【ガーナ便り】子どもたちの笑顔を守りたい ー フィールドスタッフ、クワメさんのプロジェクトにかける思い | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)

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【ガーナ便り】子どもたちの笑顔を守りたい ー フィールドスタッフ、クワメさんのプロジェクトにかける思い

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こんにちは!3月よりリサーチャーとしてACEに入職した伊藤です。

ACEはガーナのカカオ生産地で、危険な労働にさらされている子どもたちを守り、教育を支援する「スマイル・ガーナ プロジェクト」を、現地のNGOであるCRADAと協力して実施しています。CRADAは、子どもの権利の保護を目的に2000年に設立され、カカオ生産地域での児童労働撤廃や都市のストリートチルドレン救済などの活動に取り組んでいます。このプロジェクトでは、子どもたちが学校に通い続けるようになることで児童労働を予防し、カカオ農家が継続して子どもの教育に投資ができるよう、農家の収入向上支援などを行っています。

9月にプロジェクトの現場を訪れて実際に見てきた様子を、前後編に分けてご報告します。今回の【前編】では、現地でプロジェクトの活動を支えているスタッフや、学校に通えるようになったニーナさん、稲作研修で自信をつけた女性たちのエピソードをご紹介します。

子どもたちの笑顔を守りたい ー フィールドスタッフ、クワメさんのプロジェクトにかける思い

まずは、現地でプロジェクトを支えているCRADAスタッフ、フィールドオフィサーのクワメさんをご紹介します。クワメさんは2013年にCRADAに入職しました。それ以前は小学校の教師をしていましたが、家庭の事情で学校を辞めざるを得ない子どもたちを目の当たりにし、教師としての支援に限界を感じ、葛藤していたそうです。子どもたちやその家族をより直接的に支えたいという思いから、スマイル・ガーナ プロジェクトのフィールドオフィサーとして7年間活動を続けています。

CCPCメンバーとCRADAのスタッフ(中央でしゃがんでいるのがクワメさんで、左右両端もCRADAのスタッフ)

 

まだ薄暗い早朝、クワメさんはスタッフ宿舎からオートバイに乗り、支援地の村へと向かいます。彼の一日は、登校途中の子どもたちや農園へ向かう農家の人々と、笑顔で挨拶を交わしながら始まります。彼らと軽く談笑するその姿からは、コミュニティとの深い信頼関係が伺えます。

私は2日間、クワメさんとともに村を訪問し、その間に彼が子どもたちや農家に対して抱く真摯な思いを肌で感じました。また、クワメさんが情熱を注ぐのは、ただ支援を届けるだけではなく、村の住民たちが自らの力で子どもたちを守り育てていけるコミュニティを築く手助けをすることでした。彼はプロジェクトスタッフという立場を超え、地域の人々にとって信頼される友人であり、支えとなる存在なのだと強く感じました。

さらに、クワメさんは子ども保護委員会(CCPC)のメンバーにとっても頼れるメンターです。CCPCは村のボランティアで構成されており、子どもたちが学校に通えているか、児童労働や人身取引が行われていないかを日々確認するために村全体を見回っています。彼らは村の隅々まで精通しており、クワメさんとの緊密な連携によって、外部者ではなかなか到達できない僻地の農園にも、きめ細やかな支援を届けることを可能にしています。

クワメさんとCCPCによるカカオ農園や子どもたちの家庭への訪問は、単なる進捗確認ではなく、信頼関係を深めるための貴重な機会となっています。彼らは常に家族の健康や子どもたちの成長に気を配り、誰一人として見過ごされることがないよう心を尽くしています。

「将来は看護師に」夢に向かって勉強を続ける

CCPCの案内で、プロジェクトから学用品を受け取った少女ニーナ(仮名)さんの家を訪問しました。彼女は以前、学用品が買えずに学校に通えない状況にありました。母親とともにカカオ農園で働いていた時に、CCPCがその様子を見つけ、プロジェクトの支援で学用品が提供されました。プロジェクトでは困窮家庭に対して学用品一式を支援しており、それには制服や靴下、靴、鞄、えんぴつ、消しゴム、ノートなどの筆記用具などが含まれています。

学用品を受け取り学校に通えるようになったニーナさんは現在、小学校5年生のクラスに通い、片道1時間の道のりを毎日歩いて学校へ通っています。道は険しく、雨が降るとぬかるんで通学が難しくなることもありますが、友達と学び合う時間が何よりも楽しいと語ってくれました。

ニーナさんの通学路

 

クワメさんが将来の夢を尋ねると、ニーナさんは看護師になりたいと答えました。「それは大きな夢だね。しっかり勉強しないとね。」と、クワメさんは優しく微笑みかけながら声をかけました。再来年には中学校に進学しますが、そこまでの道のりは片道2時間もかかります。それでも、彼女はその夢に向かって努力を続けると決意を語ってくれました。隣にいたお母さんも、娘が看護師を目指せることに大きな喜びを感じ、全力で応援するつもりだと話してくれました。

ニーナさん(右)とお母さん

 

女性たちの新たな挑戦と自信

スマイル・ガーナ プロジェクトでは、稲作研修を通じて、女性たちがカカオ以外にも収入源を得られるようサポートしています。私が研修サイトを訪問した際には、15人の女性たちが賑やかに会話を交わしながら、稲の脱穀作業に取り組んでいました。

クワメさんの姿を見つけると、女性たちは「遅かったじゃないの!」「あなたの分の仕事は残してあるから、早くいらっしゃいよ!」と満面の笑顔で彼を招き入れました。元々少し垂れ目のクワメさんですが、さらに目尻を下げ、駆け足でその輪の中に入っていきました。すでに同僚のジェームスさんも一緒に作業していましたが、女性たちは役割を分担しながら効率よく作業を進めており、活気に満ち溢れていました。

脱穀作業の様子

 

15人中11人が初めての稲作挑戦でしたが、グループで協力して作業ができること、また苗や肥料といった必要なものがプロジェクトから支給されるため、不安を感じることなく参加できたそうです。実際に収穫を終えた彼女たちは、自分たちで米を作れたという自信がついたと、嬉しそうに話していました。もともと稲作農家だったという女性も、これまで自己流で行っていた種まきや床土づくりの方法を研修で学び、収量が増えたと喜んでいました。各自の農地での作業においても、グループで協力し、時には共同作業を行う体制が構築されたことも、この稲作研修の大きな成果です。

モミを袋詰めして小型トラックに積み込む作業が終わり、荷台がいっぱいになった様子を見たとき、女性たちの表情には大きな達成感と自信が満ちていました。クワメさんはその光景を感慨深く見つめていましたが、彼女たちに「頼んだよ!」と激励され、町の乾燥所に向けて出発する際には、責任感にあふれる頼もしい表情に戻っていました。

荷台いっぱいのモミ袋。ドライバー(CRADAスタッフ)のリチャードさんも満面の笑み

 

次回は、「訪問レポート【後編】 」として、カカオ生産地の現状と、カカオ生産量の減少の背景にある要因についてご紹介できればと思います。

これらの活動は、みなさまからのご寄付で支えられています。カカオ農家の収入の安定と、子どもたちの学校生活をこれからも守っていけるよう、今後とも、ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

伊藤 愛

ガーナの子どもたちを笑顔にするために
応援よろしくお願いします!

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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2024.10.22