インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2007報告(1)
インドで子どもに会って考える旅~スタディツアー2007報告(1)
2007年8月30日から9月7日にかけて、スタディツアー「インドで子どもに会って考える旅」を実施しました。現地では、ACEが支援しているBBA/SACCS(以下BBA)のプロジェクトの視察や児童労働に取り組む国際機関やNGOなどを訪問しました。
インド・スタディツアー2007 ツアー日程
8/30 成田空港出発→デリー着
8/31 在インド日本大使館、ILOデリー事務所の訪問
9/1 バリカ・アシュラム(女の子のためのリハビリ施設)訪問、
ラジャスターン州、バル・アシュラム(男の子のためのリハビリ施設)へ移動
9/2 バル・アシュラムで子どもたちと一緒にヨガ、敷地内見学、
子どもたちやスタッフへのインタビュー・交流
9/3 ACE支援プロジェクト「子どもにやさしい村」訪問、デリーへ移動
9/4 ドンボスコ・アシャラヤム(孤児や働く子どものリハビリ施設)、
タラ・プロジェクト(フェアトレード団体)の訪問
9/5 アグラ観光
9/6 デリー市内観光、デリー出発
9/7 成田空港到着、解散
スタディツアーの実施にご協力いただいた、在インド日本大使館、ILOデリー事務所、ドンボスコ・アシャラヤム、タラ・プロジェクト、パートナー団体BBA、株式会社マイチケット、アムネスティ・インターナショナル日本子どもネットワークの関係者のみなさまに心より感謝申し上げます。ご協力ありがとうございました。
パートナー団体の施設訪問
児童労働を専門に取り組むNGO BBA
BBA(Bachpan Bachao Andolan:子ども時代を救え運動)は1980年に設立され、子どもが児童労働の搾取から解放され、質のよい教育を受けられる社会造りのために活動するNGOです。
農村での児童労働を予防するための「子どもにやさしい村プロジェクト」の実施、児童労働者の救出や施設でのリハビリテーション支援、児童労働に反対するマーチやキャンペーンなどによる意識啓発、政府に対して法律の整備や執行を働きかける活動などを行っています。
インドの首都ニューデリーに事務所を構え、デリーをはじめラジャスタン州、ウッタル・プラデシュ州、ビハール州、マッディヤ・プラデシュ州などでプロジェクトを実施しています。
救出された子どものリハビリテーション施設・バル・アシュラム
「子どもにやさしい村」プロジェクトとは?
ACEは児童労働をなくすため、BBAが実施する「子どもにやさしい村」プロジェクトを支援しています。村から児童労働をなくし、子どもたちが継続的に学校に通えるよう支援するプロジェクトです。
子ども村議会や青年・女性グループの組織化、教育や児童労働に関する意識啓発、村人の訓練、村の自治組織や教育局への働きかけなどを行っています。
「子どもにやさしい村」プロジェクトの進捗状況
2006年11月からプロジェクトを実施しているラジャスタン州ジャイプル県の2つの村(g村、f村)をスタディツアーで視察してきました。村の小学校 や保健センターなどを訪問し、子ども村議会のメンバー、教員、青年・女性グループのメンバーに会い、活動内容やプロジェクトを実施してからの変化などにつ いて話を聞きました。
みんなが学校へ通うようになった
1~5年生までの小学校があり、就学対象年齢の全ての子どもが学校に通うようになりました。それぞれの村には約40人の子どもたちがかつて児童労働によっ て学校に通っていませんでした。そのほとんどが女の子でした。子どもたちは、カーペット織り、家事手伝いや、家畜の世話、畑仕事などを一日中していまし た。
新たに教員が雇われた
g村の教員は教員免許をもっておらず、きちんと教えていなかったことが問題となっていました。この問題が子ども村議会で話し合われ、おとなの村議 会に問題提起し、村の教育局に働きかけました。その結果、きちんとした資格のある新たな教員が雇われました。今の教員は生徒に対し熱心に勉強を教えている そうです。
学校の施設や通学路が改善された
教室が不足していた学校は、トイレもなく、子どもたちがきちんと安心して勉強できる環境ではありませんでした。この問題も子ども村議会からのおとな村議会に届けられ、新たな教室とトイレが建てられるようになりました。
f村では、学校の通学路となる道が土砂と水溜りのため子どもたちの通学を妨げていました。これも子どもたちが意見し、おとな村議会が政府から補助費用を得たため、今は学校への途中までの道が舗装されました。
村の中に保健センターができた
村人の間で子どもの教育に関する意識が高まっただけでなく、村の他の問題に対する意識も高まりました。例えば、プロジェクトがはじまってから建てられた保健センターは、幼児の予防接種を行うようになり、村の児童労働者の把握に役立っています。また、保健センターは村会議や村人の研修が行われたり、政府の補助金制度の情報が得られる情報リソースセンターの役割も果たしています。
女性・青年グループの活動が広まりました
また、女性グループの活動によって、幼児婚やダウリー(持参 金制度)の習慣がすこしずつ少なくなっていきました。女性グループでは、定期的に貯金をし、妊婦への出産費用に当てるなど資金が必要になったメンバーへの 補助に活用されるようになりました。f村では、以前から違法行為の森林伐採が行われており問題となっていましたが、青年グループが監視を行うよう になり、今はなくなったそうです。
「子どもにやさしい村」プロジェクト 今後の課題
g村では、今の小学校は1~5年生までしかなく、進学したい子どもは他の村に行くか、進学をあきらめるしかありませんでした。そのため、子どもたちがスムーズに進学できるよう村人たちと話を進めています。
f村では、小学校の教員の人数がまだ不足しており、教育の質も低いのが課題です。水不足にも悩んでおり、手動ポンプが必要であること、村人の健康改善のために病院が欲しいなどの声が出ており、これらを解決できるよう村で話し合っているそうです。
スタディツアー参加者の感想
2007年のスタディツアーには15名が参加し、20代の学生から65歳の方まで、多彩な顔ぶれで参加者同士の仲も深まり、とても楽しい旅になりました。また同時に、参加者のみなさんにはさまざまなことを感じていただけたようです。
インドでは人々の習慣、生活における日本との違いを目の当たりにした。想像を絶するほどの貧困、物乞いなど挙げればきりがないとはいえ、路上で生活し、ゴミ拾いや芸当によって命をつなごうと必死な子どもたち。身近に感じていたインドは目にした現実によって、また彼らを理解しようと努めれば努めるほど感じてしまう境遇の隔たりによって、私のなかに渦巻くジレンマとともに、再び遠い国に感じられた。しかし、出会った施設や村の子どもたちによって希望が与えられた。不安も悩みも徐々に和らいでいった。子どもたちのなかにはもちろんうつむき加減の子もいたけれども、たいていの子は予想以上に明るく接してくれ、みんなの前で自らの苦しい体験について語ってくれた。
時間をかけ、児童労働を乗り越えた子どもたちは、今度は他の子どもたちが自分たちと同じように悲惨な目に遭わなくてすむよう、自らの体験を語り、反対運動に参加し、訴えていることに感銘を受けた。そして、彼らは学ぶことにも大変意欲的で、折り紙を教えると一人でできるようになるまで繰り返し覚えようと励んだ。彼らには、学ぶことを自らの権利としてしっかりと自覚している誇りと喜びの表情が見られたように思う。ある子は自分で折った作品を私にくれた。 一緒に過ごしたのはほんの短い間だったけれども、彼らとともに、これからも児童労働について考えることでつながっていけると実感している。
和田さん(大学生)
ACE インド・スタディツアー2007報告
- カテゴリー:子ども・若者支援
- 投稿日:2007.09.19