ODA大綱改定に向けて提言活動をしました
ODA大綱改定に向けて提言活動をしました
新たな開発協力大綱(ODA大綱)が2023年6月に発表されました。わたしたち市民社会は、持続可能な開発そして人間の安全保障に貢献する開発協力となるように昨年の9月から外務省と対話を重ねていました。また、ACEは2023年4月にパブリックコメントを提出しました。
開発協力大綱(ODA大綱)
ODA大綱は、日本政府が開発途上国に対して行う援助の基本原則を定めたものです。1992 年6月に最初のODA大綱が閣議決定され、1度目の見直しが10 年後の2003 年8月、2度目の見直しが2015年2月に行われました。それから8年、世界の情勢が大きく変化したことから、より効果的・戦略的に協力を実施するために3度目の改定となりました。
外務省と市民社会との対話
日本にはACEを含め国際協力を行っているNGOが多くあります。日本政府による開発援助の方針は、援助の対象、実施方法、資金配分などに影響します。日本の市民社会は、非軍事の原則、人権と環境を基盤とするアプローチ、当事者の声、連携などを重要だと考え、開発協力は持続可能な開発そして人間の安全保障に貢献するものであることを望んでいます。
NGOと外務省との対話は2023年9月末から始まり、新たなODA大綱が発表される直前まで続けられました。
NGOからの要請書
新たなODA大綱の方向性は、開発協力を国益のための外交手段とし、日本の安全保障や経済振興のための援助に変わっていくように見えました。これまでのODA大綱に定められていた重要な理念や実施原則が失われるかもしれないという、強い危機感があり、急いで要請事項が取りまとめられました。
わずか2週間ほどでNGOの意見が集約され、改定の重要なポイントについてまとめた要請書が外務大臣宛てに10月に提出されました。ACEを含め60団体もが賛同しています。
「開発協力の理念と原則:非軍事的手段で人間の安全保障の実現を目指すべき及び市民社会との連携強化」
(1) 開発協力の定義は「開発途上地域の開発を主たる目的とする『公共的な』国際協力活動」であることを明確にしてください。
(2) 軍事的用途及び国際紛争・国内紛争助長への使用を回避する原則を堅持してください。
(3) 環境、人権アプローチを開発協力の中心にすえ、当事者の意見を反映する仕組みを明示してください。
(4) CSO(NGO)の位置付けを抜本的に見直し、連携を強化してください。
(5) 開発協力におけるジェンダー主流化を明示してください。
(6) 深刻な人権侵害等が発生している国に対して援助の緊急停止・見直しを行うことを明記してください。
「開発協力大綱改定に関する市民社会ネットワーク」立ち上げ
2023年1月には、「開発協力大綱改定に関する市民社会ネットワーク」が立ち上げられ、ACEも参加しました。その目的は、「開発協力大綱改定に市民社会の意見を反映させ、真に持続可能な開発、人間の安全保障に資するODAを推進する」ことです。
開発協力における日本および開発途上国の市民社会との連携強化、持続可能な開発、貧困や格差の削減、地球規模課題の解決に向けた開発協力、非軍事原則の徹底などを求めていくことを趣旨としています。
ACEによるODA大綱へのパブリックコメント
児童労働、子どもの権利、ビジネスと人権を中心に、また日本の市民社会が重要だと考える点について、9つの提案をしました。
結果は、2か所で提案通りに追加となりました。(太字部分)
「こども」が追加されました(5ページ)
Ⅱ.重点政策
1.新しい時代の「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅
(2)ア 包摂性:感染症、紛争、大規模災害等により、世界の貧困人口は増加に転じるとともに、一部の国では格差の拡大や人道状況の悪化が見られており、難民・避難民、こども、女性やマイノリティ等脆弱層への支援が一層求められている。
【ACEのコメント】
子どもは成長過程にあり、おとなとは異なるニーズをもっている。子どもの権利の観点から、子どもの最善の利益を優先し、子どものニーズに基づいた支援が必要であることから、ここにおいて言及するべきである。
「国内外の」が追加されました(9ページ)
Ⅲ.実施
1.効果的・戦略的な開発協力のための3つの進化したアプローチ
オ 市民社会
…我が国市民社会の能力向上を支援するとともに、支援スキームの不断の改善等により、国内外の市民社会を通じて実施する開発協力を更に強化していく。…
【ACEのコメント】
日本国内のNGOなどの市民社会だけでなく、援助対象国の市民社会も「共創」のための重要なパートナーである。援助の対象となる人たちの意見が反映される形での国際協力と明記することを提案する。また、オファー型協力を強化するうえでも、現地の人たちの声を取り入れることは重要だと考える。
しかし、その他の意見は取り入れらず、「児童労働」という語句は入りませんでした。
・国連「ビジネスと人権に関する指導原則」や「国際人権規約」「国際人道法」など、具体的な国際基準を追加すること
・子どもの性被害(オンラインセキュリティ)や児童労働撤廃を追加すること
・市民社会等との連携を追加すること など
ODA大綱について声明を発表
新しいODA大綱は、2023年6月に閣議決定されました。方向性が示された時に懸念していた点のうち、解消されたところもあれば、そうでないところもありました。市民社会は、対話について日本政府・外務省へ感謝するとともに、見解を示す声明を発表しました。
「多主体間の連帯に基づき、複合的危機を克服する新たな国際協力の構築のために=新『開発協力大綱』への市民社会の応答=」
1. 新時代の人間の安全保障:人権・民主主義・平和の重視を
2. 開発協力の実施のための連帯と原則
(1) 市民社会との連携
(2) ビジネスと人権
(3) 非軍事原則
(4) 人権侵害や民主化への逆行に関するモニタリングと対応措置
日本の国際協力に、今後10年位は影響を与えるODA大綱改正のプロセスに積極的に参加し、開発途上国の人たちのための政府開発援助が行われるように政策提言をしました。
ACEはガーナやインドで児童労働をなくすためのプロジェクトをみなさまからのご寄付などによって実施しています。より多くの資金があれば、より多くの子どもたちが児童労働から解放され、学校へ行けるようになりますが、政府開発援助で児童労働に関する事業にあてられている資金はとても少ないのが現状です。
新しいODA大綱では、これまで相手国からの要請で支援を行っていた「要請型」に加えて、日本から支援の形を示す「オファー型協力」の強化が示されました。ガーナで進めている「児童労働フリーゾーン」が、オファー型のひとつのモデルとして世界に広められるように、アドボカシー活動をしていきます。
これからも、みなさまのご支援・ご協力をよろしくお願いします!
世界の子どもの笑顔のため、世界を変える小さな一歩を。
- カテゴリー:報告
- 投稿日:2023.06.20