サッカーボール縫いの児童労働がなくなったインドの村を訪問

サッカーボール縫いの児童労働がなくなったインドの村を訪問

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2010年8月に、インド北部のウッタル・プラデーシュ州メーラット地区にある村を訪問しました。この村は、ACEのNPO法人化5周年・認定NPO法人化記念イベントで来日予定のブベシュ・カントくんが暮らしている村です。

サッカーボール生産が盛んなメーラット地区

メーラット地区は、サッカーボールの生産が盛んな地域です。この地域の村では、大人だけでなく、たくさんの子どもたちがサッカーボールを手で縫う仕事をし、学校に行くことができませんでした。

サッカーボール産業の児童労働
ACEチャリティフットサル大会

「子どもにやさしい村」プロジェクトを実施した村

この村も同じように、サッカーボールを縫う児童労働が多かったため、2002年から2003年の間、ACEはパートナー団体BBAと一緒に「子どもにやさしい村」プロジェクトを実施し、子どもたちが学校へ通えるよう支援しました。

村には約6,000人、約900世帯が暮らしています。プロジェクトが始まってからは、親や住民が教育の大切さを理解するようになり、徐々に児童労働をする子どもはいなくなったそうです。ブベシュくんによると、「子どもはみんな学校へ行くようになり、今はサッカーボール縫いをするのは大人だけになりました。」と言います。

子ども村議会メンバーだったブベシュくんとレシュマちゃん

ブベシュくんがまだ9歳の頃に「子どもにやさしい村」プロジェクトによる支援が始まりました。それまではブベシュくんも家でサッカーボール縫いの仕事をしていました。

「学校から帰った後、家で4時間くらいサッカーボール縫いをしていた。母親や兄弟、姉妹、近所の友人たちも縫っていました。賃金はボール一つ当り5ルピー。ボール縫いをすると、目や背中などが痛くなったりして辛かったです。でも、プロジェクトが始まってからは、仕事をするのは良くないことだと分かり、しなくなりました。親も理解してくれ、きちんと学校へ行けるようになりました。」(ブベシュくん)

「子どもにやさしい村」プロジェクトでは、子どもの代表者を選ぶ「子ども村議会」の選挙を行いました。その選挙にブベシュくんは立候補して、書記長に選ばれました。書記長になったブベシュくんは、子どもたちが学校へ行けるように親に呼びかけたり、学校を改善するための取り組みに参加したそうです。現在、ブベシュくんは16歳。理系の高等学校11年生として、農業や化学、地理などを勉強しています。「将来は教師になりたい。」と言います。

同じく、プロジェクト実施当時は10歳で子ども村議会の副委員長だったレシュマちゃんにも会うことができました。レシュマちゃんは、現在17歳。文系の高等学校10年生で、文学や政治、化学などを勉強中。教えることが好きで、妹にも勉強を教えています。「将来は教師になりたい。」と言います。

サッカーボール縫いが盛んだった村の様子村の様子
子ども村議会メンバーだった ブベシュ君(左)とレシュマちゃん(右)ブベシュ君(左)とレシュマちゃん(右)

ブベシュくんとレシュマちゃんへプロジェクトや村について質問しました

Q1.なぜ子ども村議会メンバーになりたいと思ったのですか?

ブベシュくん「村から児童労働をなくしたかったからです。」
レシュマちゃん「子どもがサッカーボール縫いをして働くのをやめさせたかったからです。」

Q2.プロジェクトが行われてから、どんなことが大きく変わったと思いますか?

ブベシュくん「村の子どもたちがサッカーボール縫いはしなくなり、みんなが学校へきちんと通うようになりました。」

Q3.今、子どもたちの問題を解決するためにしていることはありますか?

ブベシュくん「子どもたちと話をして、問題が見つかれば村長に相談します。また子どもが中途退学していないか確認しています。」

現在の活動「子どもにやさしい村委員会」

現在、「子ども村議会」の活動は行っていませんが、住民による「子どもにやさしい村委員会」(女性4人、男性6人、合計10人)が活動しています。 メンバーは学校の先生や母子保健センターのワーカー、農家、主婦などです。1ヵ月か2ヶ月に一度、定期ミーティングを実施し、村長や子どもたちも参加して、 子どもたちが抱えている問題の解決に取り組んでいます。

足りなかった学校の教室やトイレの設置、教員の補充、学校給食の改善、母子保健センターの設置、貧しい 家庭の子どもへの文具や制服の支給などに取り組んできました。今は、小学校の敷地内に水たまりがあり子どもが遊べない、9年生以上の中・高等学校がないなどの課題に取り組んでいます。これらの課題を解決するために、教育局へ陳情書を送って対応してもらうよう働きかけています。また、子どもたちが毎日学校に行っている か確認するため、母子保健センターのワーカー5人が、毎日五軒ずつ家を訪問しています。

「子どもにやさしい村委員会」の代表の女性(右)と メンバーで母子保健センターのワーカー(左)「子どもにやさしい村委員会」の代表の女性(右)と
メンバーで母子保健センターのワーカー(左)
村の小学校の壁には 「子どもの権利」について書かれている 村の小学校の壁には
「子どもの権利」について書かれている

 

「子どもにやさしい村委員会」メンバーへの質問と回答

質問:プロジェクトが行われてから、村で起きた大きな変化は何ですか?

子どもに一番大切なのは教育だということや、児童労働は法律違反だということなどについて、住民が理解するようになり、意識が変わったことです。また、政府が実施している政策で、貧しい家庭の子どもに教育費補助や文具を支給する制度や、貧しい家庭がお米など生活に必要なものを安く購入できる配給制度があることを知って、それを自分たちで使えるようになったことです。

村からブベシュくんが来日予定

一昔前まで子どもがサッカーボール縫いをしていたこの村も、プロジェクトによって児童労働がなくなり、村人たちの暮らしもよくなりました。その 村からブベシュくんに来日してもらい、東京と大阪でシンポジムを開催します。プロジェクトによってどのように児童労働がなくなったのか、村人たちの生活がど う変わっていったのか、ぜひ聞きにいらしてください!

プロジェクトについて 「子どもにやさしい村」プロジェクト
シンポジウムについて 児童労働のない未来へキャンペーン 子どものしあわせリンクプロジェクト

報告:国際協力事業担当 成田 由香子

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  • カテゴリー:子ども・若者支援
  • 投稿日:2010.11.11