業もあり、なんとかやり過ごした。

我慢の二週間が過ぎ「やっと外に出られる」と向かった公園。仮住まいは区境にあり、遊具がテープで巻かれ、使えない公園がある一方、渋谷区側の公園は「人との間隔をとりましょう」というポスターが掲示され、遊具を使うことができた。

そのうち、そのポスターは、二㍍の距離を矢印で実際に示す横長の垂れ幕に変わった。そう、その公園のメインユーザーは未就学の子どもたち。字も読めないし「二メートル」と言葉で言われてもその長さを実感できない。子どもたちのことを考え、理解できるよう伝える努力に感心した。

 国連子どもの権利条約には「遊ぶ権利」も明記されている。感染予防を徹底するなら、遊具よりよっぽど密な満員の通勤電車に、なぜテープを巻かないのか。あの公園の黄色いテープに「経済優先」という大人の都合が透けて見え、子どもの利益はいつも後回しだと落胆したのを思い出す。今回の緊急事態宣言下はどうか。子どもたちの声を真剣に受け止め、子どもにとって最善の利益を考える行政を望む。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年1月19日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

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