「SDGs実施指針改定案(骨子)」に対してパブリックコメントを提出

「SDGs実施指針改定案(骨子)」に対してパブリックコメントを提出

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日本政府は、「SDGs実施指針改定案(骨子)」を2019年11月に公表し、パブリックコメントを募集しました。ACEは主に国内での取り組みや市民社会組織との連携について意見を提出しました。翌12月には、パブリックコメントとそれに対する政府の考え方をまとめた文書、続いて「SDGs実施指針改定版」が発表されました。内容を確認したところ、ACEの提言も一部取り入れられていました。

 

日本政府によるSDGsへの取り組み

持続可能な開発目標(SDGs)は、2015年に国連で採択された17の世界的な目標で、達成に向けて各国が取り組みを開始しました。日本政府も2016年に「SDGs実施指針」を策定し、2018年からアクションプランも毎年作成しています。アクションプランでは、「⑦平和と安全・安心社会の実現」の中の「子どもの安全等」で児童労働の撤廃が取り上げられています。
「SDGsアクションプラン2020」はこちらから

 

パブリックコメント提出とその結果

「SDGs実施指針」策定から約5年が経過し、改定にあたって2019年11月にパブリックコメントが募集されました。ACEが提出した意見とその結果についてご報告します。
ACEのパブリックコメントはこちらから(PDF)

1.「現状分析」において目標達成状況のデータの公開促進を提言
SDGsの各指標に関して日本の達成状況が公開されています。下記のURLのページの目標をクリックし、下にスクロールして、各ターゲットのグローバル指標の「∨」をクリックすると現状のデータを見ることができます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/index.html
「2025年までの児童労働撤廃」が含まれている目標8、ターゲット8.7、グローバル指標「児童労働者(5~17歳)の割合と数(性別、年齢別)」をご覧ください。
「現在、提供できるデータはありません」と書かれています。
他にも公表されていないデータがあり、その理由は「定義や算出方法が国際的に定まっていない指標等」と説明されています。児童労働に関してはILOが推定数を発表していますので、これには当たらないと考えられます。そこで、指標が公表されていない理由をさらに明瞭にし、ある程度の期限を設けるなど、すべての指標についてデータを公表できるようコミットメントを示してください、と提言しました。
【結果】
政府が集約した意見の欄には、ACEが提出した文章がほぼそのまま記載され、「より多くの指標の値を公表できるよう、努めてまいります」という回答がありました。「実施指針改定版」には、グローバル指標に基づいて進捗状況を把握、評価し、政策に反映していくことが追記されました。

2.「ビジョン」において双方向の学びを指摘
「国内外においてSDGsを達成することを目指す」「世界に日本の『SDGsモデル』を発信」と「改定案」に書かれていました。国内での実施による成果が「SDGs」モデル化され、国際協力に生かしていくと考えられます。そのためには、国内での目標達成のための取り組みが必要です。一方で、日本では達成度が低い分野においては、海外の先進事例から学ぶことも重要だと指摘しました。
【結果】
政府が集約した意見の欄には、関連した内容の意見と回答がありました。「実施指針改定版」では、国内実施と国際協力の両面でSDGsの達成をめざすと書かれましたが、海外から学ぶという点は取り入れられませんでした。

3.「優先課題」において開発途上国の課題だと思われがちな国内の課題への取り組み推進を提言
「あらゆる人々が活躍する社会の実現」「成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション」など8つの優先課題が示され、「すべての優先課題について国内実施と国際協力の両面が含まれる」と「改定案」に書かれていました。
しかし、「拡大版アクションプラン2019」では、優先課題⑦平和と安全・安心社会の実現における児童労働の撤廃では、日本にも児童労働が存在するにもかかわらず、国内での取り組みについては言及されていませんでした。
SDGs実施指針改定後に作成されるアクションプランでは、日本が達成できていないターゲットに関して国内での取り組みも検討し、示してほしいと提言しました。
【結果】
政府が集約した意見の欄には、関連した内容の意見と回答がありました。「実施指針改定版」では、先述したように国内外で目標達成をめざすという文章が追加され、アクションプランは実施指針に基づくということが明記されました。

4.「今後の推進体制」において各ステークホルダーの役割、体制、課題、活動の明確化を提言
「改定案」では、政府については「体制」、主なステークホルダーについては「役割」という見出しになっていて、役割、期待される事業・活動、課題などが混在して書かれているようでした。各ステークホルダーの役割、体制、課題、活動を明確に示してほしいという意見を出しました。
【結果】
政府が集約した意見の欄には、各ステークホルダーの役割などについての意見が取り上げられ、回答されていました。「実施指針改定版」では、全体に拡充された記述となっていました。

5.「今後の推進体制」においてステークホルダーの連携強化を提言
マルチステークホルダーで構成された円卓会議の見直しや体制強化の検討が「改定案」に書かれていました。しかし、円卓会議のメンバーになっている市民社会組織は全国でSDGsに取り組んでいる団体・個人の一部です。より多くの市民の意見が反映されるような方策を検討することが望ましいと意見しました。
【結果】
政府が集約した意見の欄には、関連した内容の意見があり、円卓会議の重要性を明記し、体制の充実、構成の柔軟な見直しなどを行っていくと回答されていました。「実施指針改定版」では、大きな変更は見られませんでしたが、ステークホルダーの重要性と円卓会議の体制強化が認識されている内容であると思われました。

 

今回のパブリックコメントでは、私たち市民の提言に対して政府からきちんと回答があり、
「SDGs実施指針改定版」に反映されたところもありました。少しでも声が届いたように思われました。

ACEのアドボカシーチームは、これからもパブリックコメント、国会議員への働きかけなどを通じて、世界から児童労働をなくすために活動していきます。これからも、みなさまのご支援・ご協力をよろしくお願いします。

ご参考までに、ACEが提出した意見、政府が公表した意見募集の取りまとめ結果、「SDGs実施指針改定版」を表にまとめました。ACEの意見がどのように反映されているかをご覧ください。

 

ACEが提出した意見 政府が意見をまとめた結果 「SDGs実施指針改定版」
1.目標達成状況のデータの公開促進(「現状分析」)
政府が公表している日本の達成状況では、児童労働撤廃などについて「現在、提供できるデータはありません」となっています。その理由を明瞭にし、すべての指標についてデータを公表できるようコミットメントを示してください。
(3)「現状の分析」について 項目8
「…引き続き、関係各府省の協力の下で、より多くの指標の値を公表できるよう、努めてまいります。」
2 (2)「現状の評価」 第6パラグラフ
【追記あり】
「SDGsのグローバル指標の対応拡大に取り組んでいく」 の後に、追加されました。 「…グローバル指標等のデータに基づき、SDGsの各目標の進捗状況について、把握、評価し、政策に反映するしくみづくりに取り組んでいく。」
2.双方向の学び(「ビジョン」)
日本の「SDGs」モデルを世界に発信していくためには、国内での取り組みが必要。一方で、日本では達成度が低い分野においては、海外の先進事例から学ぶことも重要。
(3)「現状の分析」について 項目3
関連した内容の意見と回答あり。
3 (1) ビジョン 第2パラグラフ
【追記あり】
「…世界に日本の『SDGs モデル』を発信しつつ、国内実施、国際協力の両面において、…2030年までに、国内外においてSDGs を達成することを目指す。」
3.開発途上国の課題だと思われがちな国内の課題への取り組み推進(「優先課題」)
日本にも児童労働が存在するにもかかわらず、「拡大版アクションプラン2019」では、国内での取り組みについては言及されていませんでした。
(3)「現状の分析」について 項目1と3
関連した内容の意見と回答あり。
3 (2)優先課題とSDGsアクションプラン 第4パラグラフ
【追記あり】
「アクションプランは、本指針に基づき、…政府が行う具体的な施策やその予算額を整理し、…策定するものである。」
4.各ステークホルダーの役割、体制、課題、活動の明確化(「今後の推進体制」)
役割、期待される事業・活動、課題などが混在して書かれているため、各ステークホルダーの役割、体制、課題、活動を明確に示してください。
(6)「今後の推進体制」について
回答なし。
5「今後の推進体制」
【全体的に記述が拡充】
政府の体制、円卓会議、主なステークホルダーの役割など、全体で約1ページ分が追記されました。
5.ステークホルダーの連携強化(「今後の推進体制」)
円卓会議のメンバーは、全国でSDGsに取り組んでいる市民社会組織の一部であるため、より多くの市民の意見が反映されるような方策を検討してください。
(6)「今後の推進体制」について 項目19
「円卓会議の体制をより充実させることや,多様なステークホルダーの声を正確かつタイムリーに反映させるため,円卓会議の構成をより柔軟に見直すことが可能となるよう検討する旨を記載しました。」
5 (2) 政府の体制 第4~6パラグラフ
【追記あり】
大きな変更はありませんが、「…今後とも積極的かつ柔軟に運用していく。」など、少し追加されていました。
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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2020.01.23