【ガーナ便り】チャイルドレイバー・フリー・ゾーン認定制度づくりに向けた大きな一歩を踏み出しました! | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)

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【ガーナ便り】チャイルドレイバー・フリー・ゾーン認定制度づくりに向けた大きな一歩を踏み出しました!

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みなさん、こんにちは。ACE事務局長の白木朋子です。 いつもACEへの温かいご支援をありがとうございます。

2018年11月29日、ガーナでまた新たな一歩を踏み出すことができました。ガーナにおける「『チャイルドレイバー・フリー・ゾーン(児童労働のない地域)認定制度(仮)』の創設」に向けた、第1回ナショナルステークホルダーダイアログ(国内関係者会合)を、ガーナの雇用労働省(MELR)とガーナ農業労働者組合(GAWU)、ACEの現地パートナー団体CRADAと共同で開催したのです。

ガーナ第二の都市クマシ市内のホテルの会議場には、様々なバックグランドから80名もの参加者が集まりました。ガーナ中央政府からは雇用労働省の事務次官ルドルフ・クゼー氏のほか、雇用労働省の児童労働ユニットの関係者、教育省、社会福祉省、ガーナココボード(カカオ協会)からの代表者が、開催地であるクマシ市が属するアシャンティ州からは副知事と伝統的首長が、ACEが2009年から活動を行ってきた8つの村が属するアチュマ・ンプニュア郡からは郡知事、郡議会議員、郡の教育局、保健局、社会福祉・開発局からの代表者が、その他、ILOガーナ事務所やガーナ農業労働者組合(GAWU)の関係者、国際ココアイニシアチブ(ICI)、ウィンロック、ワールドビジョン、UTZ、セーブ・ザ・チルドレン(米国)などのNGO、クアパココ、バリーカレボ―などカカオ・チョコレート関連企業の児童労働プログラム担当者、メディア関係者など、幅広いステークホルダーが集まりました。

そして何よりも、ACEが2009年から活動を行ってきた8つの村より、伝統的首長(村長)、学校長、子ども保護委員会(CCPC)のメンバー、カカオ農家の代表者、子どもの代表者である中学生を含む17名が、村からの代表団を構成して参加しました。

来賓および主催者代表者一同

来賓および主催者代表者一同

 

「チャイルドレイバーフリーゾーン(児童労働のない地域)」を国全体に広げるために

今回の会議のテーマである「『チャイルドレイバー・フリー・ゾーン(児童労働のない地域)認定制度(仮)』の創設」は、2017年6月にガーナ雇用労働省が発表した、「ガーナにおける最悪の形態の児童労働撤廃に向けた国家行動計画フェーズII 2017-2021(NPA2)」の戦略のひとつで、「チャイルドレイバー・フリー・ゾーン」を政府が認定する制度を作り、それを国全体に広げることで、児童労働を撤廃していくことをめざすものです。

今回の会議は、児童労働問題に関係する国内のあらゆる関係者が顔を合わせて、好事例からの経験を学び合い、制度づくりのための議論をスタートさせることが目的でした。

この会議の議長を務めたアシャンティ州の伝統的首長が開会を宣言

デロイト トーマツ コンサルティング小野さんからもご挨拶

会議のオープニングは、この会議の議長であるアシャンティ州の伝統的首長の開会宣言から始まり、来賓挨拶や、今回の会議のスポンサーである日本のデロイト トーマツ コンサルティング合同会社、会議を共催する農業労働者組合(GAWU)、ACEの挨拶へと続きました。そして、元児童労働者の証言として、スマイル・ガーナ プロジェクトの村から参加した中学1年生のクワメくん(仮名)が、インタビュー形式で話してくれました。

ガーナ農業労働者組合(GAWU)のアンドリュー・タゴー氏

児童労働をしていた時のことを話すクワメくん(仮名)

オープニングの最後は、イグナチウス・アウア雇用労働大臣の代理として出席したクゼー事務次官が挨拶をし、大臣のスピーチを代読しました。クゼー事務次官は挨拶の中で、児童労働の撤廃はアウア大臣および雇用労働関係省にとって最重要課題のひとつであることを強調するとともに、今回のこのような会議の開催に至ったのは、今年7月にコートジボワールのアビジャンで開催されたCLCCG(カカオ産業の児童労働撤廃に向けたコーディネーティンググループ)の会議で、ACEの発表を聞いたことが発端であったと言及しました。「ガーナのためにすばらしい活動をしてきてくれた」と、ACEやACEとともに協働してくれた方々への感謝を示してくださいました。

アウア雇用労働大臣のスピーチを代読する事務次官クゼー氏

スピーチに耳を傾ける来賓、主催者代表者

アウア雇用労働大臣のスピーチでは、「世界全体で児童労働者数が減少している一方で、アフリカ地域においては子どもの5人に1人が児童労働している状況である」こと、「ガーナにおいても、5-17歳の子どもの約198万人、子どもの約22%が児童労働者である」ことを挙げ、児童労働が国としての重要課題である根拠はすでに十分あるとの見解を示しました。児童労働の問題は、子ども、家族、国、世界に対しての脅威であり、市民社会組織、宗教組織、民間セクター、国際機関、政府などが協働で取り組まなければならないと述べました。

オープニングの後は、雇用労働省の児童労働ユニット・マネージャーであるエリザベス・アカンボンバイア氏が、NPA2の概要を説明したのち、テクニカル作業部会の部会長を務めるILOガーナ事務所のクワメ・メンサ氏が、「『チャイルドレイバー・フリー・ゾーン(児童労働のない地域)認定制度(仮)』の素案について発表。素案に対しては、専門家からのコメントということで、ICI、ウィンロック、セーブ・ザ・チルドレン(米国)、ガーナココボードに続き、ACEからのコメントも発表しました。

ILOガーナ事務所メンサ氏の発表に聞き入る参加者

専門的視点からのコメント

好事例の共有とグループディスカッション

午後のプログラムでは、「チャイルドレイバー・フリー・ゾーン」を作ることをめざした取り組み事例を学びあうために、農業労働者組合(GAWU)よりガーナ東部の漁業地域での事例と、ACEより、スマイル・ガーナ プロジェクトの事例発表を行いました。発表後の質疑応答では、参加者より、「日本のNGO、ACEに期待することとして、ガーナからカカオを輸入して日本でチョコレートを作ることもよいが、アチュマ・ンプニュア郡内にカカオの加工工場を作り、ガーナ国内でチョコレートを製造し、より付加価値をつけて海外へ販売できるようにしてほしい」とのコメントや、「2つの事例における課題と教訓は何か」などの質問がありました。 

漁業地域での事例を発表するGAWU

プロジェクトの発表を行うACE白木

その後のグループワークでは、参加者全員が3つのグループに分かれ、認定制度における基準やプロセス、認定方法などについて、各グループのお題についてのディスカッションを行いました。あるグループでは、クゼー事務次官とスマイル・ガーナ プロジェクトのコミュニティから来ていたカカオ農家のリーダーや子ども保護委員会(CCPC)メンバーの女性が同じ机を囲んで意見交換する姿があり、事務次官がコミュニティの人々の声にしっかりと耳を傾けている様子が印象的でした。当初は雇用労働大臣が参加する予定でしたが、緊急の閣僚会議が入ったとのことで来られなくなったのは残念ではありましたが、事務次官が午後のワークショップまで終日のプログラムに参加してくれました。

グループディスカッションの様子

グループディスカッションの内容を全体に共有

最後は、雇用労働省の事務次官クゼー氏がクロージングのスピーチを行い、会議に参加したすべての参加者が、1日の終わりまで長い時間をかけた議論に最後まで熱を失わずに参加したことや、この会議の準備を重ねてきた人たちの努力をねぎらいました。事務次官は、「自分にとってもたくさんの学びがある会であった。特にコミュニティの人たちからたくさんのことを学んだ。感謝したい。今日わかったことは、すべての人が同じ思いを共有し、ともに最前線で戦っているということ。今日一日、時間をかけて話し合ったが、誰ひとり『やり切った、これで終わり』と思っている人はいない。今日と同じ熱意とコミットメントを持ち続けることを願っている」と締めくくりました。

会議を終えて

児童労働を経験した子ども本人や厳しい状況に置かれているカカオ農家、コミュニティの人々から、NGO、企業、自治体のトップや中央省庁のトップまでが同じ場所に集まって話し合う会議は、ガーナ国内でも珍しいとのことです。特に政府の重要人物がプログラムの最後まで参加することはまれなそうで、会議に参加した人たちが最後までエネルギーを切らすことなく熱心に議論していた姿がとても印象的でした。

コミュニティから参加したカカオ農家も発言

質疑応答で、村の校長先生も質問

ACEとしては、子どもや村の住民の声を政府の関係者や、国家計画の実行に力を持った人たちに直接届けることがひとつの目標だったため、それは実現できたのではないかと思います。また、「チャイルドレイバー・フリー・ゾーン制度の創設」というテーマでの国レベルの会議は、ガーナ国内はもちろん西アフリカ地域でも初、世界的に見ても先進的であり、そのような歴史的な日をガーナの人たちと一緒に作り上げることができたことは本当に光栄でした。

2008年にガーナで調査をはじめ、スマイル・ガーナ プロジェクトをスタートさせてから、およそ10年の歳月が過ぎました。こうして政府との協働の取り組みを実現させることができたのも、これまでチョコ募金やチョコレートの購入等でご支援をいただいたみなさまのおかげです。本当にありがとうございます!

今回の会議の開催にあたっては、日本のデロイト トーマツ コンサルティング合同会社様にご支援をいただき、はるばる日本から2名の方が会議にもご参加くださいました。この場をお借りして深く御礼を申し上げます。

参加者全員で集合写真

参加者全員で集合写真

今回の会議を準備・運営してきたガーナと日本の合同チーム全員で

今回の会議を準備・運営してきたガーナと日本の合同チーム全員で

今回の会議はあくまでもスタート。これから、今回の議論をもとに制度そのものを正式に作り上げ、国全体に広げていくためには、まだまだたくさんの作業が必要になります。また制度が完成した暁には、ACEのスマイル・ガーナ プロジェクトの地域が認定を受けるためのプロセスも進めていきます。これまでの私たちの経験が一部の地域にとどまることなく、国全体へと広がり、ガーナが将来的に「児童労働のない国」となることをめざして、これからもガーナ、日本の合同チームで取り組みを継続していきたいと思います。

ACEの取り組みは、多くの方々のご寄付やご協賛により支えられています。これからも活動を継続できるよう、ご支援のほどどうぞよろしくお願いいたします。

2018年12月3日 事務局長 白木朋子

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  • カテゴリー:お知らせ
  • 投稿日:2018.12.03