パブリックコメントを提出した「こども大綱」が発表されました

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「こども基本法」が2023年4月に施行され、こども施策を推進していくための「こども施策に関する大綱」が12月に閣議決定されました。こども施策に関する基本的な方針、こども施策に関する重要事項、こども施策を推進するために必要な事項が定められています。

「こども基本法」

子どもの権利に関する総合的な法律が日本にはなく、日本政府は国連子どもの権利委員会からつくるようにと長年勧告を受けていました。2021年に「こども家庭庁」創設や「こども基本法」制定をめぐる議論が始まりました。ACEが事務局を務めている「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」は、子どもの権利条約に基づき、子どもの権利の権利を包括的に保障する子どもに関する基本法の策定を求めて、政策提言活動を行いました。

そして、「こども基本法」が2022年6月に公布され、2023年4月から施行されました。その内容は、わたしたちが要望していたことすべてが取り入れられたわけではありませんでしたが、法律ができたという重要な第一歩となりました。

※「こども基本法」では、こどもは「心身の発達の過程にある者」と定義されていて、18歳などという年齢で区切られていません。

「こども施策に関する大綱」

「こども施策に関する大綱」(以下、こども大綱)は、日本国憲法と子どもの権利条約の精神にのっとって、こども施策に関する基本的な方針、こども施策に関する重要事項、こども施策を推進するために必要な事項が定められています。

そして、こども大綱は、「こどもまんなか社会~全てのこども・若者が身体的・精神的・社会的に幸福な生活を送ることができる社会~」をめざしています。それは、「生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、ひとしく その権利の擁護が図られ、身体的・精神的・社会的に将来にわたって幸せな状態(ウェルビーイング)で生活を送ることができる社会」と書かれています。

こども施策に関する基本的な方針

  1. こども・若者は権利の主体であり、今とこれからの最善の利益を図ること
  2. こども・若者や子育て当事者とともに進めていくこと
  3. ライフステージに応じて切れ目なく十分に支援すること
  4. 良好な生育環境を確保し、貧困と格差の解消を図ること
  5. 若い世代の生活の基盤の安定を確保し、若い世代の視点に立った結婚・子育ての希望を実現すること
  6. 施策の総合性を確保すること

ACEからの意見書

「今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針と重要事項等~こども大綱の策定に向けて~(中間整理)」に対してパブリックコメントの募集が2023年10月にあり、ACEは子どもの権利の中地、救済機関の設置、児童労働予防などの観点から、意見を提出しました。

1.子どもの権利を周知する研修について

子どもの権利侵害は、社会のあらゆる場面で発生していることから、子どもの権利については、子どもにかかわる人だけでなく、広く社会全体の人びとを啓発していくことが重要である。

デューティーベアラー(責務履行者)となる国家公務員・地方公務員をはじめ、教育分野(私立・公立学校の教職員、スクールソーシャルワーカーなど)や福祉分野(児童相談所、一時保護所の職員など)だけでなく、司法関係者者(裁判官、弁護士など)、並びに子どもに関わる専門職への定常研修に子どもの権利保障を含めるべきと考える。

これら以外にも、子どもにかかわっている民間組織、企業、地域団体(要保護児童対策地域協議会、子ども・若者支援地域協議会、自治会、子ども会など)、子ども食堂・子どもの居場所などの運営者やボランティア、などにも子どもの権利について確実に周知する必要がある。

2.こども基本法について学校を通じた子どもへの周知について

子どもが多くの時間を過ごす教育現場でこそ、こども基本法にかかげる理念・精神が尊重されなければならず、教育機関への趣旨の徹底を図る通知を出して、こども基本法の基本理念が尊重されるよう、その浸透を図る必要がある。

3.国全体で子どもの権利保障を推進するための公的第三者機関の設置について

こども・若者の自殺対策、いじめ防止、ひとり親家庭への支援などへの相談支援の情報提供や体制強化などが述べられている。それぞれの分野での相談体制の強化はもちろん重要であるが、子どもコミッショナーのような、子どものあらゆる声を聴く公的第三者機関があれば、どんな課題に対しても、迅速に相談への対応を行うことが可能である。

さらに、日本は子どもの権利条約と2つの選択議定書を批准しているが、通報手続きに関する選択議定書を批准していない。批准に向けた検討を開始するなど、今後の見通しを記述すべきである。

4.こども・若者のセーフガーディングについて

政府は「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組み(日本版DBS)」の導入を検討しているが、性犯罪歴等をもつ人を採用しないようにする取り組みだけで、子どもの日々の生活の場での安全・安心が守られる訳ではない。学校、学童、児童館、塾、習い事の場、地域、居場所などこどもが過ごす場所において、災害、事故、暴力、怪我、不適切行為などを未然に防ぐためにセーフガーディングの考え方と実践を広めていくことも重要である。

セーフガーディングとは、組織の関係者による虐待や搾取など、子どもの権利を侵害する行為や危険を防ぎ、安全・安心な活動と運営をめざす取り組みで、子どもの安全にかかわる疑念が生じた場合の対応と再発防止も含む。

5.子どもが犯罪に使用されることへの防止について

高校生、未成年、若者などが闇バイトで犯罪に巻き込まれるケースが多発している。特殊詐欺の受け子・出し子のみならず、強盗にも関与し、逮捕された事案も少なくない。そのほとんどが高額の収入に惹かれ、軽い気持ちで応募している。個人情報を知られたため、辞めたくても辞めさせてもらえない状況となった場合もある。このような犯罪行為を未然に防ぐために、働くことの意味や働く人の権利などを含む労働者教育を義務教育の段階で行うことが重要である。

6.労働者教育の必要性について

高校を中退した子どもの就学・就労支援に触れられているものの、基本は復学・就学を念頭に置いている。割合は少ないが、中学校卒業後に就職する子どもや進路未決定からアルバイト就労などを始める子どももいる。

違法な労働環境で年少者を雇用している事業場数が、労働基準監督局より毎年報告されている。労働者の権利についての知識がなければ、法令違反であるということも知らずに違法な労働環境で働かされることになる。学校において、労働基準法や社会保障について詳しく説明する授業が必ずしも行われていないという状況から、労働者を守る権利と相談窓口についての情報を提供する必要がある。

7.外国にルーツをもつ子どもの教育への権利保障について

日本に居住している外国にルーツをもつこどもについては、義務教育化されていないために、また学校での支援体制が不十分であるために、学校へ行かない場合がある。就労最低年齢以下の子ども親と一緒に働いていたことから、雇用者が逮捕されるという事案も発生している。日本国籍の子どもだけでなく、日本に住む外国にルーツをもつ子どもの権利(教育への権利)も保障することを明記すべきだと考える。


「こども大綱」へのパブリックコメントには、子ども、若者、一般の人から4000件近くの提出があり、関心の高さが伺えました。貧困、保健・医療、虐待、いじめ、体罰、教育、就労、障がい、子育て、社会参画など、非常に多岐にわたる分野が含まれていて、さまざまな意見が出されていました。こども施策に関する基本的な方針に、子ども・若者が権利の主体であることや、子ども・若者や子育て当事者とともに進めていくことが明記されたことは、高く評価できます。

残念ながら、ACEが提出した意見はほとんど反映されていませんでした。

  • 子どもの権利の周知については、「こども・若者自身を含め、広く社会全体に周知していくことにしています。」
  • 子どもコミッショナーのような公的第三者機関については、「権利侵害の救済は、まずはこどもなど住民に身近な地方公共団体が取り組むべきことです。…その取組を後押しするとしています。」
  • 労働者教育については、「就労支援や復学・就学のための取組の充実を図る。」など、就労支援に留まっています。
  • セーフガーディングについては、言及されていませんでした。

ACEは、子どもの権利が守られた社会をつくっていくうえで、非常に需要な点について意見を出したと考えています。今回は取り上げられませんでしたが、機会があるたびに、繰り返し政府に要請していきます。

これからも、みなさまのご支援・ご協力をよろしくお願いします!

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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2024.01.20