ガーナ・カカオ生産地に広がる「ガラムセイ」と児童労働の現実 ― ILOプロジェクト現地写真レポート ―
2025年12月、ACEは国際労働機関(ILO)のプロジェクトの一環として、ガーナのカカオ生産地域を訪問しました。現地では、児童労働の予防と解決を目的とした「児童労働フリーゾーン」構築に向け、学校やコミュニティ、子ども保護委員会と連携した取り組みが進められています。
しかしその一方で、学校のすぐそばには、持続不可能な金の採掘「ガラムセイ」の現場が広がり、子どもたちは日常的にその影響を受けています。ガラムセイは環境や健康に深刻な被害をもたらすだけでなく、子どもたちを学校から遠ざける大きな要因の一つとなっています。
本レポートでは、現地で撮影した写真とともに、ガラムセイと児童労働がどのように結びつき、地域や子どもたちの生活にどのような影響を及ぼしているのかを伝えます。制度や言葉だけでは見えにくい「現場の現実」を、写真を通して感じていただければ幸いです。

村と金採掘場が隣接しており、子どもたちでも気軽に入って行けてしまいます
学校のすぐそばにある採掘現場
コミュニティの学校の裏手から少し歩くと、金の採掘が行われているガラムセイの現場へと続く道が現れます。学校と採掘場は決して離れた場所にあるのではなく、子どもたちの日常のすぐ隣に存在しています。
制度上、18歳未満の子どもがガラムセイサイトに立ち入ることは禁止されていますが、実際には誰でも入れてしまう場所も多く、子どもたちが採掘現場を目にせずに暮らすことはほとんど不可能です。


村の人たちが次々と金採掘場に向かっていきます
「働いているのはサイトの外」──見えない児童労働
子どもたちが関わるガラムセイでの労働は、必ずしも採掘場の中で行われているとは限りません。父親が採掘場で掘り出した土を家に持ち帰り、子どもが川辺で金を選り分ける――そうした形で、規制の目をかいくぐるように児童労働が行われています。
表向きは「立ち入り禁止」が守られているように見えても、実態としては子どもたちが労働から切り離されていない現実があります。


学校の時間帯に10歳くらいの少年3人がコミュニティ内の草むらで土を掘って運んでいるところに遭遇しました。呼び止めると土を置いて逃げたのですが、すぐに戻ってきたので尋ねてみたところ、家に持ち帰り、泥の中から金を探すのだといいます。
理由を尋ねると、「金が見つかったら2億セディもらえると言われたから」との答え。少年は続けて、「勉強したところで、村の人たちはみんな仕事もなく貧しい暮らしをしている。立派な職業だと言われる教員ですら車も持っていない。学校に行く時間は無駄だと感じる」と語りました。
400セディの重み ― なぜ学校より金を選ぶのか
川辺で作業をしていた少年は、一日で約400ガーナ・セディを得ていると話していました。これは、ガーナのカカオ農家1世帯の1日あたりの平均収入の約6倍に相当します。
この金額は、子どもにとっても家族にとっても非常に大きな意味を持ちます。「学校に行くよりも稼いだ方がいい」と感じてしまう背景には、貧困だけでなく、こうした圧倒的な収入差が存在しています。

幼い弟を連れて川の中で金を選り分ける作業をする少年。ビニール袋に詰めてきた土を器に開け、水を加えてゆすります。金を沈めながら土を洗い流す作業を、驚くほど手際よく行っていました。
環境とコミュニティに残される傷跡
金の採掘が終わった後の土地は、深い穴が掘られたまま放置され、水が溜まり、荒れ果てた状態になります。採掘に伴って流出した土や水銀などの化学物質により、水は赤く濁り、環境や人々の健康への影響も懸念されています。
こうした環境破壊は、カカオ農業を含む地域の生計そのものを脅かし、将来世代にまで影響を及ぼします。

森林を切り開いて土が掘り起こされています

すでに金が掘り尽くされ、凸凹の土地が放置されています

採掘に伴う土壌の流出・水銀などの化学物質によって水が赤く変色しています
金はどこへ流れるのか
村の中には、金を現金に換える買取所が点在しています。表向きは合法とされる取引所です。子どもが利用することは禁止されています。
しかし実際には、一般住宅での闇取引が行われており、子どもたちはそこに金を持ち込んでいるといいます。採掘から流通までの構造が、子どもたちを労働から遠ざけることを難しくしています。

金の買取所。秤で重さを量り現金と交換してくれます。この取引所はライセンスを持った合法の取引所ということになっていますが、実際にはライセンスを取得した人物が何軒も展開しているのだそうです。
学校で起きている変化と葛藤
学校では、ガラムセイが環境や人体、コミュニティに与える悪影響について、さまざまな教科を通じて子どもたちに伝えています。
インタビューでは、「危険であることは知っている」「命を落とす可能性がある」と答える生徒もいました。それでもなお、リスクよりも得られるお金の方が魅力的に映ってしまう―。知識があっても行動を変えることが難しい現実が浮かび上がります。

学校を退学してガラムセイに通っている少年3人が、校長先生とプロジェクトスタッフと話をしているところ。「学校なんて時間の無駄」と始めは強気だった彼らですが、じっくり話を聞いていくと、本当は学校に来たいこと、親に「行く必要がない」と聞いてもらえないこと、制服を用意してくれないことを涙を浮かべて明かしてくれました。

子どもたちに、ガラムセイがなぜ子どもたちに禁止されているのかを尋ねました。最初は「ガラムセイは僕たちの国を滅ぼす」「環境を破壊している」といった、テレビで繰り返し聞かされている言葉しか出てきませんでした。しかし、自分自身や大切な家族、友人にとってどんな危険があるのかと掘り下げて聞いていくと、「水銀」「穴に子どもが落ちて命を落とす」という答えが返ってきました。

小学6年生の図工の試験問題。ガラムセイがもたらす負の影響について啓発するためのポスターを作るには、という問題が出題されていました。 学校では、社会、理科、道徳といったあらゆる科目を通じて小学校低学年から中学校まで生徒たちにガラムセイが環境や人体、コミュニティに与える影響について教えています。

この少年は、ガラムセイサイトで働いていたところを子ども保護委員会の見回り活動で発見されました。現在はガラムセイに行かず、小学校4年生のクラスで学んでおり、算数の勉強がとても楽しいと話していました。
「学校に来なさい」──地域を動かすおとなの存在
校長先生は、子どもたちがガラムセイに向かう背景には、コミュニティのおとなたちの責任があると語ります。
「学校に来なさい。学んで、事業やお金、人を動かす側になりなさい」。
この言葉は、子どもたちだけでなく、地域全体に向けられたメッセージでもあります。毅然とした姿勢と温かい眼差しで、校長先生は子どもたちに語りかけ続けています。

コミュニティの主要関係者を集めてガラムセイの問題について話し合った際、学校の校長先生が発言しているところ。「子どもたちが『勉強なんて時間の無駄、ガラムセイでお金を稼ぎたい』と考えてしまうのはおとなの責任。私は『ガラムセイで得られる400セディのために学校を休んだ1日が、あなたの人生にとって何十倍もの損失になることを知りなさい』と伝え続けます」

登校が不安定な子どもに校長先生(写真左)が話を聞いているところ
子どもたちを学校へつなぐ支援
プロジェクトでは、就学を後押しするために、制服や学用品の支給を行っています。制服の採寸では、緊張しながらも少し誇らしげな表情を浮かべる子どもたちの姿が見られました。
「学校に戻る」という選択は、子どもにとって大きな一歩です。その一歩を現実のものにするための支援が、現場では行われています。

制服を作るため、1人ずつ採寸を行っています
児童労働フリーゾーンに向けて
子ども保護委員会による見回り活動や、コミュニティ規則の策定、住民への啓発活動など、地域ぐるみの取り組みが進められています。

子ども保護委員会がイラストを用いて住民たちに啓発を行っています。

子ども保護委員会と学校が連携し、子どもたち向けの啓発イベントを実施しました。クイズゲームを通じて、子どもたちは自分たちの権利や、児童労働とガラムセイのリスクについて学びました。

校長先生(写真左)は、子どもたちとともにドラムを叩きながら村を行進し、学校に通うことの大切さを住民に訴えるアイデアも提案しています。ガーナも国を挙げてガラムセイの取り締まりや国民への啓発を行っていますが、規制だけに頼らず、地域自身が変わろうとすることが持続的な変化につながります。
おわりに(ACEとして)
ガラムセイと児童労働の問題は、単純な善悪では語れない複雑な背景を持っています。だからこそ、子ども、家庭、学校、コミュニティが一体となり、時間をかけて向き合う必要があります。
ACEは、ILOのプロジェクトを通じて、児童労働フリーゾーンの構築を支援し、子どもたちが「学校に行く」という当たり前の権利を取り戻せるよう取り組んでいます。現場で起きている現実に目を向け続けながら、地域とともに歩んでいきます。
引き続きのご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。
- カテゴリー:報告
- 投稿日:2026.02.16
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