【開催報告】5/11 世界フェアトレード・デーにSDGsを考えよう!~オーガニック&フェアトレードコットンの現場から~

【開催報告】5/11 世界フェアトレード・デーにSDGsを考えよう!~オーガニック&フェアトレードコットンの現場から~

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「世界フェアトレード・デー」である2019年5月11日(土)に、聖心グローバルプラザ(東京)にて、環境や人権などに配慮したサステナブルな繊維産業の普及活動を行う団体「テキスタイル・エクスチェンジ」、オーガニックコットンのウェアを中心としたフェアトレードファッションの世界的パイオニア「ピープルツリー」、コットン生産地から児童労働をなくすために取り組む「認定NPO法人ACE」3者共催で「世界フェアトレード・デーにSDGsを考えよう!~オーガニック&フェアトレードコットンの現場から~」を開催しました。

イベントの様子

来場者全員で児童労働にレッドカード!

 

当日の参加者は200名を超え、出展者もあわせて総勢250名が参加しました。特に学生の方々に多く参加いただき、次世代のエシカル消費に対する期待・熱意を感じました。また、会場にはフェアトレードやオーガニックコットンの製品の販売ブースを設け、参加者の皆さんにはイベントの合間に出展者と交流しながらお買い物を楽しんでいただきました。

参加者の様子
販売の様子
販売ブースの様子

前半:トークセッション

イベントの前半では、オーガニックコットンやフェアトレードに携わっている4つの団体から4名の登壇者を迎え、各団体の取り組みの内容や、現場で実際に起きていること、日々感じている課題についてそれぞれの異なる立場から伝えていただきました。(以下、トーク概要)

講演:「コットン畑で何が起こっているの?~農家の経験から~」

テキスタイル・エクスチェンジ代表 ラレー・ペッパーさん ラレー・ペッパーさん

私はアメリカ・テキサス州でオーガニック農家をしています。この農園は私のおじいさんから引き継ぎました。私が代表を務める「テキスタイル・エクスチェンジ」には現在320の企業が参加しており、企業活動を通してオーガニックコットンを始めとしたサステナブルなテキスタイルの普及活動を行い、世の中の変革に取り組んでいます。

オーガニック農法は環境や人にダメージを与えないどころか、むしろ積極的に土や自然を癒していくため、農園で働く大人や周囲で遊ぶ子どもたち、他の動植物にとっても安全であるなど、コミュニティーに多くの利益をもたらしています。農家がオーガニックに移行することを支援するために、テキスタイル・エクスチェンジのウェブサイトではオーガニックの農家に移行するためのロードマップを公開しています。

詳しくはこちら(テキスタイル・エクスチェンジのウェブサイトへ)

現在、オーガニックコットン農家の72%がオーガニックに移行した恩恵を受けたと感じており、ますます多くのブランドが参加しています。農家や企業だけではなく、私たち消費者ひとりひとりにもできることがあります。「どんなものを着るか?(オーガニックの服を着るか、そうでない服を着るか)」という毎日の選択が、世の中に影響を与え、少しずつ変化を生み出していきます。

発表:「児童労働のないコットンを目指して」

認定NPO法人ACE インド プロジェクトマネージャー 田柳優子

ACE田柳優子ACEはインドのコットン生産地とガーナのカカオ生産地で児童労働から子どもを守る活動をしています。これまでに2,285人の子どもを児童労働から解放して教育につなげ、13,000人の子どもの教育環境を改善してきました。SDGs(持続可能な開発目標)のゴール8、ターゲット7では「2025年までにあらゆる形態の児童労働をなくすこと」が目標となっており、ACEもこの達成に貢献すべく活動を行っています。

児童労働の7割は農業・漁業分野で発生し、コットンの生産現場でも児童労働が問題になっています。コットンの生産現場では除草作業、水運び、交配作業、収穫などが児童労働によって行われています。ACEはインドのコットン生産地での支援活動を2010年から始め、3つの村から児童労働をなくすことができました。

児童労働をなくすためには、児童労働を生み出す構造自体を変える必要があり、そのためには先進国のビジネスが変わる必要性があると考えています。インドの児童労働がなくなった村で栽培されたオーガニックコットンを製品化し、製品の代金の一部が児童労働をなくす活動への寄付になる仕組みづくりを目指し、興和株式会社と「Peace India Cotton」の取り組みを行っています。

発表:「サステナブルなコットンとは」

テキスタイル・エクスチェンジ理事 稲垣 貢哉さん

稲垣 貢哉さんテキスタイル・エクスチェンジは、企業が少しでも環境に良い繊維を使うことで環境への害を減らしてくために、綿だけではなくウールやダウン等でもサステナブルな繊維の普及活動を行っています。中でも綿は、その中核を担う繊維です。インドはコットンの生産量が世界一です。世界の64か国で綿花が栽培されており、総生産量は2300万トン、1ヘクタールあたり788kgの生産量です。この数値はオーガニックで達成できると思っています。

テキスタイル・エクスチェンジでは、「プリファード(好ましい)・コットン」の普及を進めています。「プリファード・コットン」には以下のような種類があります

① オーガニック
② フェアトレード 
③ コットン・メイドイン・アフリカ(Cotton made in Africa=CmiA) 
④ ベター・コットン(BCI: Better Cotton Initiative)

現在、この4つがコットンの全生産量の18%を占めていますが、そのうちオーガニックコットンは世界のコットン生産量のわずか0.5%、フェアトレードコットンはさらに少ない割合となっています。その理由として、価格が高いことや需要が少ないことが挙げられます。テキスタイル・エクスチェンジでは、CmiA(Cotton made in Africa)の生産農家に対し、オーガニックやフェアトレードのコットンに変換していくように呼びかけています。BCI(Better Cotton Initiative)の生産量は年々伸びており、全体の綿花生産の15%を占めています。

現在、テキスタイル・エクスチェンジが目標としている「2025年までに100%サステナブルな綿の調達」を目指すことを宣言した企業が39社あり、こういった企業と取り組みを進めています。

講演:「作り手から買い手までをつなぐビジネスの挑戦」

ピープルツリー(フェアトレードカンパニー株式会社)代表取締役社長 ミニー・ジェームズさん

ミニー・ジェームスさんピープルツリー創業のきっかけは、私が初めて日本に来た時に感じた過剰消費への違和感でした。イギリスでフェアトレードに触れていた私は、まずは日本での情報発信から始めました。そして少しずつ、フェアトレードの商品を海外から仕入れてはアースデイやFUJI ROCK FESTIVAL等にブースを出展してフェアトレードを紹介・販売し、広めていきました。

2013年におこったバングラデシュの縫製工場が入ったビル「ラナプラザ」の崩壊事故は、1100人以上の死者、2500人以上の負傷者を出した大惨事となり、ファッション産業のもたらす負の側面を描いたドキュメンタリー映画「ザ・トゥルー・コスト」でも取り上げられ話題になりました。これをきっかけに、ファッション産業の在り方を考えるためのキャンペーンとして、「ファッション・レボリューション・デー」が2014年より国際的に展開されています。途上国にもとても豊かな伝統技術があり、農業知識も持ち合わせています。それらを現地から奪うようなことをしてはいけません。例えば手仕事は、省電力で伝統技術を生かすことができます。手編みは資本がかからず、子どもの面倒を見ながら家庭内でも生産することができます。実際にそうやって子どもを見ながら働いて、子どもの大学費用を稼いだお母さんもいます。ピープルツリーは2007年にオーガニックテキスタイルの認証を受け、認証取得のために生産者サポートも行っています。

「使う喜び」とは、「誰がどう作ったかを感じられること」です。それを消費者に伝えるとともに、デザイナーや企業とのコラボなどもおこない商品開発に力を入れています。「お買い物は投票行為」と言われます。人を搾取する商品や企業にお金を使うのではなく、フェアトレードやオーガニックにお金を使いましょう。

後半:パネルトーク 

後半は「オーガニックコットンとフェアトレードの広め方を考えよう」というテーマでおこないました。まず初めに、明治大学農学部の岡先生のゼミ生の皆さんに、“消費者の「情」に訴えかける研究”について発表いただきました。そのあと、グローバル・ヴィレッジ代表 胤森なお子さんにモデレーターを務めていただき、会場からの質問も交えながらパネルトークを行いました。パネルトークでは、フェアトレードやオーガニックの取り組みについて、生産現場から流通や消費にまつわる課題などについての話がなされ、個人として/社会としてどうしていくと良いか、SDGs(持続可能な開発目標)の達成のために何ができるか等について考える時間を持つことができました。

岡ゼミからの発表

岡ゼミでは、脳科学を用いて、オーガニックコットンに興味のない顧客へアプローチすることにチャレンジしています。「情」を揺さぶるような情報が伝達されると、脳内に「オキシトシン」という共感ホルモンが分泌され、人を助けたくなる感情がわきます。それがオーガニックコットンを買いたくなるような衝動を与えるのか、といった「情」に訴えかけるアプローチを研究しています。実際にインドへも足を運びオーガニックコットン栽培の様子を見に行くなど、フィールドワークも行っています。

岡ゼミの研究について詳しくはこちら

 

パネルトーク

*モデレーター
胤森なお子さん[グローバル・ヴィレッジ代表]

*パネリスト
ラレー・ペッパーさん[テキスタイル・エクスチェンジ 代表]
岡通太郎さん [明治大学農学部食料環境政策学科 講師]
稲垣貢哉さん[テキスタイル・エクスチェンジ 理事]
田柳優子 [認定NPO法人ACE インドプロジェクト担当]

コットンイベント_パネルトーク

生産が行われる現地での活動について

[稲垣]児童労働がなくなっても畑には農薬がたくさん残っているので、問題を改善するためにオーガニックに取り組んでいます。オーガニック認証は目的ではなくツールであって、畑の農薬をなくすことが目的です。

[田柳]ACEは現地のNGOと共に活動し、村の住民の意識が変化したので、活動した村では100%子どもが学校に行くようになりました。プロジェクト終了後も定期的に様子を見に行きフォローしています。

[ジェームズ]現地との生活習慣の違いを認識することと能力構築が重要です。
28年前は日本ではフェアトレードはどこにも知られていませんでした。一握りの変わった人がやっていた状況から一般に開かれましたが、日々どうしたら普及できるかを考えています。ワンピース1枚がサンドイッチより安いという社会ではなく、物の価値をしっかり理解して大切にする社会にしたいです。

[ペッパー]オーガニックコットンのシェアは現在0.5%ですが、今後消費・認知が上がりシェアは増えていくと思います。今の価格構造が深刻な貧困を生み出している状況を理解する必要があります。投資をすることで変化が生まれることを願っています。

[ジェームズ]消費者がいつでもほしいときに買えるようにするビジネスモデルになっているため、消費者の手に渡らない廃棄が増えています。農薬や化学肥料を使って大量生産しているからモノが安いのです。環境汚染や人の搾取は商品の対価に含まれていません。その負担を生産者が被っている現状があります。

[岡]消費者は安いものを買うことが満足なのでしょうか?経済学では同じ金額で多く買えるほうが効用が高いとされていますが、思い入れがある場合、買える数量が少ないほうが効用が高いという結果が出ています。経済学はこの辺りをクリアにしていくことが必要です。

認証に関して

[稲垣]コストが高いので大きな組織でないと認証導入は難しいのが現実です。

[ジェームズ・胤森]フェアトレード組織は小さい組織が多いが、小規模の団体がお互いチェックすることで費用を軽減するという工夫をしています。

その他

フェアトレードやオーガニックコットンを広めるためにできることとして「SNSの活用」が有効なのではないかという声が会場から多く寄せられました。SNSでの広報の例として、ACEでは6/12の国連「児童労働反対世界デー」に合わせてSNSのキャンペーンをおこないました。「児童労働にレッドカード!」と書かれたカードを掲げた写真を撮ってSNSに載せると、写真1枚ごとに寄付が寄せられる、という仕組みのキャンペーンです。こういった仕組みは特に若い人への波及力があると思う、という声があがりました。

また、登壇者からのメッセージとして、服を買うときにどうやって作られているのかを考える習慣を持つこと、よいものを選択すること、何が自分の生活を充実させるのかということを考えること、有形無形の価値に気が付くこと、消費者の声を企業に届けること、そしてここで学んだことを周りの人に広げていくことなどが語られました。

本イベントを通して、消費者のSDGs達成に向けた意識やフェアトレード、オーガニックコットンの重要性について関心を高く持っていることが伺えました。会場へ足をお運びいただいた皆さま、ありがとうございました。

本イベントは株式会社アバンティ、株式会社Control Union Japan、一般財団法人ケケン試験認証センター、興和株式会社、株式会社新藤、豊田通商株式会社、西染工株式会社、旭化成株式会社のご協賛、平成31年度独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて開催しました。

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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2019.07.17