ジュネーヴでの国際会議「国連ビジネスと人権フォーラム」に参加し、児童労働フリーゾーンについて発表しました

ジュネーヴでの国際会議「国連ビジネスと人権フォーラム」に参加し、児童労働フリーゾーンについて発表しました

いつもご支援ありがとうございます。政策提言を担当している川村です。

2025年11月24日~26日にスイスのジュネーヴで開催された「第14回国連ビジネスと人権フォーラム」に、ACEから岩附、佐藤、私(川村)の3名が参加してきました。本フォーラムは、世界各国の政府、国際機関、企業、市民社会組織、労働組合、弁護士、学術界などから本分野に携わる人々が一堂に会する国際会議です。今年は昨年の参加者を上回る4,650人もの参加がありました。

ACEが共催団体として携わったアフリカ地域セッションにおける、ガーナの児童労働フリーゾーンについての発表のほか、フォーラム中はさまざまなセッションに参加し、ビジネスと人権の最新の議論に触れ、ACEの様々な活動とも照らし合わせながら考えを巡らせました。また、ジュネーヴ滞在を活かし、参加セッションの合間に現地の様々なステークホルダーと情報交換を行いました。

セッション、ミーティング後の記念写真
上段:共催セッション終了後にガーナ政府のエスター・オフォリ氏と
下段左:VOICE Networkのアントニー・C・ファウンテン氏と
下段右:国連特別報告者(現代的形態の奴隷制担当)の小保方智也氏と

 

アフリカ地域セッションを共催し、ガーナの児童労働フリーゾーンを発表

フォーラムに参加した重要な目的のひとつは、アフリカをテーマにしたセッション「Accelerating Business and Human Rights in Africa Amidst Crises and Transformations(抄訳:危機と変革のさなかにおけるアフリカにおけるビジネスと人権の加速化)」の共催者として、ACEとJICA(国際協力機構、以下JICA)が児童労働フリーゾーンの取り組みを国際社会に発信・周知することでした。

児童労働フリーゾーンを推進しているガーナ政府の児童労働ユニット担当者、エスター・オフォリさんがセッションにて登壇、ACEスタッフ3名は準備と当日のサポートを行いました。

児童労働フリーゾーンについて発表をするガーナ政府のオフォリ氏

 

80分のセッションに4人のスピーカーが登壇し、セッション後半には会場参加者からの発言時間も確保する必要があるため、登壇者1人ひとりの発言時間は限られていました。特に、児童労働フリーゾーンについて初めて聞く人にとっては、口頭のみによる説明ではなかなかその全体像をイメージすることは難しいことが想像されました。

そのため、ACEが共同事業体の一員としてJICAから業務委託を受けている児童労働フリーゾーンの推進のためのプロジェクト要員でもある佐藤が、この日のためにリーフレットを作成しました。当日は、人海戦術で広い会場の入り口に陣取り配布。オンライン参加の人もいるため、セッションのウェブページにも資料の掲載を依頼しました。会場では150名ほどがこのセッションに集まりました。

政府の役割とそれが現場でどう機能するのか、ビジネスと人権の取り組みを推進する上でのパートナーシップの役割の2点についてパネリストに質問を投げかける岩附

 

こうしたチームでの努力のかいもあってか、セッション後オフォリさんのところにも児童労働フリーゾーンについてもっと知りたいとの問い合わせが来ているとのことで、児童労働撤廃への関心を高め、取り組みを知っていただく機会となったことを実感しています。

セッションのアーカイブはこちらからご覧いただけます。
https://webtv.un.org/en/asset/k1h/k1hndoh8xd(1:43:18〜)

さまざまな”危機”に実務を通してどう立ち向かうか

昨年開催されたフォーラムでは、各国・地域における国際協力などによる取り組み、企業による自主的な取り組み、国や地域の法で義務化された取り組みの組み合わせを意味する「スマート・ミックス」の実現と有効性、課題が主要な議題となりました。

今年のフォーラムではテーマが「危機と変革のさなかにおけるビジネスと人権への取り組みの加速」とされ、人権侵害の増加に加えて、国連や市民社会組織への各国政府の拠出金削減により、政府の人権保護能力が弱まっている現状が強調されました。

また、政府だけでなくビジネスセクターも多様な課題に直面しており、今年はより実務に根ざした議論が全体を通じて多く見られたのが特徴です。

セッションの主なテーマ

  • AIを含むデジタル技術やプラットフォーム労働における人権保護の強化
  • 救済メカニズムの複雑性を踏まえた、ライツホルダーの安全かつ実質的な参加を確保する人権デュー・ディリジェンスの実施方法の共有
  • ジェンダー視点に基づく人権デュー・ディリジェンスの実行と、女性人権擁護者の平等で有意義な参加の確保
  • 紛争や社会的混乱などの高リスク環境における人権デュー・ディリジェンスのための情報収集手法と質の確保
  • 子ども、先住民族、高リスク・低ガバナンス地域の労働者など脆弱な集団に焦点を当てた、公正な移行を実現するための成功事例と実践モデルの共有
  • 地域・文化的文脈を踏まえた国家・グローバルレベルの公正な移行政策の形成と、その過程でのメディアの役割
  • 採掘・農業・再生可能エネルギー等の特定産業で人権擁護者が直面する脅威と、企業に求められるガバナンス強化・説明責任・透明性・安全なステークホルダー・エンゲージメントの確立
  • 人権デュー・ディリジェンスにおける効果的で変革的な救済を実現するため、認証制度や監査機関が果たすべき役割
    など

ジュネーヴからモロッコへ―ACEに課された宿題とは?

今年のフォーラムでは先住民や強制移住を強いられた当事者の方々の声を多く聞くことができた一方で、児童労働が「ビジネスと人権」において高リスクな人権課題に位置づけられているにも関わらず、児童労働の当事者は登壇者として見受けられず、また3日間を通して子どもの声が聞けたセッションは本当にごく一部でした。

人権デュー・ディリジェンスにおける児童労働の予防・是正・撤廃のための実務を行う上で重要となる子どもをステークホルダーと捉えること、またその啓発活動にまだまだ改善の余地があると感じました。

カンボジアのサトウキビ産業の大規模な土地収用に伴い強制移住を迫られた当事者による発表

 

国際会議は、会議の開催だけでは世の中の仕組みに変化をもたらすことは難しいですが、準備や開催後の各ステークホルダーへの密な働きかけが重要な役割を果たしていきます。

現在ACEは、来年2月にモロッコで開催される児童労働反対世界会議で子ども・若者当事者の声を政策決定者に届けることができるよう、ACEも加盟する国際ネットワーク「児童労働に反対するグローバルマーチ」を中心に準備を進めています。

今回ジュネーヴで感じた危機感を原動力にし、得た学びをACEの様々な活動におけるステークホルダーとの連携に活かしながら、活動を続けていきたいと思います。

これからもご支援いただけると幸いです。

  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2025.12.18