ウッタル・プラデシュ州支援報告
ウッタル・プラデシュ州支援報告
2005年を支援を開始したウッタル・プラデシュ州メーラット県の1村での活動が2006年5月31日に終了しました。
パートナー団体のBBAからの報告と、2006年9月にACE初となるスタディツアーを通じて訪問したときの様子と合わせて、村の変化についてご報告します。
この村への支援は、2004年に開催した第2回ACEチャリティフットサル大会の収益とチャイルドフレンドリー募金を活用させていただきました。ご協力いただいたみなさん、ありがとうございました。
「子どもにやさしい村」プロジェクトで支援した村の概要
- 場所
- ウッタル・プラデシュ州メーラット県(デリーから車で約3時間)
- 総人口
- 12,488人(うち就学年齢の子ども6,488人)
- 主な産業
- 農業
- 各世帯の平均収入
- 約30ルピー(約75円)/日
- 学校に行かずに働いていた児童労働者
- 83人(男子52人、女子31人)※プロジェクト実施前
- 学校に行きながら働いていた子ども
- 386人(男子196人、女子168人)※プロジェクト実施前
- 児童労働の状況
- 家計を助けるために、日常的にクリケットボールやサッカーボールを縫い合わせる仕事やTシャツにビーズや刺繍を縫い付ける仕事を行っていた。
これまでの活動と村の主な変化
子どもにやさしい村の第一歩~子どもたちを学校へ
村では、活動家や村人たちの呼びかけにより、学校に行かずに働いていていた83人の子どもたちが学校へ通うようになりました。学校に通いながら働いていた386人の子どもたちも定期的に学校に通うようになりました。
学校には教室と先生が増えました
村人たちの中で、子どもの教育に対する意識が高まり、住民が質の高い教育を求めるようになりました。その結果、以前は4つしか教室がなかった小学校に新しく教室が4つ作られ、教員も5人から9人に増えました。
子ども村議会を通じて子どもの声を村のおとなに届けています
「子どもにやさしい村」プロジェクトでは、村に「子ども村議会」を作り、子どもたちの問題解決や村の開発に子どもたちの意見を反映させる仕組みを作っています。
子どもたちは選挙を行い、児童労働をしていた女の子を含む6人の子どもたちが子ども村議員に選ばれました。
子ども村議員は毎月1回会議を開き、教育や村の開発における問題について話し合っています。子ども村議会で話し合われた内容は毎月1回開かれるおとなの村議会に届けられています。新しい教室が作られたり、先生が増えたのも子どもたちの提案によるものです。
おとなたちの自助グループづくり
「子どもにやさしい村」づくりには、おとなたちのネットワークを作ることも大切です。村の子どもの教育に熱心な男女127人が参加して、青年グループや地区委員会、自助グループを作りました。
自助グループとは、収入向上など同じ目的を持つ人たちが集まり、困った時は共同で助け合うための仕組みのことです。自助グループを通じて貯蓄を行い、急な支出が必要な時にお金を借りることができたり、共同で新しい事業を起こしたりしています。
村では教育委員会も組織され、子どもたちがちゃんと毎日学校に通うようにモニタリングを行うようになりました。貧しい家庭の子どもが児童労働に逆戻りせず、継続して学校に通うように促しています。
村人たちが協力しあい政府の支援制度を活用して村の環境を改善
村では、サッカーボールの生産技術を持っているため、政府の支援制度(Swarna Jayanti Swayam Rozgar Yojana/the Golden Jubilee Self Employment Scheme)が活用でき、サッカーボール製造を自助グループの事業として立ち上げました。
また、道路や下水などの整備も進んでいます。
今後は地域の農村開発局の指導を受けながら、青年グループが中心となって事業の育成をしていきます。
村の情報が集まるコミュニティーセンターができました
コミュニティーセンターでは、子ども村議会や女性グループなどのミーティングが行われるようになりました。情報センターも設けられ、法律や政府の各種補助制度などについての情報を閲覧できるようになっています。
その他の波及効果
村の青年の声
子どもにやさしい村の取り組みを始めてから、村に情報が集まってくるようになりました。以前はサトウキビなどを安い値段で売っていましたが、適正な値段で売ることができるようになりました。
NGOスタッフの話
ウッタル・プラデシュ州の農村開発プログラムの対象地域にこの村が選ばれました。インフラ整備が遅れていること、遠隔地に位置すること、指定カースト・部族の割合が大きいことなどが選定基準となっています。村の開発における住民の貢献度や村議会の積極性、村長が女性で女性の参加度が高いことなどが評価されました。今後農村開発における行政の支援が受けやすくなったことは大きな成果です。
プロジェクト終了報告書より
隣村の住民の代表者たちが村を訪れ「子どもにやさしい村」の取り組みについて視察しました。後日その村の村長からこの村の活動家の元に感謝状が届き、自分の村でもこの取り組みを行いたいとの希望が伝えられました。その他の村からも同様のリクエストが届き、周辺の村への効果が広がっています。
今後の課題
- 村の中にはまだこの活動に参加していない住民もたくさんいるため、さまざまな効果を持続させ、村の改善を進めていくためには、今後もこの活動に協力する人をもっと増やしていくことが課題となっています。(女性村長)
- 村には中学校までしかないため、進学のチャンスは限られています。村に高校や大学も作りたいと思っています。(子ども村議会議長:10歳)
- 下水が整えられたのはごく一部で、不衛生な水溜りはポリオなどの病気の原因になっています。今後も村の衛生環境は改善する必要があり、特にすべての家庭にトイレを作ることに取り組んでいきたいというのが村の人たちの要望です。(村の開発委員会の男性)
- 村の人口の60%以上が指定カーストや部族で貧困層が多く、収入源の確保が課題となっています。かつて有力者が安い値段で売ってしまった土地を取り戻すなど、さまざまな手段で取り組む必要があります。(村の青年活動家)
村を訪ねた時の写真をGoogle+のフォトアルバムに載せました。ぜひご覧ください
ACE初のインド・スタディツアーのメンバーを村人たちは歓迎してくれました!
世界の子どもの笑顔のため、世界を変える小さな一歩を。
- カテゴリー:子ども・若者支援
- 投稿日:2006.10.06