NPO法人化10周年にあたって~代表メッセージ~

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ACE代表 岩附由香

2005年8月8日もとても暑い日だったのを覚えています。事務所から台東区の登記事務所まで歩いて、登記をすませたこの日が、NPO法人ACEが誕生した日です。1997年に任意団体として活動を開始してから、8年後のことでした。

2005年から事務局長の白木が初の有休専従スタッフとして働き始め、今年4月で勤続10年を迎えました。現在働いている他のスタッフも、9年目、8年目と在職期間が長くなり、もうそんなにたったのか!というのが正直な感覚です。

世界の児童労働に目を向けると、大きな進展がありました。2005年当時、2億4600万人としていた国際労働機関(ILO)の推計が、2013年9月の新しい推計では1億6800万人までに減少しました。児童労働問題を取り巻く環境にも変化を年感じています。

2013年10月に行われた児童労働の国際会議には、過去最多の150カ国から1,300人もの人が参加し、関心の高さを伺わせました。企業関係者が登壇するセッションや、参加も多く、児童労働問題は、企業を含むマルチステークホルダーで取り組むことがもはや前提となっていることを感じました。「児童労働は関係ない」「サプライチェーンなんて辿れない」と言われていたあの頃から比べると、日本企業の方が児童労働をどうと捉えているかの感覚は大きな変化がありました。その背景には、ISO26000や米国の金融規制改革法など、実際に企業がサプライチェーンの児童労働に責任を持つべきだという指針とその報告と義務付ける法整備が進みつつあることがあると思います。また企業との連携で児童労働を解決するモデルも、森永製菓さんとの協働事業を通じ、企業が足元の児童労働問題に取り組むことを実現するだけでなく、ACE支援地のカカオを使ったチョコレートを市場に出すところまで実現できました。フェアトレード認証も受け、新しい価値の商品を消費者に届けることが出来たことは、ひとつの大きな成果だといえます。

現地支援も、これまで1200人以上の子どもたちを児童労働から守り、教育を受けられるよう支援してきました。2005年当時はインドの児童労働プロジェクトを始めたばかりで、現地NGOがすでに行っていた取り組みを支援する形でしたが、今はACEがプロジェクト立案を行い、現地パートナーに運営を任せる形でプロジェクトを実施しており、この経験が私たち自身の児童労働解決に必要な活動が何かを学ばせてもらうことになりました。一人一人の子どもたちがプロジェクトの結果学校に行き、笑顔になって自分の夢を持てるようになった数々のエピソードも、どんなに大変でも前に進むエネルギーをくれました。

児童労働の問題を日本の人たちに伝えるという当初から行っている活動も、厚みを増しました。ACEオリジナル教材はどれも好調な売れ行きですし、児童労働の入門書として書いた『わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。』は、版を重ね15000部以上売れています。教材を使ってくださる学校の先生方も増え、先日講演先の大学生に「学校の授業で学んで小学生のころから児童労働問題に取り組みたいと思っていた」と言われた時、児童労働という問題が広く日本社会の人たちに共有されつつあることを感じました。ご依頼いただく講師派遣の件数も年々増加しており、関心の高まりを感じます。また、谷川俊太郎さんがACEに書き下ろしてくれた詩「そのこ」の動画も、多くの人の心を動かしています。「しあわせを運ぶ てんとう虫チョコ」や、DARSでACEのことを思い出してくれる方も多く、児童労働という問題をみなさんにわかりやすく伝え、かつ気軽に参加してもらえる仕組みを作ろうと努力してきた成果を感じています。

2004年にACEが働きかけ設立した児童労働ネットワークも、毎年のキャンペーンや署名活動を続け、今年度の署名も加えると160万筆の署名を集めてきました。昨年の署名活動で求めていた、2015年9月の国連総会で採択される「持続可能な開発目標(SDGs)」に児童労働の撤廃が入ることもほぼ確定で、児童労働に関するアドボカシーとしてはミレニアム開発目標には入らなかったことを考えると一歩前進と言えると思います。

ACEという組織も、成長してきました。2005年当時、職員1名、収入が約750万円だった組織が、2015年現在職員11名(パート含む)、収入規模も7500万円を超える組織になりました(2015年8月決算見込み)。年々活動の規模が大きくなり、増えていく支出をどう賄うか毎年悩み苦労しながら資金調達を続けているのが現状ですが、結果的にそれが収入増という形となり成長してきたのかと思います。

これまでACEの活動を続け、成果を出すことが出来たのは、コミットの高いスタッフ、インターン、ボランティア、そして私たちと想いを共有し共に活動してきてくれた関係NGO、企業、労働組合、個人のみなさん、そして寄付や物品購入など様々な形でACEを支援してくださったみなさまのおかげです。

「どうしても白木を雇って専従にしたいんです」とお願いしていただいた初めての大口寄付。翌年の資金が足りず、助成金が通ってぎりぎり首一枚でつながったこと。逆に助成金に落ちてへこんでいたときに本の印税のご寄付のお申し出をいただき、スタッフの雇用が続けられたこと。今思い返しても、数々のピンチの場面がありました。それでも、なんとかやってこられたのは、一人でも多くの子どもを児童労働から救いたいという想いに共感してくださる方々が、応援してくださったからです。

この場を借りて、これまでのみなさんのご厚意に心からお礼を申し上げたいと思います。ご支援、本当にありがとうございました。

特定非営利活動法人ACE 設立パーティー

2005年、NPO法人化記念シンポジウム。ノーベル平和賞を受賞されたカイラシュ・サティヤルティさんも参加。

 

「児童労働に反対するグローバルマーチ」を日本でも実現したい、との私の思いつきで、6か月限定のNGOとして学生5人で創めたACEの活動が、こんなに多くの人に支持されるものになるとは、思いもよりませんでした。

2015年9月の国連総会で採択される「持続可能な開発目標(SDGs)」には、2025年までにすべての児童労働を終焉させると明記される予定です。このような国際文書に児童労働の目標が明記されることは、大変意味が大きいもので、活動の新たなスタートに立ったような気がしています。私たちもその目標に向かって、世界の児童労働にどう向き合い、どのようにACEとして責任を果たしていくのか。現状にとらわれず、ACEの強みを活かし、本当に必要なこと、世界の児童労働撤廃に効果をもたらせることは何かを考えながら、自分たちの力を最大限に発揮して2025年に向かって進んでいきたいと思います。

最後に、すでにご支援をいただいているみなさまには、ぜひ継続してご支援をいただけますよう、そしてまだご縁をいただいていないみなさまには、ぜひこれから共に児童労働のない未来を目指す仲間となっていただけるようにお願いさせていただいて、メッセージとさせていただきます。読んでいただき、ありがとうございました。

追伸
現在、「そのこ」の未来キャンペーンでご寄付を募っております。
ぜひ、ご協力をいただけましたら幸いです。

「そのこ」の未来キャンペーン特設ページ

2015年8月 ACE代表 岩附 由香

世界の子どもの笑顔のため、世界を変える小さな一歩を。

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  • カテゴリー:お知らせ
  • 投稿日:2015.08.04