日本の子どもたちの「子どもの権利」を守るための活動「わたしらしさを大切にする子どもの権利ワークショップ」開発中
日本の子どもたちの「子どもの権利」を守るための活動「わたしらしさを大切にする子どもの権利ワークショップ」開発中
こんにちは。子どもの権利普及チームとして取り組みを進めている坂口です。
ACEでは現在、日本の学校の授業などで活用できる、主に子どもを対象とした「子どもの権利」に関する新しいワークショップの制作を行っています。
今日は、開発中の子どもの権利教材について、その背景と先日行ってきたテスト実施の様子についてお伝えします!
日本の今:虐待、いじめ、自死…子どもの権利が守られていない現状
日々のニュースや様々なデータ、日常で感じることを通して、私たちには「日本の子ども若者は幸福感を得られていないのではないか」という課題感がありました。
例えば。
- 1日に2人、子どもや若者が自死しているという現状があります。*1
- 1週間に1人が虐待により亡くなっています。*2
- 虐待の相談件数、いじめの認知件数も年々増えています。*3 *4 *5
- OECD加盟国の「子どもの幸福度」ランキングでの日本の順位は、2013年は31か国中6位でしたが、2020年には38か国中20位。「精神的幸福度」は、ワースト2位の、38か国中37位です。*6
教材を通じて、「子どもには権利がある」と知らせたい
これだけ少子化が懸念されているなかで、さらに、子どもや若者が大切にされていない現実。
その背景には、そもそも「子どもにも権利がある」ということが知られていないということがあるのではないかと考え、「子どもは、親やおとなの所有物でも付属物でもなく、1人の人間であり権利の主体である」ということを伝え、理解してもらうワークショップ教材をつくることにしました。
「自分だけで悩まなくてもいいんだと思った」
わたしらしさを大切にする子どもの権利ワークショップ
ワークショップの現時点でのタイトルは、「わたしらしさを大切にする子どもの権利ワークショップ」。テスト実施を受け入れてくださった学校の先生方のご配慮で、2日間で合計7クラスもの生徒にワークショップを受けてもらえることになり、ACEスタッフ4名で担当させていただきました。
初日は進路や将来を考える3年生、2日目はついこの間まで小学生だった1年生のみんなに。ワークショップの進行台本と投影スライドと配布資料には、開発に関わったメンバーそれぞれの子どもたちへの想いを詰め込みました。
テスト実施では、生徒のみんなの反応や先生のアドバイスを基にその場ですぐ修正を考え次の授業では改善をする、を繰り返せたことがとても良かったです。
先生のフィードバックを受け、2日目の1年生に実施するときには、「感情の奥にある願い(ニーズ)」に目を向ける方法をデモンストレーションで見せることにしました。
発言が止まらなかったクラスのみんな。「共感する力」がお互いの権利を守ることに
デモンストレーションでは、ACEスタッフが中学生のときに経験した「嫌なあだ名で呼ばれた」というエピソードを聞いてもらい、その時にそのスタッフがどんな気持ちだったのか、大切にしたかったことは何だったのかを、配布資料の「ニーズリスト」を参考に発言してもらいました。
すると、黒板に書くスピードに追いつかないぐらい、クラスのみんながどんどん発言してくれました。
エピソードを語ったスタッフもクラスのみんなに共感してもらえて涙ぐんでいました。その姿は、中学生時代のスタッフが涙ぐんでいるかのようにも見えました。
テスト実施の2日間、進行台本には訳が分からなくなるほど赤字が入りましたが、確実に良くなっている実感がありました。
「共感する力」は、数値では測れません。
「共感する力」があれば、いじめのないクラスが、暴力のない世界が生み出せるのではないかと思いました。
生徒の感想には、
「自分らしく生きようと思った。相手の権利も守ろうと思った。」
「自分だけで悩まなくてもいいんだと思った。」
「子どもだからという理由で意見を聞いてもらえないときもありますが、講演をきいて、意見を言っても良いのだと勇気がでました。」
「権利があるにもかかわらず、世界のどこかで今も苦しむ子供たちがいることを忘れないようにしたいと思いました。権利を知らない人がいたら教えてあげようと思いました。」
など嬉しい感想がたくさん寄せられました。
「子どもの権利をわかりやすく伝えるためになにかに例えるならどんなイメージですか?」の質問に「自由」という言葉を使った生徒が多かったのも印象的でした。
すべての子どもが「子どもの権利」について知り、お互いの権利を守りながら、自分と相手を大事にする社会になってほしいと願っています。教材は、これからもブラッシュアップしていきます!
みなさまからのご支援によって、こうした活動を進められています。より良いプログラムを一人でも多くの子どもたちに届けるために、ご寄付で応援いただけたら嬉しいです!
データ出所
*1 厚生労働省・警察庁「令和2年中における自殺の状況」(20歳未満)厚生労働省「令和2年児童生徒の自殺者数に関する基礎資料集」
*2 警察庁生活安全局人身安全・少年課「令和3年中における 少年の補導及び保護の概況」P71 虐待による死亡人数 令和3年 54人
*3 1994年の虐待相談対応件数 1961件 (令和3年 虐待相談対応件数 207,660件)
*4 面前DV等虐待の定義の変化、#189の通報制度の充実等様々な要因も考えられるが、子どもの人口としては大幅に減少してきている中で、件数は増加している(参考近似値:15歳未満の人口 1990年 約2300万人(18.2%)、2019年 約1500万人(12.1%)
*5 令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
*6 ユニセフ・イノチェンティ研究所「イノチェンティ レポートカード 16 子どもたちに影響する世界 先進国の子どもの幸福度を 形作るものは何か」英語版 2020 年 9 月刊行 日本語版 2021 年 2 月刊行 Pdfファイル
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- カテゴリー:報告
- 投稿日:2023.08.07