【解説】チョコレート値上もカカオ生産者の暮らしは変わらない?
チョコレートの値上がりがカカオの国に与える影響
2014年7月、日本の各大手製菓メーカーが相次いでチョコレート製品の価格を引き上げると発表しました。チョコレートの原料であるカカオ豆の価格高騰が要因です。4月に消費税が8%に上がったばかりで、価格は据え置き、内容量を減らすことで対応するメーカーも少なくありません。
日々、チョコレートを食べている私たちのお財布に影響のあるニュースですが、アフリカのカカオ生産地域で活動しているACE(エース)にとっても気になるニュースです。一体なにが起きているのでしょうか?カカオ生産国の人たちにはどういった影響があるのでしょうか?
チョコレート価格高騰の要因は新興国の需要増加と供給量減少
今回のチョコレートの高騰は、世界的な「チョコレートの需要拡大」と「カカオの供給量減少」が主な要因と考えられています。
背景には、中国やインドなど新興国の経済成長に伴うチョコ需要の高まりで、原材料のカカオの価格が上昇していることがある。(中略)さらに、今夏はエルニーニョ現象の影響で、インドネシアなど主要生産国で天候不順に陥り、供給量が減るとの懸念も台頭している。(出典:毎日新聞『食品:ハム、チョコ値上げへ…内容量減で「据え置き」も』)
1)中国やインドを中心とした新興国でのチョコレート需要の拡大
現在、世界で年間約3万トンのカカオが生産され、そのうちの約7割を西アフリカ地域が占めています。最近は、中国やインドなど新興国の経済が成長し、国民の所得増加に伴い、世界的にチョコレートなどの嗜好品の消費量が増えています。
2011年11月、世界のチョコレート製品の売り上げは初めて1,000億ドルを超え、カカオの生産能力を超え、貯蔵を消費し尽くしてしまうと言われています。国際ココア機関(ICCO)によると、カカオ豆の価格は、2013年3月から上昇を続けています。ICCOは、今後5年にわたりカカオ豆の需要が生産を上回ると予想しており、今後もカカオの価格が高騰する公算が大きいといいます。(*1)
2)カカオ生産国の政情不安や気候変動などによる供給量の減少
チョコレートとカカオの需要が伸びている一方で、カカオの生産量は減少しています。
世界カカオ財団(World Cocoa Foundation)のデータによれば、生産は逆に減少している。10〜11年に17%増加したのち、11〜12年には398万tのカカオが生産されたが、前期と比べて5%減少した。この分野には世界に550万人の労働者がいて、そのうちサステイナビリティの認証を得たカカオ栽培のために働いているのは、10%に過ぎない。(出典:2014年、チョコレートの危機が訪れる|WIRED.jp)
西アフリカのカカオ生産国では、カカオの樹木の老齢化や病害虫による生産ロス、土壌劣化などによる供給量不足が心配されています。また、地球規模の温暖化や気候変動の影響、生産者の高齢化による後継者不足などがさらに拍車をかけています。
カカオの生産世界第一位のコートジボワールでは、カカオは収益性が低いため、より収益性の高いゴムの生産に移行する農家も増えているといわれています。これらの影響により、将来的にカカオの持続的な調達は危機的な状況にあると言われています。スイスの菓子メーカー バリーカレボーは業界全体の見通しを引用し、カカオ豆不足が20年までに9倍に膨らみ100万トンに達すると予想しています。 (*2)
チョコレート、カカオの需要の増大に対し、供給量が見合っていないことが、カカオの価格上昇に影響を与えているのです。
チョコレートの値段があがってもカカオ農家の生活は改善されない
カカオの価格が上がれば、カカオ農家の収入も増えて生活がよくなると思うかもしれませんが、実際はそんなに単純ではありません。ガーナでは、国際相場や気候などを予測しながら、政府が年に2回、カカオの国内取引価格を決めて管理しています。2008年9月には1袋(約64kg)60セディだった価格は、2013年には212セディと3倍以上になりました。
たしかにカカオの価格はあがっていますが、日用品や燃料費など、ほかの物価も急上昇しているため、同時に支出も増えているため、暮らしが楽になるわけではないのです。ACEは、カカオ農家の生活を安定させるためには、生産量を増やし、収益性を上げるための取り組みが不可欠であると考えています。
サステナブルなカカオの調達が求められているチョコレート・メーカー
カカオの価格変動も大きな問題ですが、カカオを使ってチョコレート製品を販売するメーカーにとっては、サステナブルなカカオ調達も急務となっています。今後、世界的にカカオの生産量が減少した際、自社のビジネスにも大きく関わってくるはずです。
サステナブル(=持続可能)なカカオ調達の考え方の中には、人権や環境保全への配慮、原料調達から生産・出荷まで各工程でトレーサビリティなどの要素も含められています。カカオ生産者の収益性を高めたり、農業や教育支援などに取り組むなど、チョコレート・メーカーとしてカカオ生産地への長期的な投資を行う動きも見受けられます。
子どもたちを児童労働から守るために必要な支援とは
ACEは、ガーナのカカオ生産地で「スマイル・ガーナ プロジェクト」を行っています。経済的な理由で学用品を買うことができない家庭へ支給したり、農業の技術指導を行ったり、子どもたちを危険な児童労働から守り、継続的に教育を受けられるよう農家の収入向上などに取り組んでいます。
農家が生産技術を身に付けることは、カカオの生産量の向上に直接つながります。また、子どもたちが教育を受けることは、次世代の後継者の育成にも貢献します。つまり、カカオの持続的な生産と供給量の改善にもつながるのです。カカオ生産者を守り、子どもたちに笑顔を届けるため、ぜひACEの「スマイル・ガーナ プロジェクト」への応援をお願いします!
ガーナのカカオ農家の生活を守るため、ご支援お願いします!
ガーナのカカオ生産地域の子どもたちを支援「チョコ募金」
ガーナのカカオ生産地域で子どもたちを危険な労働から守り、農家の収入向上などに取り組む「スマイル・ガーナ プロジェクト」を応援する「チョコ募金」にぜひご協力をお願いします。※クレジットカードがあれば、インターネット上で募金ができます。
出典、参考ウェブサイト
- (*1)チョコレートが7月から値上げ 「他の作物つくるほうが儲かる」カカオ生産者|ハフィントンポスト
- (*2)カカオ豆不足、続く見通し-天然ゴム栽培への移行で|Bloomberg
- 毎日新聞『食品:ハム、チョコ値上げへ…内容量減で「据え置き」も』
- 2014年、チョコレートの危機が訪れる|WIRED.jp
- 人気菓子の一斉値上げに潜む、甘くない現実|東洋経済
- Hershey: Raise the Bar on Chocolate!
- Nestle ‘to act over child labour in cocoa industry’
- BBC News – Nestle ‘failing’ on child labour abuse, says FLA report
- カテゴリー:子ども・若者支援
- 投稿日:2014.07.11