カカオ畑での児童労働を伝えるため来日したゴッドフレッドさん(ガーナ)
2010年に来日時に講演するゴッドフレッドさん
2010年11月、ACEのNPO法人5周年記念事業の一環として、スマイル・ガーナ プロジェクトを実施しているガーナのアシャンティ州から、中学2年生のゴッドフレッドさんが来日しました。
およそ10日間の滞在期間中に、東京や大阪でのシンポジウム、子ども交流会のほか、都内や三重県での学校訪問、森永製菓のチョコレート工場見学、参議院議員会館での意見交換会など、多くの場で児童労働をしていた自分の経験を話してくれました。
2年前までは学校に通うことができなかったゴッドフレッドさん。以前は人前で話すこともまったくできなかったそうですが、来日した彼は堂々と自分のこと、カカオ畑での児童労働のこと、どのように人前で話しができるようになったのかなどを話してくれました。(※以下は来日時、講演でゴッドフレッドさんが日本の私たちに向けて話してくれた内容です)
ガーナから来日したゴッドフレッドさん
三重県の中学校を訪問したゴッドフレッドさん
ぼくの名前は、ゴッドフレッドです。三人兄妹の長男で、弟と妹がひとりずついます。ガーナのアシャンティ州アチュマ・ンプニュア郡にある村の出身です。1995年生まれの15歳です。ぼくの家はカカオ農家でした。ぼくが7歳の時に父が亡くなりました。そのために9歳の時からカカオ畑で働き始めました。
7歳の時に小学校に入学しましたが、ほとんど行けず、学用品などを何も持っていなかったので、学校があまり好きではありませんでした。母も字の読み書きはできませんでした。貧しい母がたった一人でぼくたち兄妹を養うために働いていたので申し訳ないと思い、ぼくの弟妹たちも学校に行っていませんでした。その後、同じ村に住む祖父母が、ぼくを養子として迎えてくれました。それで学校に通えるようになると思ったのですが、実際はもっと厳しい状況になりました。祖父母の農園で働きながら、自分の学用品を買うお金を稼ぐために他の農園でも働きました。
ものすごく大変な仕事をする小さな手~カカオ畑で働く子ども~
シンポジウムで講演するゴッドフレッドさん
カカオ農園での仕事はとても骨が折れます。朝は、誰よりも早く、5時から農園へ行き、カカオの実を収穫しました。収穫したカカオの実を一箇所に集め たり、カカオの実を農園から家まで運んだり、本当に大変な仕事です。おとなたちはぼくよりもずっとあと、10時ごろに農園にきて、ぼくよりも先に仕事を終 えて帰っていきました。朝ごはんを食べられなかったので、お腹が空くとカカオの果実を食べて空腹をまぎらわしていました。
カカオは頭に乗せて運びます。とても重くて、頭から首、背中、腰、脚まで全身が痛くなりました。道の溝に足がはまって、足の骨を折ることもありま す。毒をもったヘビやサソリにかまれて亡くなる人もいます。カカオ農園での仕事は作業が大変なだけでなく、危険がたくさんあります。まるで強制労働のようでした。
しかし、ぼくには家族を支えるために仕事をする以外に他に選択肢がなかったのです。病気になったりしても、農園に働き にいかなければ、ごはんを食べさせてもらえなかったり、外で寝させられたり、体罰を受けたりしました。疲れたとか、休みたいと思っても、それを口に出すこ とさえできませんでした。ほかの子どもたちが学校へ通っているのに、自分は働かなければならないことをとても悲しく思っていました。
ゴッドフレッドさんが書いたカカオ畑で働く子どもの気持ちをつづった詩
ゴッドフレッドさんは、カカオ畑で働いていたときの経験と気持ちを詩でつづってくれました。来日することが決まり、パスポートの申請のため、生まれてはじめて村から遠く離れた首都アクラまで、バスを乗り継いで何度もの長旅を続ける間に詩を書いたそうです。
カカオ農園で働く子どもたちの心の叫び「ものすごく大変な仕事をする小さな手」
三重県の中学校で「子ども兵士反対」の意思表示をする授業にも参加
「子ども兵士反対」の赤い手形の意思表示
さいわい、ぼくが暮らしている村は、ACEによってスマイル・ガーナ プロジェクトが実施されるようになりました。この活動によって、親や住民が児童労働の悪影響や教育の重要性について知るようになり、意識が変わりました。 親は子どもを働かせるのではなく、学校に行かせるようになりました。ぼくの祖父母も考え方が変わり、ぼくも毎日学校に通えるようになりました。
スマイル・ガーナ プロジェクトでは、「子ども権利クラブ」という、子どもたち自身が話し合い、物事を決める場ができました。そのクラブでぼくたちは、子どもには子どもの権利が あって、自分たちに必要なことを要求できることを学びました。例えば、学校に壁がなくて、雨が降ると授業ができなかったのですが、今では壁ができて学べる ようになりました。それから先生の数も足りなかったのですが増えました。
私はスマイル・ガーナ プロジェクトが村に来てくれて、子どもたちが毎日学校へ行くことができるようになってうれしいです。もう村には児童労働している子どもたちはいません。ぼく自身も毎日学校へ通い、中学2年生になりました。最後の期末試験では一番を取りました。今は学校が大好きです。
シンポジウムで将来の夢を語るゴッドフレッドさん
訪問した三重県の中学校での記念写真
ぼくの将来の夢は医者になることです。幼い頃から村でたくさんの問題があることを見てきました。カカオ農園はとても遠くにあるので、ヘビやサソリに かまれたりして、病院にたどり着く前に人が亡くなってしまったり、妊婦さんが赤ちゃんを産む前に亡くなったり、悲しい思いをしてきました。だから自分が医者になって村の人たちを助けたい、そう思っています。
スマイル・ガーナ プロジェクトがなかったら、ぼくは今でもカカオ農園で働いていたと思います。学校に行けることもなかったと思います。だからぼくはスマイル・ガーナ プロジェクト、ACE、そして日本のみなさんに心から感謝しています。でも、まだガーナのほかの村では、子どもたちがカカオ農園で働いています。他の村の 子どもたちも労働ではなく、学校に通えるよう、ぜひとも今後ともスマイル・ガーナ プロジェクトを応援してください。
追記:医者になる夢をかなえるため高校へ進学
2010年に来日した後、ゴッドフレッドさんは今まで失っていた時間を取り戻すかのように一生懸命勉強しました。「病院のない村で治療が遅れて命を落とす人たちを何人も見てきた。だから医者になって村の人たちを助けたい。」という想いを胸に、2012年春に中学校を卒業しました。
ガーナでは、高校進学のため統一試験を受けるのですが、ゴッドフレッドさんは郡で一番の成績を収め、政府の奨学金を受け、高校に進学することができました。「医者になって村の人たちを助けたい」という夢に向かって、今もひたむきに勉強しています。
政府の奨学金をもらって高校に進学したゴッドフレッドさん
再追記:念願がかなって医療系の大学への進学決定
来日時には「将来は医者になって村の人たちを助けたい」と話し、その後奨学金をもらって高校まで進学したゴッドフレッドさん。そして2016年8月には、念願がかなって医療系の大学への進学が決まったとの嬉しい報告がありました。また、先日8月21日にACE事務所で行われた納涼会でも、ゴッドフレッドさんと、子ども権利クラブの初代議長のエバンス君の二人にインターネットで電話をつなぎ、直接元気な声を聞くことができました。出会った当時は小学生だった彼らも、立派な青年です!
納涼会で送られてきた写真。エバンスさん(左)とゴッドフレッドさん(右)
第2のゴッドフレッドさんを誕生させたい!1,000円で子ども1人の給食1カ月分を支援
ACEは、ゴッドフレッドさんをはじめガーナのカカオ生産地域で働く子どもたちの多くを危険な児童労働から守ってきました。今もなお、助けを必要としている子どもたちがいます。そんな子どもたちを守るため、スマイル・ガーナ プロジェクトの実施を支える「チョコ募金」へのご協力をよろしくお願いいたします!
ガーナのカカオ生産地域の子どもたちを支援「チョコ募金」
アフリカのガーナで子どもたちの生活改善と教育を支援する「スマイル・ガーナ プロジェクト」実施に使わせていただきます。「しあわせを運ぶ てんとう虫チョコ」の売り上げの一部もチョコ募金として、子どもたちに笑顔を届けます。
- カテゴリー:子どものエピソード
- 投稿日:2011.01.17