ACEが市民社会グループを通じてコメントを提出した「子どもに対する暴力撲滅行動計画」が発表されました

ACEが市民社会グループを通じてコメントを提出した「子どもに対する暴力撲滅行動計画」が発表されました

Pocket
LINEで送る

内閣府、警察庁、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省で構成された関係府省庁連絡会議によって、「子どもに対する暴力撲滅行動計画」が2021年8月に発表されました。この行動計画策定の過程では、「子どもパブコメ」(インターネット調査)を通じた子どもの意見が考慮されました。ACEも「子どもに対する暴力撤廃~グローバルパートナーシップ~」(GPeVAC: Global Partnership to End Violence against Children)を推進する市民社会グループ「GPeVAC日本フォーラム」の一員として、コメントを提出しました。

なぜ「子どもに対する暴力撲滅行動計画」ができたの?

UNICEFと子どもを支援する国際NGOが中心となって、SDGs(持続可能な開発目標)のターゲット16.2「子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する」の実現を目的として「子どもに対する暴力撤廃~グローバルパートナーシップ~」(GPeVAC)が2016年7月に設立されました。

日本政府は、GPeVACのパスファインディング国(子どもへのあらゆる暴力をなくすための行動を支援すると誓約した国)となることを2018年に表明し、GPeVAC の活動に積極的に関わっています。この行動計画は、パスファインディング国として、日本国内で子どもに対する暴力をなくすために策定されました。

「子どもに対する暴力撲滅行動計画」の内容は?

優先して取り組むべき課題に、(1)虐待、(2)性的搾取等、(3)いじめ、(4)体罰、そして(5)その他としてスポーツにおける暴力と子ども・若者育成支援が設定されました。それぞれの分野において、現状と具体的な取り組みについて書かれています。そして、毎年、実施状況の評価とモニタリングを実施し、3年後の見直しの予定となっています。

外務省 報道発表「子どもに対する暴力撲滅行動計画の策定について」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press3_000564.html
・概要
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100224418.pdf
・本文
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100224422.pdf
・子ども版
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100224424.pdf

■(2)性的搾取等についてACEからのコメント

「GPeVAC日本フォーラム」は文書や会議を通して、日本政府に対して記述の修正や追加などを要望しました。ACEは、上記の5つの分野のうち主に(2)性的搾取等・性暴力についてコメントしました。

①「性的搾取」の定義について

原案では「性的搾取」が何を意味するのか、明確な定義が示されていませんでした。そこで、日本が批准している「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利条約選択議定書」やILO第182号条約「最悪の形態の児童労働条約」など、国際条約による定義を踏まえ、2016年に閣議決定された「児童の性的搾取等に係る対策に関する業務の基本方針について」に書かれている内容を参考に、「性的搾取」の定義を明記するようにコメントしました。また、「子どもに対する暴力」についても定義を示すように意見しました。
→ 「性的搾取」と「子どもに対する暴力」について定義が追加されました。

②「性的搾取」として取り上げる項目について

原案では、「性的搾取」で取り上げられている項目は、(ア)児童の性的搾取等(児童ポルノの製造や児童買春)、(イ)JKビジネスの2つで、子どもへの性的搾取を狭義に捉えている印象がありました。他にも、人身取引や子どもの商業的性的搾取には、児童買春ツアー、児童ポルノの製造・販売、ブルセラ、出会い系ビジネス、JKビジネス、AVへの出演強要などがあります。また、必ずしも営利を目的としていない裸の画像の自画撮り強要や盗撮が起こっていることも指摘しました。さらに、教員や指導者などの立場を利用した子どもへの性的搾取について、数多く報道されていることから、この行動計画で取り上げる必要があるとコメントしました。
→ 「人身取引」が項目として追加されたのみでした。

③被害者への支援

原案では、被害にあった子どもへの支援について触れられていませんでした。被害者すべてが適切な保護とケアを受けられるように、包括的な支援策が必要であること、そして加害者についての情報の収集、分析、厳罰化、加害者への更生教育の必要性についても、言及するようにコメントしました。
→ 「被害者の支援の充実、加害者対策、教育・啓発の強化に取り組んでいく。」という一文が追加されました。

④被害者数

原案の「現状」ところでは、いわゆる「福祉犯」の検挙人員の数だけで、被害者数は示されていませんでした。児童買春、児童ポルノ、人身取引の被害者数(20歳未満)は公表されていて、増加傾向にあります。また、子どもが低年齢であるほど、被害にあっているという認識がなかったり、子ども自身が被害を訴えることが難しかったりすることを考えると、実際の被害者数はさらに多いと考えられることを追加するようにコメントしました。
→ 被害者数のデータの提示も、文章の追加もありませんでした。

他にも、ACEが提出した5ページにわたるコメントの中には、反映されたもの/反映されなかったものがありました。政府の担当者の方々には、丁寧に意見を拾い上げ、検討していたき感謝しています。

「最悪の形態の児童労働」には、児童ポルノ、児童買春、人身取引が含まれます。SNSの普及によって、これまでになかったような方法で子どもが「性的搾取」や「性暴力」にさらされる状況になっています。あらゆる形態の暴力から子どもを守るためには、新たな取り組みが必要となってきます。

ACEは市民社会グループと共に、この行動計画の実施状況を確認し、3年後の改定に向けて、引き続き政府に働きかけていきます。

これからも、みなさまのご支援、ご協力よろしくお願いします!

  • Pocket
    LINEで送る

  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2021.08.24