日本政府が「2030アジェンダの履行に関する自発的国家レビュー2021」(VNR)を発表~ACEがパブリック・コメントで提案した内容が反映されました~
日本政府が「2030アジェンダの履行に関する自発的国家レビュー2021」(VNR)を発表~ACEがパブリック・コメントで提案した内容が反映されました~
日本政府は、国連経済社会理事会(ECOSOC)のもと2021年7月に開催されるハイレベル政治フォーラム(HLPF)に向けて「2030アジェンダの履行に関する自発的国家レビュー2021」(VNR: Voluntary National Review)を6月に発表しました。その内容について5月初めに意見募集が行われ、ACEはパブリック・コメントを提出し、その一部が反映されました。
持続可能な開発目標(SDGs)が記載された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」には、国連加盟国それぞれが定期的に進捗状況を確認することが促されています。これは「自発的国家レビュー」(VNR: Voluntary National Review) と呼ばれていて、毎年7月に開催されるハイレベル政治フォーラム(HLPF)で取り上げられます。日本については2017年の「自発的国家レビュー」に続いて、2回目のレビューが2021年7月15日のハイレベル政治フォーラムで行われます。
日本政府が2021年6月に発表した「2030アジェンダの履行に関する自発的国家レビュー2021~ポスト・コロナ時代のSDGs達成へ向けて~」では、ACEがパブリック・コメントで提案した6点のうち4点が以下のように反映され、ACEが関わっている児童労働に対する取り組みなどについての記述が追加されました。
◆国内におけるSDGs推進のためのステークホルダーによる取り組み~労働組合の事例~
日本労働組合総連合さんの取り組みのひとつとして、市民社会との連携が紹介されています。(p35に掲載)
ひとつは、「NGO-労働組合国際協働フォーラム」で、SDGsの目標8に関して「児童労働グループ」が組合員や市民への啓発活動などを行っていること。もうひとつは、「児童労働ネットワーク」で運営委員として啓発活動や政策提言を行っていることです。ACEは「児童労働グループ」と「児童労働ネットワーク」の事務局を務めています。
*NGO-労働組合国際協働フォーラム 児童労働グループについては以下をご覧ください。
・NGO-労組国際協働フォーラム
・(動画)NGO労働組合国際協働フォーラム~コロナ禍でのSDGs実現に向けて(児童労働グループ編)~
*児童労働ネットワークについては以下をご覧ください。
・児童労働ネットワーク(CL-Net)
◆優先課題7:平和と安全・安心社会の実現における子どもに対する暴力撲滅・児童労働撤廃に関する国際協力
国際機関、NGO、民間企業などとの連携で開発途上国における最悪な形態の児童労働撤廃に取り組んでいる事例として、ガーナのカカオ産業で「児童労働フリーゾーン」設立に向けたパイロット活動をJICAの事業を通じて行っていることが追加されました。これは、ACEが受託している事業「ガーナ国カカオ・セクターを中心とした児童労働に係る情報収集・確認調査」です。(p89に掲載)
また、「児童労働撤廃国際年」(2021年)においてILOが呼びかけている「2021年アクション・プレッジ(誓い)」に応えて、厚生労働省が日本を含むアジア地域の児童労働撤廃に向けた取り組みを行うと表明したことも追加されました。ACEは2月に厚生労働省を訪問して、「2021年アクション・プレッジ(誓い)」について説明をし、2021年12月までに達成可能な具体的な行動の表明を要請しました。(p89に掲載)
*厚生労働省の「2021年アクション・プレッジ」はこちらをご覧ください
・厚生労働省「2021年児童労働撤廃国際年」について
・厚生労働省のアクション・プレッジはこちらから(英語)
◆今後の進め方
外務省のホームページ「SDGグローバル指標」では、各指標の達成状況が示されています。しかし、SDG 8.7「2025年までの児童労働撤廃」に関する指標:
Indicator 8.7.1 児童労働者(5~17歳)の割合と数(性別、年齢別)
には、「現在、提供できるデータはありません」と表示されていて、ずっと気になっていました。このようにデータが表示されていない指標は他にも少なくありません。
そこで、「SDGsが発表されて6年が経過していることを考えると、すべての指標についてのデータを公開できるように進めているという意思を示していただければと思います」という意見を提出しました。
意見募集が行われた時の日本政府の原案では、「今後の進め方」は白紙の状態でしたが、発表された「自発的国家レビュー2021」では、3ページにわたって「今後の進め方」が示されました。そのなかに、次の一文が含まれていました。(p156-7に掲載)
「SDGグローバル指標については、現在データがないためすべての指標について公表できていないことを認識し、2030年までの目標達成に向けて、進捗状況を示せるように必要な情報の収集を行うことを検討していきたい。」
ACEは機会があるごとに、日本政府に児童労働への取り組みを強化してもらうために、パブリック・コメントを提出していますが、いつも私たちの意見が反映されるわけではありません。今回は、6つのコメントのうち4つも取り入れてもらい、たいへんうれしく思っています。
一つひとつの国が、一つひとつの団体が、一人ひとりの個人が、児童労働をなくすためにアクションを起こし、連携していくことが重要だと考えています。特に、政府の動きは大きな影響力をもっていますので、これからも積極的に働きかけていきます。
これからも、皆様のご支援・ご協力をよろしくお願いします。
- カテゴリー:報告
- 投稿日:2021.07.05