【ガーナ便り】自分の意志とは関係なく家族から離される子どもたち~ガーナでの人身取引について~ | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)

幸せへのチョコレート

【ガーナ便り】自分の意志とは関係なく家族から離される子どもたち~ガーナでの人身取引について~

Pocket
LINEで送る

みなさん、こんにちは!いつもACEの活動への温かいご支援をいただき、ありがとうございます。ガーナ担当スタッフの近藤光です。

今回は、人身取引の被害に遭いACEの支援する村へ逃げてきた子どもについて、またその背景にある課題についてお伝えします。

ガーナではしばしば人身取引のような形で、子どもが自分の意志とは無関係に他の場所に連れてこられるという被害があります。ACEもこれまで何度もこのケースに遭遇し、被害者を保護、救出してきました。今回も残念ながら新たなケースが発生しました。

ガーナ北部から連れてこられたアビゲイルさん(仮名)

2021年10月、16歳の女の子(アビゲイルさん(仮名))がプロジェクトを実施する村に逃げてきました。話を聞くとアビゲイルさんはとある男性と強制的に結婚させられ、プロジェクトを実施している村の近隣地域に連れてこられたといいます。

警察のヒアリングの写真

アビゲイルさん(右)と彼女を保護している成人女性(中央)に警察がヒアリングしている様子

 

アビゲイルさんはガーナ北部のアッパーイースト州の出身で、父親と2人の兄弟と生活してきました。幼稚園を出た後学校には通わなかったそうです。ある日父親から「仕事を紹介してくれるから、この男の人と一緒にクマシ(南部の都市)に行きなさい」といわれ、その男性についていったそうです。ところがそのままついていっても仕事は紹介されず、結婚することを強制されたといいます。

アビゲイルさんはその後、男性と暮らすことに嫌気がさして逃げ出したところ、ACEが支援している村にたどり着き、村の村長が彼女を保護しました。その後郡の社会福祉局(人身取引の被害者の保護を担当する部局)と警察が、村に住むとある女性に対し彼女としばらく一緒に住むよう依頼し、アビゲイルさんは今その女性とともに暮らしています。

なお加害者の男性はアビゲイルさんが逃げて以来、行方をくらましており、警察が捜査しています。

後を絶たない人身取引

ガーナではこのような形で人身取引が起こるケースが後を絶ちません。結婚の他、家事やカカオ農業の農作業のため、中にはトロコシ(Trokosi)と呼ばれるいけにえの儀式のようなものがあり、そのために少女を誘拐するということが報告されています。

そしてこれらの背景には貧困、子どもの権利に対する知識の不足、教育環境の不備などが複雑に絡んでいます。親が家計の負担を減らすために、あえて子どもを別のところに預けるケースも多く、教育を受けさせずに労働を目的として子どもを預けることがガーナの法律に違反することも知らない親がほとんどです。

またこのようなケースがあっても、警察や行政機関が真剣に対応しないことも珍しくありません。行政機関も人員や予算が不足しており、また人身取引は一種の家庭内の出来事としてとらえられることが多いからです。政府、行政、警察に対する提言や働きかけもこれからの課題です。

幸い今回のケースでは警察と行政機関はとても積極的に動いてくれました。現地NGOスタッフは「普段から警察や行政とコミュニケーションをとっていたことが良かった」と言っていました。

警察への報告の写真

アビゲイルさんのケースについて、現地スタッフが警察(右)に報告中の様子

今後の対応と課題

さて、アビゲイルさんも将来親元に戻るための準備をする必要がありますが、先述の通り親が人身取引に加担しているケースもあるため、親元にただ戻しただけでは再び人身取引の被害に遭う可能性があります。そのため、果たして今戻ったとして安全なのかどうかを確認する必要があります。

さらにはアビゲイルさん自身も今回のケースがトラウマになっているため、現地NGOスタッフがカウンセリングを行っています。そのうえで彼女が今戻っても安全であると確認されたのち、親元に戻ることになります。

親元に戻ることが必ずしも問題解決につながらないことが、この問題の難しいところです。

ACEは今、ガーナ政府や日本のJICAなどと協力し、ガーナで児童労働が起きないための制度作りにかかわっています。そこには上記のような人身取引に関する対応も含まれています。人身取引は場合によっては国境を越えて起こるため、ガーナだけで解決できる問題ではないケースもあります。

まさにSDGsのターゲット8.7(2025年までにすべての形態の児童労働を撤廃することや、強制労働、人身売買、現代的奴隷制度についても撤廃を目指すことが明記されています)の課題として、私たちも含めた地球全体で取り組まなければいけない問題でもあります。

ACEはこれからも、ガーナの子どもたち一人一人の権利と尊厳を守るために活動を続けていきます。

ガーナ担当 近藤 光

  • Pocket
    LINEで送る

  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2022.07.27