「強制労働の廃止に関する条約」締結のための法律が成立しました

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ILO(国際労働機関)の「強制労働の廃止に関する条約」を締結するために国内法を整備する法律が、2021年6月の国会で成立しました。この条約は、ILOに加盟している国がすべての批准を求められている「中核的労働基準8条約」のひとつです。これで、日本は8つのうち7つの条約を批准することになり、あと1つを残すのみとなりました。

ILOの「中核的労働基準8条約」

ILOは、結社の自由・団体交渉権の承認、強制労働の禁止、児童労働の禁止、差別の撤廃の4つの分野において、それぞれ2つの条約、計8つの条約を「中核的労働基準」とし、ILO加盟国がすべての条約を批准することを求めています。
日本は、児童労働に関する2つの条約を含め6つの条約を批准しており、今回の法案成立で「強制労働に関する条約」批准に向けて前進しました。

「中核的労働基準8条約」
〇結社の自由及び団結権の保護に関する条約(第87号)
〇団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約(第98号)
※強制労働に関する条約(第29号)
〇強制労働の廃止に関する条約(第105号)
〇就業の最低年齢に関する条約(第138号)
〇最悪の形態の児童労働の禁止及び廃絶のための即時行動に関する条約(第182号)
〇同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第100号)
(未)雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(第111号)

「強制労働の廃止に関する条約」(ILO第105号)

強制労働の廃止に関する条約(1957年)は、1930年の強制労働条約(ILO第29号) を補強、補完する条約です。この条約を批准する国は、あらゆる形態の強制労働を廃止し、利用しないようにしなくてはなりません。例えば、経済的発展の目的のために労働力を動員し利用する方法や人種的・社会的・国民的または宗教的差別待遇の手段が含まれます。

(日本語)強制労働の廃止に関する条約(第105号)
(英語)Abolition of Forced Labour Convention, 1957 (No. 105)

「強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結のための関係法律の整備に関する法律」

国際条約を批准する際には、その条約の規定を国内の法律に取り入れるための措置が必要となります。そこで、国内法や行政措置を廃止や改定、または新しい法律や行政措置を講じなければなりません。
今回成立した法律では、「強制労働の廃止に関する条約」を締結するために、この条約が禁止している強制労働にあたると考えられる罰則について改定するものです。例えば、国家公務員や地方公務員による政治的行為が禁止事項に違反した行為の場合の罰則が懲役刑から禁固刑に変更されました。

全国から約700万人が加盟する日本労働組合総連合会(連合)は、次のような談話を発表しています。

「…..公務員法制における刑罰のあり方や、一部の不可欠業務の労働規律違反に対する懲役罰が依然として残るという課題はあるものの、一刻も早く条約批准を実現させるべきとの立法府の意思として受け止める。」

「強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結のための関係法律の整備に関する法律」

残す1つの条約批准に向けて

ILOの「中核的労働基準8条約」の中で「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約」のみが未批准となりました。この条約は、雇用や職業において人種、性、宗教、政治的見解などに基づくすべての差別、除外または優先をするような差別待遇をなくすためのものです。

日本がILOの加盟国としての責務を果たせるように、ACEはこれからの動きも注視し、皆様にご報告していきます。

         

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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2021.09.15